
今年に入って、ウクライナ軍によるロシア領内への攻撃が続いている。
【写真を見る】「内部情報をウクライナ軍に…」ロシア石油施設を狙う地下組織「黒い火花」—元国営ガス系幹部が明かす“プーチンとの戦い”【単独インタビュー 前編】
エネルギー関連施設を標的にしたものが目立つが、実はこうした攻撃を、ロシア国内に存在する「地下組織」が情報面などで協力しているという。
ロシア国営天然ガス大手「ガスプロム」系企業の元幹部で、地下組織「黒い火花」の“公の代表”として情報を発信する人物(元ガスプロム幹部 イーゴリ・ヴォロブエフ氏)がBS-TBS『報道1930』の単独インタビューに応じた。
――自己紹介と「黒い火花」でどのような立場にあるのかを教えてください。
私はイーゴリ・ヴォロブエフ、ウクライナ軍の軍人です。同時に、ロシア国内の地下運動「黒い火花」の公的な代表を務めています。
|
|
|
|
――「黒い火花」はどのような目的で作られたのでしょうか。
目的はいくつかあります。
第一の、最も重要な目的は、ロシア国内での実力による抵抗を通じて、プーチンの犯罪的体制を解体することです。
第二の目的…「黒い火花」のメンバーはロシア人の帝国主義的な思考がロシア最大の災いの一つだと考えています。そのため彼らは、彼らの言い方では「帝国の崩壊」を支持しています。この点は、まさに日本の視聴者にとって興味深いテーマだと思います。
第三の目的は、ウクライナとの戦争を終わらせること。
第四はロシアを自由で民主的で、攻撃的ではない国、あるいは「複数の国」に変えること。
第五は、今後「ロシア」と呼ばれるものを文明的な国際社会に統合することです。
――では、なぜウクライナ軍と協力しているのですか。軍とはどのような関係ですか。
まず私の軍での役割と「黒い火花」との関係を手短に説明しましょう。私の主な任務、立場ですが、私はウクライナ軍に所属し、階級は下級軍曹です。無人システムを担当しています。つまり、私は今もプーチンと戦っています。同時に「黒い火花」側の発案ですが、彼らは私が公的な代表として最もふさわしいと判断しました。ただし私は組織のメンバーではなく、計画された作戦の立案にも参加していません。私は言わば、この運動の「声」です。私の役割は「黒い火花」を人々に理解され、知られる組織にすること、そして参加者を増やすことです。組織への信頼を高め、それによって参加者の数と活動の規模を拡大することです。
最も重要なのは、「黒い火花」はロシア国内に暮らすロシア人が作った独立した組織だということです。彼らはロシアから出国することもできましたが、ロシアに残り、地下で戦う道を選びました。組織を立ち上げた後、彼ら自身がウクライナ国防軍に接触しました。ロシア国内で得られる人的情報や機密情報、潜入の可能性などを考えれば、場合によっては単独で活動するよりも、ウクライナ側と組むほうが効果が大きくなると理解したからです。つまり、自分たちの活動の効果がはるかに大きくなると判断した場合には、ウクライナ国防軍に協力します。それ以外の作戦はすべて独自に実施しています。
――「黒い火花」の目的達成のため、ウクライナの軍事的能力も利用するということですね。
もちろんです。特定の作戦ではパートナーとして行動する。ただし、すべてではなく、ごく一部です。
――ロシア国内の製油所への攻撃で「黒い火花」は具体的にどのような役割を果たしているのか、ウクライナ軍の攻撃の効果を高めるための具体的活動を可能な範囲で教えてください。
|
|
|
|
彼ら(「黒い火花」)には、ウクライナの情報機関が集められない情報を収集できる能力があります。その情報によって、攻撃をより適切なタイミングで、より正確に行うことができます。例を挙げましょう。
