【マラソン】アジア大会補欠の竹井祐貴「日本代表のユニフォームを着て走りたい」 来秋MGCを勝ちきりロス五輪へ

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2026年09月12日 07:01  webスポルティーバ

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【不定期連載】箱根からロス五輪へ〜MGCに挑むランナーの肖像〜

第7回 竹井祐貴(JR東日本)後編

 箱根駅伝を走ったという事実は同じでも、その物語は一人ひとりまったく違う。区間賞を重ねたスターもいれば、たった一度の出走で思うような成績を残せなかった選手もいる。本連載では、2028年ロサンゼルス五輪代表の座を争うMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)出場権獲得ランナーたちに、箱根を走った学生時代の記憶、そして、世界を見据えて42.195kmに挑む現在地を聞く。

 第7回は、竹井祐貴選手(JR東日本・26歳)。関東学生連合の一員として箱根駅伝に出場した亜細亜大時代を振り返った前編に続き、この後編ではJR東日本入社後の成長の軌跡を聞いた。初マラソンから一歩ずつ記録を伸ばし、2026年2月の大阪マラソンでは2時間06分24秒をマークしてMGC出場権を獲得。実業団での日々の取り組みや、MGC、そしてロス五輪への思いに迫った。

前編を読む>>>「どうしても出たい」わけではなかった箱根駅伝 亜細亜大・竹井祐貴が関東学生連合として9区を走るまで

【コツコツ型が実業団で見出したマラソン適性】

「実業団は、大学3年の時に少しずつ結果が出てきたので、進めるなら進みたいなという感じで、具体的にどこでというところまでは考えていませんでした」

 亜細亜大3年時の箱根駅伝予選会後、実業団へ進むことを意識し始めた竹井祐貴の相談に乗ってくれたのは、亜大OBで当時JR東日本ランニングチームの監督を務めていた大島唯司だった。

「僕はわりとコツコツやるタイプなんですけど、大島さんの考え方もそうですし、JR東日本というチーム自体のスタイルも似ているなと感じました。(亜大の)先輩の米井(翔也)さん、上土井(雅大)さんもいらっしゃって、チーム事情も聞いていたので、印象がよかったです。その後、いくつかのチームの合宿に参加しましたが、最終的に4年になる前にJR東日本に入社することに決めました」

 竹井は実業団に進むにあたり、将来はマラソンを主戦場にしたいと考えていた。そのため、力試しを兼ねて大学4年時の2月に大阪・びわ湖毎日マラソン統合大会に出場した。

「マラソンがどんなものか経験してみたかったのと、シンプルに長い距離のほうが適性があるんじゃないかと思っていたんです。そして、実際に走ってみたら、タイムは2時間10分57秒(18位)。そんなによい結果ではありませんでしたが、しっかり取り組めば、もっとタイムを出せるなと思いました。僕が競技生活を続けている一番の理由は、自分がどれだけタイムを出せるのかが面白いから。それをマラソンで試したいと思ったんです」

 JR東日本に入社後、竹井は2022年世界陸上オレゴン大会のマラソン代表の補欠になっていた其田健也のトレーニングパートナーとして一緒に練習を重ねた。その際、あらためて「自分にはトラック種目よりもロード、特にマラソンの適性がある。継続していけばタイムが出せる」と実感した。

【今年2月の大阪マラソン、MGC出場権獲得の裏側】

 入社1年目の冬となる2023年2月には、別府大分毎日マラソンに出場。続く2年目、3年目は大阪マラソンに出場した。

「1年目の別大はMGC(出場権獲得)を狙っていて、2時間09分を切ればワイルドカードを獲れたんです。でも、2時間15分34秒とさんざんな結果に終わってしまって......。それでもう別大はいいかと思い、2年目からは大学4年の時に走った大阪を選びました」

 その入社2年目の大阪マラソンで、竹井は2時間08分44秒をマークして初のサブテン(2時間10分切り)を達成。そして、その結果に満足することなく、後半の失速を改善できればもっとやれるはずだと考えた。迎えた3年目の大阪マラソンは、2時間08分06秒をマークし、前年からわずか38秒ながら、確実にタイムを押し上げた。その勢いのまま、2025年7月には自身初の海外マラソンとなるゴールドコーストマラソンで2時間07分33秒の大会新記録(当時)で優勝を飾った。

 そして、2026年2月、竹井はMGC出場権獲得を目指し、実業団入り後3度目となる大阪マラソンに出場した。

 レースは8km付近で、注目を集めていた吉田響(サンベルクス)が飛び出した。竹井は冷静に2位集団につけ、31kmで平林清澄(ロジスティード)が前に出ると、その背中を追いかけ、すぐ後ろには山下一貴(三菱重工)が続いた。3人はそのまま吉田をかわし、竹井は日本人2位を争う位置に浮上した。

