みずほ銀行「2%還元、上限なし」の衝撃 なぜ、メガバンクは金利よりポイントなのか

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2026年09月10日 09:50  ITmedia ビジネスオンライン

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「最大20%」と「常時2%」は何が違う?

 日銀の政策金利は、1.0%まで引き上げられた。それでも3メガバンクの普通預金金利は0.40%で横並びのままだ。その一方で、各行はクレジットカードのポイント還元で預金者を呼び込もうとしている。みずほ銀行が9月7日に打ち出した「年会費無料、上限なしの2%還元」は、対象店舗も預金残高も問わない点で他のメガバンク2行と違う。


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●「1年・1万ポイント」の壁が消えた


 還元率そのものが引き上げられたわけではない。みずほ楽天カードの2%還元は、楽天カードの通常ポイント1%にみずほ銀行のみずほポイント1%を上乗せしたもので、この構造自体は従来と同じだ。


 今回撤廃されたのは、みずほ付与分に設けられていた「最長1年・上限1万ポイント」という制約である。既存会員も対象で、旧プランで上限に達していた利用者も、9月1日利用分から再び上乗せを受けられる。


 みずほ楽天カードの取り扱いが始まったのは2024年12月だ。楽天カードが発行し、みずほ銀行が募集を担う年会費無料のVisaカードとなる。みずほフィナンシャルグループ(FG)は楽天カードに14.99%を出資している。


 2025年からみずほポイントの上乗せが始まったものの、期限と上限が付いていた。年間100万円の利用で上限の1万ポイントに達する仕組みで、実質的には1年限りの入会特典にすぎなかった。


 「常時2%」という水準の大きさは、他社カードと並べるとよく分かる。条件なしで付く基本還元率は、楽天カード単体で1%、年会費無料カードで高い部類に入るリクルートカードでも1.2%が相場だ。


 三井住友カード(NL)や三菱UFJカードの通常還元率は0.5%で、NTTドコモも9月1日、一般のdカードの通常決済の還元率を2027年1月利用分から1%から0.5%へ引き下げると発表した(ゴールド以上は継続)。


 それ以上の還元には、年間の利用額や連携口座の預金残高、あるいは特定店舗での決済といった条件が付くことが多い。相場が下がるなかで、通常の対象決済なら利用場所を問わず2%、しかも上限なしという設計は手厚い。


 ただし、全ての支払いが2%還元になるわけではない。上乗せを受けるには、引き落とし口座をみずほ銀行の普通預金に指定したうえで、「みずほマイレージクラブ」と「みずほダイレクト」に登録し、さらに「みずほポイントモール」へ一度アクセスして規約に同意する必要がある。また、楽天カード側で還元率が下がる取引は、みずほ分も同じ扱いになる。


 例えば、楽天カードは対象の公共料金や税金の支払いを500円につき1ポイント(0.2%)としており、みずほポイントも楽天と同数しか付かないため、こうした支払いでは合わせても0.4%相当にとどまる。楽天カードをすでに2枚持っている利用者は申し込めない。


 上乗せ分が楽天ポイントではなく、みずほポイントとして付与される点にも注意がいる。ポイントモールを経由すれば楽天ポイントやPayPayポイントへ1ポイント1円相当で交換できるが、有効期限は付与月から24カ月で、利用するには交換の手間が一つ増える。


 さらに、公式の注意事項には「変更・中止の可能性」が明記されている。終了時期を定めない制度に変えたが、条件が変わる余地は残る、と捉えるのが正確だろう。


●「最大20%」と「常時2%」


 銀行がクレジットカードの上乗せ還元を提供する仕組みは、三井住友も三菱UFJも取り入れている。ただし、掲げる数字の性格は対照的だ。先行する2行がアピールするのは「最大」の数字であり、みずほが打ち出すのは「常時」の数字である。


