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東京大学とアーク研究所(Arc Institute)の研究グループが英国科学誌Natureで発表した論文「Structural mechanism governing the directionality of bridge recombination」は、大腸菌のゲノム内を移動する「動く遺伝子」(IS621因子)が、元の場所から切り出されるメカニズムを解明した研究報告だ。
この遺伝子が別の場所へ移動するには、「リコンビナーゼ」という酵素と、ガイド役の「ブリッジRNA」がセットで働く必要がある。これまでの研究で新しい場所へ挿入される仕組みは判明していたが、移動の第一歩である切り出しには「鶏が先か、卵が先か」というパラドックスが残されていた。
遺伝子をゲノムから切り出すためにはブリッジRNA(鶏)が必要不可欠。しかし、ブリッジRNAを作るためのスイッチは、遺伝子がゲノムから切り出されて環状のDNA(卵)になって完成する仕組みになっている。切り出しにはブリッジRNAが必要なのに、ブリッジRNAを作るには先に切り出されなければならない、という矛盾だ。
研究グループが詳しく解析した結果、このパラドックスの結論は、微量のブリッジRNA(鶏)が先であることが判明した。遺伝子が環状の卵になる前でも、ゲノム上の遺伝子周辺からごく微量のブリッジRNAが作られていた。
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この微量のブリッジRNAが酵素と結びついて最初の切り出し反応を起こし、遺伝子を環状にする。環状化してスイッチが形成されれば、ブリッジRNAの産生が促進され、次のターゲットへの挿入反応が効率よく進むというサイクルが明らかになった。
さらに、同じ酵素とブリッジRNAを使うのに、切り出しは挿入より起こりにくい理由を解明した。1つはブリッジRNAとDNAの結合の強さ。ブリッジRNAには「ハンドシェイクガイド」と呼ばれる短い配列があり、反応の途中でDNAとの結合が挿入では強まるのに対し、切り出しでは弱まってブレーキがかかる。
もう1つはDNAの形で、挿入時はU字型に折れ曲がったDNAが真っすぐに戻る方向に進むため楽なのに対し、切り出し時は逆に、X字型に交差した真っすぐなDNAを折り曲げなければならず、エネルギー的に不利になる。
切り出されたまま新しい場所に入れなければ、動く遺伝子は自らを失ってしまう。さらにブリッジRNAがもともと微量にしか作られないことも、挿入の優先を支えていた。
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