【プロ野球】「打率3割、30本塁打」に騙されるな 元編成担当者が明かす「当たり助っ人」を見抜く3つの条件

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2026年08月28日 09:50  webスポルティーバ

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 旅行代理店、出版社勤務を経て、プロ野球の世界に身を投じてきた宮田隆氏(現在はスポーツマネジメント会社取締役)。ロッテ、オリックス、西武に在籍し、およそ20年にわたって外国人選手の獲得やトレード、スカウティングなど、チームの編成に携わってきた。なかでも外国人選手の獲得は、近年でも「実際に日本でプレーしてみなければわからない」と言われるほど、難しい分野だ。しかし宮田氏は、「調査の段階で見極めるポイントはある」と語る。長年の経験から導き出した、その秘訣とは何なのか。

【数字だけでは見抜けない外国人打者】

── かつては代理人に依存する傾向が強く、売り込まれた選手のスタッツリストをもとに候補を絞り、渉外担当者が渡米して視察し、評価がよければ契約するというのが一般的な流れだったと聞きます。

宮田 もう20〜30年前の話ですね(笑)。近年はほとんどのチームが、NPBでプレー経験のある元選手を現地駐在スカウトとして雇うなど、球団が主体的にデータを集めるようになっています。マイナーでも、ほとんどの試合の映像を入手できる時代ですからね。送られてきた映像を見て、「好プレーだけを編集した動画じゃないか」と呆れたのも過去の話です。

 ただ、球団が独自に調査するようになったからといって、"成功確率"が上がったかと言えば、そこは微妙です。ひとつは、日本球団が獲得できる外国人選手のレベルが、以前より下がっていること。それでいて、日本球界のレベルは上がっています。まあ、代理人にふっかけられて、だまされたというケースは減りましたけどね(苦笑)。

 外国人選手獲得の担当者の間では、"4A"という表現があります。メジャーと3Aの間にいる選手。つまり、力量は3A以上だけれど、メジャーに定着できるほどではない。そうした中間層から獲得してこなければならないので、難しい仕事といえますね。

── まず、打者についてうかがいます。調査する際、最も重視していたポイントを教えてください。

宮田 基本は3つです。ひとつ目は高めを打てるか。ふたつ目はインコースをさばけるか。そして3つ目は、外のスライダーを追いかけないか、ですね。メジャーでは、いわゆるバレルスイングという、すくい上げるような軌道のスイングが主流になった時期がありました。最近は変わってきましたが、それでもまだ多い。でも、あの打ち方だと高めの球に対応するのが難しい。だから今、日本に来て高めの球に苦労している外国人選手がすごく多いんです。ですので、そうしたスイングで残した成績は鵜呑みにせず、できれば獲得候補から外します。

 プレーしている地域にも注意が必要です。同じ3Aでも、インターナショナルリーグとパシフィックコーストリーグでは傾向が違う。インターナショナルリーグは東部や中西部、南東部を中心に比較的、投打のバランスが取れた環境でプレーする球団が多い。一方、パシフィックコーストリーグには、標高が高く乾燥した地域の球場もあり、打球が飛びやすい環境が少なくない。そのため、伝統的に「打者有利のリーグ」と言われてきました。

── 同じ3Aでも、インターナショナルリーグとパシフィックコーストリーグでは評価が変わってくると。

宮田 もちろん、同じリーグでも球場によって条件は大きく違います。だからこそ、単純に成績の数字だけを見るのではなく、「どのリーグの、どの球場で残した数字なのか」まで見る必要があります。つまり、同じ「打率3割、30本塁打」でも、所属リーグや本拠地によって、その数字が持つ意味や価値は変わってくるわけです。

 さらに、左のパワーヒッターには、昔からローボールヒッターが多いですよね。バレルスイングが全盛になる以前から、左の長距離砲には高めが苦手で、低めが好きだからこそバットが回るというタイプが多かった。ここも要注意です。

【"化ける選手"を生む監督の我慢】

── では、宮田さんが獲得したなかで、成功例を教えてください。

宮田 自慢するわけじゃないですが、西武時代に獲ったエルネスト・メヒアは、働いてくれた好例だと思います。彼は高めが打てたし、インコースもさばけた。それが大きなストロングポイントでした。

 外国人打者は、打てなくなると余計に力んで、外角に逃げるボールを追いかけてしまいがちです。でも、メヒアはグッと我慢できる粘りがあった。この3つのポイントをクリアできる選手なら、成功する確率は高いと思います。ただ、そういう選手そのものが今は希少というか、なかなかいませんけどね。

── 来日時の目算以上に、試合を重ねるなかで芽を出す選手もいますよね。

宮田 いわゆる「化ける選手」ですね。2024年に日本ハムへ入団し、今季3年目のフランミル・レイエス。最初は「ボール球を振るだろう。バットが止まらないだろうな」と思って見ていたら、ちゃんと止まる。四球を選べるようになって、甘い球を打ち返すバッティングになり、大化けしました。

 昔のブランドン・レアード(日本ハムなど)もそうでした。シーズン前半は打率2割前後に低迷し、それでも我慢して使い続けたら、あそこまでの選手になったんです。

── 首脳陣が我慢して使い続けたことも大きかったわけですね。

宮田 それもありますけど、日本ハムは二軍が鎌ヶ谷です。独身ならともかく、家族持ちの外国人選手を鎌ヶ谷に送るとなれば、家族ごと引っ越さなきゃいけない。つまり、「我慢して使わざるを得ない環境」があったんです(笑)。ただ、レアードはサードの守備が抜群にうまかった。だから打てなくても使い続けられた。そうしたら化けたわけです。