 三菱UFJの「最大20%」は、三菱UFJカードを6月から37ブランドに広げた優遇店で使い、複数の条件を満たした場合の理論上の上限だ。通常の買い物での還元率は0.5%(1000円につき1ポイント、1ポイント5円相当で交換した場合)にとどまる。投資信託のクレカ積立でも、一般カードで0.55%、ゴールドで最大2.0%、プラチナで最大7.0%と、券種に応じて還元率に差を付けた。


 さらに8月に発表した「エムット Excellent Club」では、預かり金融資産3000万円以上または運用残高1000万円以上といった資産条件を満たす会員向けに、残高に応じて通常還元率が1.0%から最大1.6%まで動くプラチナカードを2027年度上期に出す計画だ。


 三井住友の「Olive」も同系統の設計で、看板は同じ「最大20%」だ。通常還元率は0.5%だが、セブン-イレブンやマクドナルドなど対象のコンビニ・飲食店でスマートフォンのタッチ決済を使えば8%まで上がる。


 2026年2月の改定では、Olive限定で7%から8%へ引き上げ、「三井住友カード(NL)」と差を付けた。ここに家族の登録で最大5%、Vポイントアッププログラムの条件で最大7%を上乗せすると、対象店での還元は20%に達する。


 このプログラムにはSBI証券や住友生命との取引のほか円預金残高による優遇条件もあり、250万円以上で0.5%、2000万円以上で3%が付く。SBI証券のクレカ積立にも普通預金100万円ごとに0.1%(最大0.5%)を加算する。


 2行に共通するのは、看板となる数字は高いものの、そこに届くのは対象店舗で使い、家族登録や証券・保険・預金などの取引条件を積み上げた人に限られる点だ。「最大」の数字はあくまで看板であり、日常の買い物では0.5%にとどまる。


 三井住友が対象店での還元に取引条件を上乗せするのに対し、三菱UFJは新しいプラチナカードで、預かり残高に応じて通常の還元率そのものを変える。やり方は違うが、複数の取引を自行グループに集めた顧客に厚く払う点は同じである。


 これら「20%」に対し、みずほの2%は低く見える。だが対象店舗の限定も、残高に応じた階段も、還元額にも上限がない。引き落とし口座をみずほ銀行に指定して所定の登録を済ませれば、通常の対象決済すべてに付く。報道によれば、記者発表会でみずほ銀行側が重視したと説明したのも、最大還元率の高さではなく条件の分かりやすさだった。


 もっとも、各行のいずれの還元率も、カード事業単体の採算だけでは説明しにくい。公正取引委員会の2022年の調査では、加盟店手数料の単純平均は2.70%で、発行会社と加盟店側の契約会社が別のオフアス取引に限れば、カード発行会社が受け取るイシュア手数料は取扱高の1.56%だった。


 当時の平均値ではあるが、1%を大きく超える還元を決済手数料だけで賄うのは難しい。3行の上乗せは、預金の獲得や証券・保険といった他の取引からの収益を見込んだ費用と考えるのが自然だ。預金金利は横並びのまま動かさず、「最大」か「常時」かで誰に払うかを選ぶ。それがいまのメガバンク3行による預金獲得の形だ。


●自前の経済圏を持たない銀行の選択


 みずほが条件をここまで緩くできたのは、決して余裕の表れではない。みずほは2026年に入ってから、個人向けの集客策を矢継ぎ早に打っている。7月から8月にかけては、預金残高10万円以上などを条件に現金1万円を配る口座開設キャンペーンを実施した。


 9月7日からの「秋トクキャンペーン」では、口座開設、カード入会、給与受取の条件を満たすと最大5万円相当を付与する。内訳はみずほポイント4万5000ポイントと楽天ポイント5000ポイントだ。


 さらに9月14日からは貯蓄預金の金利を期間限定で2倍にし、9月18日からは宝くじ付き定期預金も並べる。カードの上限撤廃は、この一連の集客施策の中心に置かれている。


 みずほがカード会社を持っていないわけではない。UCカードはみずほ銀行の100%子会社で、オリコも2026年6月に一部を売却した後も議決権の約33.8%を持つ持分法適用関連会社だ。


