※画像は生成AIによるイメージです 一部の自動車ディーラーの営業マンは「残クレの方が普通のローンより金利が低いからお得ですよ」と顧客に説明し、契約を取っています。
見た目の金利だけだと残クレの方が低いケースが多く、毎月の支払い金額も抑えられていますが、実際のところはどうなのでしょうか。今回は、残クレと通常ローンの総支払額や利息負担など複数の側面から徹底比較します。
◆利用者が多い「5年ローン」で比較してみると…
それでは早速、シミュレーションを開始してみましょう。今回は車両本体価格400万円、5年後の残価が140万円(残価率35%)の車をローンで購入する前提で進めていきます。なお、購入時の諸費用やオプションは考慮しないとします。
ローンの条件として、5年均等払い・借入金利は残クレが5.2%、通常ローンが7.5%でシミュレーションします。
・5年残クレ(均等払い)の毎月の返済額:56,193円
・5年通常ローン(均等払い)の毎月の返済額:80,151円
毎月の返済額で比較してみると、残クレの方が通常のローンよりも約24,000円少なくなります。5年間で、月々の支払額だけで比較すれば、残クレの方が負担は少ないといえる結果です。
◆5年後の総返済額はどうなる?
次に、総返済額がどうなるのか比較してみましょう。前段で計算した毎月の返済額に5年分(60回)を掛ければ出ると思われるかもしれませんが、残クレの方は60回目の返済が残価となります。残価分は含めずに、59回で比較してみます。
・5年残クレ(均等払い)の総返済額:3,315,387円
・5年通常ローン(均等払い)の総返済額:4,728,909円
4年11ヶ月の返済が終わった段階で比較した結果、残クレと通常ローンの総返済額は約140万円の差があることがわかりました。この差は、最初に設定されている残価の140万円とほぼ同じ、ということになります。
残クレの最終回に車を買い取る選択をし、一括返済するのであれば、総支払額の差は月々の支払額から受ける印象ほど大きくありません。ですが、5年経った段階で新しい車を残クレで買ったら新たな返済が始まります。
当たり前ですが通常ローンであればローン残債はありませんので、車が壊れるまで、これまで返済に充てていた金額を貯めておくなどの選択ができるようになります。
◆残価が高い車だったらどうなるのか
今までのシミュレーションでは、残価率が低い前提で進めてきました。ですが最近の車の残クレで設定される残価は5年でも50%を超えるケースも出てきています。その場合はどうなるのか、先ほどの400万円の車で残価50%(200万円)でシミュレーションしてみましょう。
・5年残クレ(均等払い)の毎月の返済額:47,284円
・5年残クレ(均等払い)の総返済額:2,789,756円
通常ローンの毎月の返済額は80,151円、総返済額は4,728,909円で変わらないので、それぞれ比較してみます。毎月の返済額は約33,000円、総返済額は約194万円変わります。
ディーラーが提示している通常ローン7.5%の金利設定が絶妙で、残クレを選択した方が毎月の負担を軽くして新車に乗れる、ということがわかります。
◆金利の低いローンを組んだらどうなる?
少し視野を広げ、通常のローンを組む際にディーラー以外の選択肢を検討してみると状況が変わります。銀行系のマイカーローンは、本原稿の執筆時点である2026年8月現在、2%台で貸し出している地方銀行もあります。変動金利型のマイカーローンの場合、返済期間中に金利が上昇するリスクはありますが、ディーラーの半分以下の金利で借入が可能となります。
条件によって変わりますが、損保ジャパンのマイカーローンが固定金利2.35%〜4.7%で提供されているので、審査に通ればこちらを利用するのも一考です。
例えば固定金利3.5%で5年ローンを組んだ場合のシミュレーションは以下の通りです。
毎月の返済額:72,766円
4年11ヶ月の総返済額:4,293,194円
ディーラーの通常ローンと比較すると毎月約7,400円、4年11ヶ月で435,000円も差が出ます。もし車を7年サイクルで乗り換えているのであれば、長期間のローンを組んでみるのも一つの選択肢です。
同条件で7年間のローンを組んだ場合、毎月の返済額は53,759円、総返済額は4,515,756円です。残クレと比較すると、残価率35%の場合の毎月の返済額より約2,400円安く、残価率50%より約6,000円高い結果となります。
5年以上車を保有するとメーカー保証が切れ、自然故障の修理費やタイヤなどの消耗品の交換コストが発生するため、考慮する必要はありますが、低い固定金利+長期間のローンを組むことも検討の土俵に上がるのではないでしょうか。
◆残クレのメリットとデメリットを改めて考えてみよう
今回のシミュレーションの結果、ディーラーで買うという条件下において「車両を返却する前提」であれば、残クレを選んだ方が契約期間中の支払額は少ないことがわかりました。車両価格が値上がり傾向にある現在において、残クレを選択すれば毎月の返済額を抑えながら車を買えますので、通常のローンでは月々の負担が大きくなる車も選びやすくなります。これが最大のメリットといえるでしょう。
ただ、残クレは5年経過時点で「車両の返却・買取・買い替え」の選択を強制的に迫られるので、車が必要な人の場合、残クレによる買い替えとローン返済を繰り返すことになりかねません。加えて規定を超える走行距離や、一定以上の傷や事故による修復歴があると、追加費用が発生したり、返却できなかったりすることもデメリットです。また、買取を選択したときに残価を一括払いせずに再ローンを組むと、総返済額が増えてしまいます。
一見メリットがあるように見える残クレにもデメリットは存在しますので、ライフスタイルや車に対する考え方次第では、残クレという選択をしない方がいいかもしれません。
ディーラー営業マンのセールストークに惑わされずに、しっかりと比較検討することをお勧めします。
文/宇野源一
【宇野源一】
埼玉県在住の兼業ライター。大学卒業後、大手日系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、法人営業に従事しながら、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。X(旧Twitter):@gengen801