「でも、山下さんは余裕がありましたし、追いつかれた段階で、もうついていけないなとなってしまって......。早く終わらないかなと思っていました」

 結局、竹井は2時間06分24秒で総合7位、日本人3位になり、狙いどおりにMGCの出場権を獲得した。表彰式ではホッとした表情を浮かべ、「(作田)直也さん(前回MGCで5位)からいろいろな取り組みを勉強させてもらった」とチームの先輩に感謝の言葉を述べた。竹井にとって、マラソン経験値の高い先輩たちがいるJR東日本ランニングチームという環境は大きなプラスになっている。

「例えば、其田さんは、僕がやらないようなタイミングでロングジョグを入れたりする。そういう姿を見て、僕も自分なりにジョグの距離を伸ばした結果、大阪でタイムが出ました。だから、今後も継続するつもりです」

 同時に、競り負けた要因についても分析し、すでに改善に取り組んでいる。

「レース後半、太もも周りにダメージがけっこう出てしまって......。アップダウンのあるコースでのジョグをもっと増やすとか、平地を走るだけではつかない筋力を補う必要があるなと考え、今はアップダウンのあるコースを選んで走っています」

【「ここまでは本当に運よくやってこられた(笑)」】

 MGCまでまだ1年以上ある。すでに出場権を獲得し、長い準備期間を得た選手の多くは、その時間を有効に使おうと、新しい取り組みに着手したり、海外のレースに挑戦したりしている。竹井はどう考えているのだろうか。

「MGCまでは、特別なことはせず、今回の大阪までの練習を少しずつブラッシュアップしていく予定です。それで結果が出ているので、その流れを大事にしながら、ジョグの強度を高めるためにアップダウンを入れていく感じですね」

 そんな強化のプロセスにあって、竹井が乗り越えようと考えているのがトラック種目の自己ベストの壁だ。5000mは2022年に出した13分51秒91、10000mは2023年に出した28分32秒16。いずれも長い間、更新できていない。トラックでスピードを磨くことについては、どう考えているのだろうか。

「今のマラソンは、スピードもマストだと思うんです。トラックはあまり得意じゃないですけど、5000mと10000mの自己ベスト更新は今の自分の課題でもあるので、そこは逃げずに取り組んでいきたいです。ただ、スピード(練習)をやりすぎて調子を崩しては元も子もありません。そこに気をつけながら、自分のやれることをやっていくつもりです」

 箱根駅伝出場は関東学生連合で一度きりだったが、大学卒業後は実業団で着実に実績を積み、現在はキャプテンを務めている。MGC出場権も獲得し、ロサンゼルス五輪行きに挑戦する権利を得た。その流れを竹井は「運ですね」という。

「ここまで本当に運よくやってこられたなと思います(笑)。僕は特に"人との縁"に恵まれているんです。高校時代は、(強豪の)鹿児島工業と一緒に練習できるような人脈を持つ先生と出会えましたし、進学校だったので、本来なら高3になると午後6時まで補習授業がありました。でも、長めのジョグを入れたい時やポイント練習がある時には、先生たちが補習を免除してサポートしてくれたんです。大学でも佐藤さん(信之/前監督)と出会うことができましたし、本当に人との縁に支えられながらここまでやってこられたと感じています」

【「やっぱり補欠は補欠」】

 運と運をつなぐ隙間に竹井の地道な努力があるのは間違いない。その努力を紡いだ先にロサンゼルス五輪がある。

「アジア大会(愛知・名古屋)は(マラソン代表の)補欠になったんですけど、やっぱり補欠は補欠ですので、日本代表としてジャパンのユニフォームを着てマラソンを走りたい。この気持ちを大事にしてMGCで勝ちきって、戦える選手としてロス五輪に出たいと思っています」

 その舞台に立つため、竹井は、大阪マラソンで戦った平林、山下をはじめ、日本のトップランナーが集結するMGCで、結果を出すことが求められる。

「(MGCが開催される)10月の名古屋は、まだ暑いですよね。個人的には暑さには強いので、暑いレースになれば勝機はあるのかなと思っています。まだまだ力を伸ばせると信じて、MGCに向けて準備していきたいと思います」

 MGCは、箱根駅伝に劣らない大舞台になる。運を味方につけて、竹井はロス五輪への道を切り開くことができるだろうか――。

(了)

竹井祐貴(たけい・ゆうき)/1999年生まれ、鹿児島県出身。鹿児島中央高から亜細亜大に進み、箱根駅伝は4年時に関東学生連合の一員として9区を走って区間6位相当。大学卒業後はJR東日本に入社。2025年7月のゴールドコーストマラソンを2時間07分33秒の大会新記録(当時)で制すと、2026年2月の大阪マラソンでは2時間06分24秒(日本人3位、総合7位)をマークしてMGC(マラソングランドチャンピオンシップ/2028年ロサンゼルス五輪マラソン日本代表選考会、2027年10月3日開催)出場権を獲得した。マラソン以外の自己ベストは5000mが13分51秒91、10000mが28分32秒16、ハーフマラソンが1時間03分11秒。

佐藤俊●取材・文 text by Shun Sato

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