 ただ、2024年11月の楽天との提携会見でみずほFGの木原正裕社長が協業の領域として挙げたのは、オリコは与信審査、UCカードは法人カードで、個人向けカードとしてタッグを組んだのは楽天カードだった。個人向けのポイント経済圏では、この2社とは組まなかったわけだ。


 三井住友や三菱UFJが持っていて、みずほが持っていないものがそこにある。口座、カード、証券を自社グループのブランドで束ね、1つのアプリと共通ポイントで回す仕組みだ。三井住友のOliveは口座、カード、証券、保険を1つのアプリにまとめ、共通ポイントのVポイント(2024年に旧Tポイントと統合)を軸に据えて、アカウント数は700万件を超えた。


 三菱UFJのエムットも三菱UFJカードと自社ポイントを軸に、8月の発表会資料によれば2025年度に口座開設100万口座、カード発行約100万件を達成した。今回の「ナットク!みずほ」は統合プロモーションの名称であり、OliveやエムットのようなアプリやIDの統合ブランドではない。


 そうした中、みずほが選んだのは、楽天の経済圏を借りることだった。提携会見で三井住友のOliveなど他行のデジタル戦略との違いを問われた木原社長は、自前のデジタル化やポイントもやっているとした上で「1人でやるよりもオープンにやったほうが、自分の経済圏が広がるだろう」「他社と協働してやったほうが、より広がりが出る」と答えている。預金の獲得を念頭に置いたリテール戦略として、他社と組むオープンな方針を掲げたことになる。


 経済圏を一から作るのは難しい。だが発行枚数3431万枚(2026年6月時点)を抱える楽天カードに相乗りすれば、対象店を選んで還元率を積み上げる仕組みを作り込まずに済み、「どこでも2%」というメッセージを打ち出せる。分かりやすさは、個人向けのカードやポイント、アプリなどを一体化した「自前の経済圏」を持たない側が選べる、数少ない武器でもある。


 ただ他社の経済圏を借りる側の弱みもある。低還元になる取引の判定は楽天カードの基準に従うため、条件の主導権はみずほにない。また上乗せ分がみずほポイントで付く二重通貨の構造も、「分かりやすさ」の看板とは少なからず食い違う。


●先に崩れるのは預金金利か、カード還元か


 メガバンク3行のやり方を並べると、銀行がどう預金を集めようとしているかが分かる。預金金利を引き上げれば、既存顧客にまで一律に利息を払うことになるが、ポイント還元であれば、コストがかかるのは、口座を移したり取引を積み上げたりした人だけだ。


 3行は8月の引き上げ後も、普通預金金利を0.40%でそろえたまま、還元の設計で差をつける道を選んだ。通常還元の0.5%と特定店の最大20%、そして常時2%という違いは、その選択の表れである。


 みずほの「上限なし」は、そのなかで最も思い切った還元だ。ただ、これが続くかどうかはみずほ一社では決められない。2%還元の土台となる楽天カードの通常ポイントは、楽天が条件を決める。


 楽天は2023年12月にSPU(スーパーポイントアッププログラム)の獲得上限を縮小するなど、還元条件を見直してきた経緯がある。三井住友や三菱UFJが対抗して「常時」の還元を引き上げてくれば、今度は条件なしの数字そのものが競争になる。


 利用者の視点に立てば、常時2%はみずほを決済の中心口座にすることへの対価である。カードの引き落とし口座を移して所定の登録を済ませ、楽天カードをすでに2枚持っていれば1枚解約した上で申し込む。他行にすでにメイン口座をまとめている生活者にとって、比べるべきは還元率の差だけでなく、この移行に伴う実際の手間だ。


 預金金利では差をつけない3メガバンクが、カード還元では「最大」で競う先行2行と「常時」で売るみずほに分かれた。次に横並びが崩れるのは預金金利か、それとも条件なしの還元率か。みずほの2%は、その行方を占う試金石になる。


(斎藤健二、金融・Fintechジャーナリスト)



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