プチでもさすが! たいめいけんのオムライス―[連載『孤独のファイナル弁当』]―
『孤独のグルメ』原作者で、弁当大好きな久住昌之が「人生最後に食べたい弁当」を追い求めるグルメエッセイ。今回『孤独のファイナル弁当』として取り上げるのは「たいめいけんのオムライス」。果たして、お味はいかに?
◆孤独のファイナル弁当 vol.42「プチでもさすが! たいめいけんのオムライス」
ボクは普段好んでオムライスを食べない。
卵もチキンライスも好きだ。でも卵は卵、チキンライスはチキンライスで食べたい。
なぜだろう?
と思って、オムライス弁当を買って食べてみることにした。自分の好みの見直し。
たいめいけんの「Petitオムライスプレート」税込み980円。
小さいから、もし気に入らなくても心のダメージが少ないだろうと思ったのだ。
でも「プチ」なのに980円はちょっと高い。さすがたいめいけんだ。老舗ブランド値段か。
まず蓋を開けてみて、卵の色の鮮やかさ、その表面のなめらかさが、家で作るものとは全然違う事に驚く。町中華のメニューの端にたまにあるオムライスともまた違う。
小さなエビフライ、小さなハンバーグ、ちょっぴりのスパゲティ、フライドポテト3個、ブロッコリーひとかけらと、小さじ1杯ほどのコーン。おかずも全部ものの見事にプチ。小さい、少ない。
で、別の袋にケチャップ的なソースが入っていて、オムライスに自分でかける。ソースで何か文字を書こうかなぁ、と思ったがアホらしいのでやめて普通にかける。
で、スプーンでオムライスをザクッと切りすくって、食べた。
う、うまい。
この見た目はハッタリではなかった。卵とチキンライスとケチャップ、全っ部うまい。うわー、さすが。丁寧というか繊細というか緻密というか、でも口の中でとろけるような洋食感がある。うわー。そうだったの?
で、エビフライを食べようとして、これはスプーンでなくフォークで食べる弁当だな、と思って、食器をフォークに変更。小さな小さなエビフライを半分齧る。
……うまい!これもうまい。衣は時間が経ってシナシナなのに、エビフライ特有の香ばしさが残っている。なぜ?
そしてハンバーグを食べたら、これまた小さいのにまあよくできている。洋食だ。試しに残しておいたケチャップをかけてみたら、ぐぐぐっとおいしくなった。
あらためて思う、これはケチャップじゃない。特製トマトソース。すげえうまい。
こうなるともう付け合わせのスパゲティもうまいに決まってるように見えてきたが、はたしてうまい。付け合わせにはもったいない、これ一皿食べたい。味付けが上品。
そして全体に味が薄めなのも嬉しい。風味は濃いのに。
いや驚いた。これきっとまた買う。オムライス観が変わったかも。今度街の飲食店でもオムライス頼んでみようかな。
うーん。カツカレーも食べず嫌い、焼きそばに卵も食べず嫌い、かもしれない。と、最後にデザートのようにコーンを一粒ずつフォークで刺して食べながら思いました。
―[連載『孤独のファイナル弁当』]―
【久住昌之】
1958年、東京都出身。漫画家・音楽家。代表作に『孤独のグルメ』(作画・谷口ジロー)、『花のズボラ飯』(作画・水沢悦子)など。Xアカウント:@qusumi