 西武では、エステバン・ヘルマンが成功したのも、当時の渡辺久信監督が我慢して使い、彼が生きる場所、つまり打順やポジションを探してくれたからです。外国人選手が活躍できるかどうかは、監督にかかっています。代理人もそこはよく知っていて、「この監督のところには選手を送りたくないな」と、監督の性格まで把握していますよ。

【投手の成否を左右する日本のマウンド】

── 投手の獲得や見極めは、打者よりもさらに難しいのでしょうか。

宮田 そうですね。球威、球速、変化球のキレ、クイックや牽制がうまいかどうか。チェックポイントはいくらでもありますが、それと同じくらい大事なことがあります。それは、マウンドとの相性です。

 メジャーは、どの球場でもマウンドの硬さや傾斜に大きな違いはありません。ところが日本は、硬い、柔らかい、傾斜が急、緩いと球場ごとに違い、地方球場へ行けばさらに変わってくる。その環境への対応力が求められます。

── アメリカで投げてきた投手に向いているマウンド、向いていないマウンドはありますか。

宮田 みずほPayPayドームと、エスコンフィールド、それから京セラドーム大阪はいいですね。逆に、私の経験では神宮球場やベルーナドームは難しい。マウンドが違えば、制球力にも大きく影響します。下半身をうまく使って体重移動できるタイプなら対応できますが、上体に頼って投げるタイプだと、着地する前足が不安定になるだけでもダメになります。

 たとえばデニス・サファテ。ソフトバンクで活躍する前に1年間、西武にいたことがありますが、その時は、西武の本拠地のマウンドへの対応に苦しんでいました。それで、「宮田、うちのホームのマウンドを福岡と一緒にしてくれるなら、その改装費は俺が払ってもいい」と言ったことがあるくらいでした(笑)。当時は傾斜が緩いうえに、土も柔らかかった。今は硬くなりましたが、球場全体の構造上、傾斜自体を大きく変えるのは難しい。西武の本拠地で外国人投手を当てるには、下半身をうまく使えるタイプじゃないと難しいと私は思っています。

【変わる必要はない、適応してくれ】

── 外国人選手ならではの、成否を握るポイントはありますか。

宮田 これはあくまで私自身の経験から感じてきたことですが、私が担当した選手のなかでは、先発投手はアメリカ出身の選手に成功例が多かった印象があります。先発として日本の野球にアジャストする能力や、投球の引き出しが多い選手がいました。

 また、私が実際に接してきた選手に限って言えば、ベネズエラ出身の選手には状況を考えながらプレーするタイプが多く、ドミニカ共和国出身の選手には身体能力を前面に出すタイプが多かった印象があります。もちろん、これは国籍によってひと括りにできるものではなく、あくまで私が接してきた選手のなかでの話です。

── 一方で、能力は十分にあっても、日本の環境に馴染めず力を発揮できないケースもあったのでしょうか。

宮田 これは外国人選手全般にアドバイスしていたことですが、「チェンジする必要はない。ただ、アジャストはしてくれ」と。契約前のメディカルチェックの段階で、必ずこの話をしていました。ただ、アメリカでは生活面で大きな問題のなかった選手でも、日本に来て初めて、言葉も文化も違う環境で暮らすことになる。そのストレスが、プレーに影響を与えることはあります。

── とくにメジャーで実績を残した選手ともなれば、プライドが邪魔をすることもありそうです。

宮田 以前、ある白人選手が「マクドナルドなのに、なんで英語が通じないんだ。『セット』じゃなくて『コンボ』だろ」といった文句を言っているのを、間近で見たことがあります。一方で、ラテン系の選手は、日本の環境に積極的に馴染もうとする選手も多い印象があります。彼らは大なり小なり、アメリカでマイノリティとして異なる文化や言語のなかでプレーしてきた経験が、異国での適応に生きているのかもしれません。

【お願いして、来てもらうのはやめよう】

── 外国人選手の日本球界に対する捉え方も、以前とは変わってきたのでしょうか。

宮田 巨人に在籍したマイルズ・マイコラスのように、日本で成功し、メジャーに復帰した好例もあります。本来、マイコラスは来日せずにそのままアメリカに残っていれば、メジャーとマイナーを行き来するような立場だったかもしれない。それなら、一度日本で活躍して自分の価値を高め、アメリカに戻って大型契約を狙う。腰掛けではなく、「日本で自分の価値を上げて帰る」という考えを持つ選手が出てきたわけですね。マイコラスはまだ若かったし、あれは新しいトレンドだと思いました。「今後、このルートはありだな」と、あの時期はすごく感じましたね。

── 数多くの外国人選手獲得に関わるなかで、宮田さんが「教訓」としたのは、どんなことでしょうか。

宮田 ひと言でいえば、「お願いして、来てもらうのはやめよう」ということです。こちらが頭を下げて、「これだけお金を払うから来てくれ」とお願いして獲得したタイプは、トラブルを起こすケースがあった。だから途中から、そういう獲り方は一切やめました。そうではなく、「日本で骨を埋めるくらいの気持ちでやりたい。ぜひ連れていってくれ」という熱意のある選手を獲りたい。

 過去にはアンドリュー・ジョーンズ(元楽天)のように、大物でも見事に日本へアジャストした例があります。一方で、お願いして来てもらったあげく、日本に馴染めず、途中で帰国してしまうような失敗もあった。ただ、そういうケースは今の日本球界全体でも減ってきたと思います。球団側も長い歴史のなかで失敗を重ね、外国人選手の獲得で本当に見るべきものは何なのかを学んできたということじゃないでしょうか。

木村公一●文 text by Kouichi Kimura

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