▲合田直弘が海外競馬の「今」を詳しく解説!(c)netkeiba 【合田直弘(海外競馬評論家)=コラム『世界の競馬』】
◆王者復活と欧州の馬場変化に注目
9月の声を聞き、10月4日にパリロンシャン競馬場で行われる、ヨーロッパ芝2400m路線のクライマックスとなるG1凱旋門賞(芝2400m)へ向けた、最終プレップが行われる時期が来ている。
今週末には早速、そのパリロンシャン競馬場で、本番と同じコースの同じ距離のコースを使った3つのレースが組まれた「アークトライアルデー」が行われる。
従来は、本番の3週間前に組まれていたアークトライアルデーが、本番4週前に移行されたのが2025年のことだった。2400m戦を2度、日本式でいうところの中2週で走るのはタフという現場の声が大きくなってきたことに応え、主催者のフランスギャロが各関係団体と折衝を重ねた末に、移行の決断を下したものだ。
だが、実に皮肉なことなのだが、昨年の凱旋門賞勝ち馬は、24年までの本番4週間前から、25年は3週間前に移設して施行された2000mのG3プランスドランジュ賞を使って(結果は2着)本番に向かったダリーズだった。
今年のカレンダーも、昨年と同様で、6日(日曜日)のパリロンシャン開催は、G1ヴェルメイユ賞、G2フォワ賞、G2ニエル賞という3つのアークトライアルに加え、もともとこの週に組まれていた、フランスにおけるマイル路線の総決算となるG1ムーランドロンシャン賞、さらには、2歳牝馬のG2オマール賞、2歳馬のG3ラロシェット賞という2つの2歳重賞を加えた、重賞6本立ての豪華な開催となっている。
そして、前出のG3プランスドランジュ賞は、今年も本番3週前の13日に組まれている。
1カ月後に迫った凱旋門賞へ向けた現段階での前売りで、各社が4番前後のオッズを提示し、1番人気に推しているのは、連覇を狙うダリーズ(牡4、父シーザスターズ)である。そのダリーズが、アークトライアルデーのG2フォワ賞(芝2400m)で、戦線復帰予定なのだ。
今年の彼は、4月26日にパリロンシャン競馬場で行われたG1ガネー賞(芝2100m)で始動。ここを3.1/2馬身差で制し2度目のG1制覇を飾ると、続いて、5月21日に同じくパリロンシャン競馬場で行われたG1アガカーン4世賞(芝1850m)に駒を進めた。25年まではイスパーン賞の名称で行われていたレースだが、25年2月に他界したアガカーン4世の功績を讃えるべく、26年から名称が変わることになったものだ。アガカーン4世が生産し、亡くなるまで所有しているダリーズとしては、素通りするわけにはいかなかったのだろう。デビュー10戦目にして初めて、2000mを下回る距離のレースを走ることになったのだが、ダリーズは全く問題にすることなく、ここも3.1/2馬身差で快勝した。
目を惹かれたのは、今年に入っての2戦で、勝負を決めにかかった時に彼が見せた切れ味だった。これは昨年の彼には見られなかったもので、競走馬として一段とスケールアップしたことを感じた。
ダリーズの今季3戦目となったのが、ロイヤルアスコット2日目(6月17日)のG1プリンスオブウェールズS(芝9F212y)。道中4〜5番手から、直線に入ると持ち前の末脚を繰り出して伸びてきたのだが、残り1Fで勢いを失うと、勝ったオンブズマンから5.3/4馬身遅れた3着に終わった。
この日のオンブズマンは怪物級の強さで、この馬に負けたのは致し方ないとしても、ゴール前の急失速を不可解に思っていたら、レース後の血液テストによって、感染症に罹患していたことが判明していた。じっくりと立て直されたダリーズは、8月25日にドーヴィル競馬場でレースコースギャロップを敢行。順調な仕上がりぶりを、ファンの前で披露している。
G2フォワ賞には当初、6月6日にエプソムダウンズ競馬場で行われたG1コロネーションC(芝12F6y)を10馬身差で圧勝したベイシティローラー(牡4、父ニューベイ)も出走を予定しており、重量級2頭の対決が見どころと言われていたのだが、ここへ来てベイシティローラー陣営が、前日の5日にケンプトン競馬場で行われるG3セプテンバーS(AW11F219y)に回ることを表明。両馬の対決は、凱旋門賞まで持ち越しとなった。
さて、夏の間もヨーロッパの競馬をフォローしていた皆様なら、先刻ご承知のことと思うが、今年は欧州のほぼ全域で、気温が高く、雨が少ない夏を経験した。地域によっては、日中の気温が40度を超える熱波に襲われたところもあり、一般ニュースでも大きく取り上げられることになった。競馬のカレンダーで言えば、6月16日に始まったイギリスのロイヤルアスコットあたりから、8月16日にフランスのドーヴィル競馬場で行われたジャックルマロワ賞あたりまで、およそ2カ月あまりにわたって、路面が硬めの状態での競馬が続いていたのである。少雨の影響は深刻で、英国南部のランボーン調教場では、枯れてきてしまった芝コースを保護するために、オールウェザーコースのみを使用して調教が行われた時期もあったほどだ。
しかし、8月も後半にさしかかると、各地にようやく恵の御湿りがあったようだ。8月19日から22日までヨーク競馬場で行われたイボア開催は、初日をGoodで行った後、2日目以降はGood to Softに。さらに1週間後の8月29日、G2セレブレーションマイルをメイン競走としてグッドウッド競馬場は、雨が降る中での開催となり、第1レースではGood to Softだった馬場が、第4レース以降はSoftになった。
英国における馬の街ニューマーケットにも、8月末にまとまった雨があり、乾いていた馬場に潤いを与えている。いよいよ、秋のヨーロッパらしい馬場状態に戻りつつあるようだ。
ただし、アークトライアルデーの舞台となるパリは、今週の天気予報にも雨マークは出ていない。パリロンシャンの春開催は、G1パリ大賞をメイン競走とした7月14日に終了。ほぼ1カ月半の休みを経て、9月3日(木曜日)に秋開催の初日が組まれている。まずは、3日の開催を見て、馬場の傾向をつかむことが肝要になりそうである。
(文=合田直弘)