広島FW鮎川峻 [写真]=J.LEAGUE 何より結果が必要だった。サンフレッチェ広島のFW鮎川峻は8月26日に行われた天皇杯2回戦の沖縄SV戦に途中出場し、1ゴール1アシストの活躍で4−1の勝利に貢献した。
広島ユース出身の鮎川は、当時19歳の2021年2月にJ1開幕戦でデビューを飾ったが、その後は怪我の影響もあって思うような出場機会を得られず、2023年夏に大分トリニータへ期限付き移籍。2シーズン半の武者修行を経て、バルトシュ・ガウル監督が就任した今年、広島に復帰を果たしたものの、半年間の明治安田J1百年構想リーグは出番のないまま終わり、忍耐の時期を過ごしてきた。
ハーフタイムに待ちに待った出番の声がかかった。「結果を残すしかない」。24歳のストライカーは強い覚悟を持ってピッチに入った。広島での公式戦出場は約3年3カ月ぶり。「長かったですね」。一言で振り返った鮎川は、「広島を離れてからも応援し続けてくれた方もいますし、そういう方たちのためにも頑張りたいと常に思っていました」と再び紫のユニフォームを着て活躍するために取り組んできた。
「ここからリーグ戦の試合に出るために結果が必要だったので、その分この試合にかける思いは強かったです。今日チャンスをもらえた中で、あとは自分次第だと思っていました」
勝負の45分が始まった。1トップに入った背番号23は積極的に相手最終ラインの裏へ飛び出して攻撃を活性化し、守備でも前線からボールを追って懸命に走り続けた。夜になっても熱がこもるピッチで、165センチの小柄なストライカーが大きな存在感を放った。
50分、自陣でボールを受けたMF松本泰志が前を向くと、前線の鮎川は相手DFの背後を取って走り出した。「キャンプのときから(松本と)一緒にプレーする時間も多くて、ああいうところをかなりすり合わせできていました。そうした積み重ねのおかげです」と松本との信頼関係によるプレーでチャンスを作った。
右サイドに抜け出した鮎川はペナルティエリアに切り込むと、「周りを見る余裕もあって冷静に選択できました」。走り込んできたFW加藤陸次樹と目の前のDFの動きを見極めて技ありの股抜きパス。自分でシュートを打つ選択もあったはずだが、「より可能性の高い方を選択できました」と狙いどおりプレーで加藤の追加点をアシストした。
さらに 79分には右CKでMF新井直人の鋭いクロスをニアのDF佐々木翔が右足でゴール前に蹴り込むと、これに素早く反応した鮎川が頭で合わせて追加点。「(自分が)いるところに(ボールが)たまたま来ました。本当に触るだけだったので、チームのみんなに感謝したいです」と振り返る。
本人は謙虚に言うが、シュート直前にはDFから間合いを取り、ステップを踏んでボールを待ち構えていた。持ち前の嗅覚を活かして決め切ったストライカーらしい得点だった。鮎川は、「そういう部分が自分の良さだと思っているので、今日みたいなゴールシーンを増やしていきたいです」と胸を張る。
得点後にピッチでチームメイトから祝福された鮎川は、「みんなが喜んでくれて、それが僕は本当にうれしかったです」と笑顔。スタンドでは奥さんや親も見守っていた中で、自分の得点で巻き起こしたサポーターの大歓声は格別だった。
「やっぱりそれ(サポーターの声援)を聞くために、そういうものを感じるために広島で戦っているので、すごくうれしかったです」
1ゴール1アシストの活躍で勝利に貢献した鮎川は、「結果を出すことができて良かったです」と安堵しつつも、「これをこの先につなげないと意味がないので、これに満足せず、リーグ戦で試合に出られるように頑張りたいです」と気を引き締める。
久々に巡ってきたチャンスで残した結果は今後へのアピールになったはずだ。ガウル監督も試合後の会見で「フレッシュなエネルギーをチームにもたらし、試合を活性化してくれた」と称え、「間違いなく、ほかの選手たちにプレッシャーを与えるパフォーマンスだったと思います」と評価した。
ただ、広島の攻撃陣は実力者ぞろい。厳しいポジション争いの真っ只中にいる鮎川は、「自分の良さや結果の部分をさらに突き詰めていきたいです」と力を込め、「(試合に)出たときに何ができるかだと思うので、そこに対する準備は今までも常にし続けてきましたけど、さらにしていきたいです」と変わらぬ姿勢で取り組み続ける。
再び紫のユニフォームをまとって躍動した背番号23。広島で力強い再スタートを切った。
取材・文=湊昂大