最近「黒い火花」がウクライナ国防軍と共同で攻撃した製油所は、ロシア西部の「リャザン製油所」です。石油処理量でロシア第3位、モスクワ地域への石油製品供給という点では第2位の製油所です。つまりロシアの石油精製業界でも最重要級の企業です。「リャザン製油所」は、それ以前にも数回攻撃を受けています。それまでの攻撃には「黒い火花」は参加していませんでしたが、彼らは状況を監視することができました。この製油所は「ロスネフチ」(ロシア石油大手)が所有していますが、そこに新しい設備が搬入され始めたことを把握できたのです。
つまり修理が、工場を再稼働できる段階まで進んでいたということです。
先ほど「タイミング」が重要だと言いましたが、彼らはその情報を集め「今こそもう一度攻撃して、再稼働できないようにする時だ」と伝えました。さらに、どの製油所も非常に広大です。最大の損害を与え工場を停止させるには、どこを攻撃するのが最も効果的かを正確に知る必要があります。それを可能にしているのは、彼らの中にロシアの石油・ガス産業に直接関係する人々がいるからです。つまり、その情報にアクセスできます。ウクライナ国防軍の情報部門には、その種の機会がないのです。
――「黒い火花」は施設の弱点に関する情報を提供していると言えるのですね。
それに加え攻撃のタイミングが重要で、いつ攻撃するのが最もよいかを知る必要があるのです。私が「リャザン製油所」を例に挙げたのは、ここがすでに何度も攻撃されていたからです。復旧作業が繰り返され、再稼働されていました。それを防ぐには、新しい設備が運び込まれ、設置を始めたまさにそのタイミングで攻撃する必要があったのです。
そのタイミングは、衛星が使えたとしても追跡するのが非常に難しい。しかもウクライナには自前の衛星がありません。「黒い火花」にはそれを把握できる可能性があります。さらに、選択肢として場合によっては、こうした工場に出入りできる人が追加で爆発物を仕掛けることもできます。それによって攻撃の効果を強められる。まさに相乗効果です。国防軍の攻撃に追加の爆薬を組み合わせれば、工場の損害を大きくできます。
――ウクライナ軍への協力以外に、組織独自でどのような活動を行っていますか。
|
|
|
|
先ほど主な目的について話しましたが、次は課題です。例えば、東京へ新幹線で行くことが目的だとすれば、課題は切符を時間どおりに買うことです。「黒い火花」の主要な課題の一つは、プーチンの経済と戦争遂行の最大の資金源、つまり石油・ガス産業に打撃を与えることです。
具体的には、ロシア西部ヤロスラブリ州グルコヴォの石油貯蔵施設、南部ロストフ州パルキノの石油ポンプ施設が攻撃されました。爆破によってサンクトペテルブルク周辺の幹線ガスパイプラインが破壊されました。さらに「ヴァルダイ・プスコフ・リガ」幹線ガスパイプライン、そしてニジネカムスクネフテヒム向けの供給パイプラインも攻撃を受けました。これはロシア最大の石油化学企業「SIBUR」に属する資産です。さらにカスピ海では、ロシアの「影の船団」を護衛していた「ブヤン」級小型砲艦が沈められました。その艦は輸出される石油の輸送を護衛していました。また、100両以上の鉄道機関車が破壊または損傷し、燃料・潤滑油を積んだ多数の鉄道タンク車も被害を受けました。
――ハッカー攻撃もありますよね。
はい。「黒い火花」が積極的な情報発信を始めてから優秀なIT専門家が加わるようになり、サイバー攻撃も行っています。例を挙げるとアラブガで攻撃型無人機「ゲラン」を製造している企業のデータベースにアクセス、資料を遠隔で吸い上げたうえ消去しました。アラブガで働いていた人々がほぼすべて記録されており、さらに15歳の子どもを無人機の組み立てに動員していた事実も記録されています。将来、こうした犯罪の証拠として突きつけるためです。
※後編へ続く

