「iPhone Duo」登場の裏で「iPhone 18」が発表されなかった理由 変わりゆくラインアップ戦略を読み解く

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2026年09月12日 11:40  ITmedia Mobile

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Appleは、同社初のフォルダブルスマホとなるiPhone Duoを発表。ラインアップの分散も始めている。写真は、9月にCEOを引き継いだジョン・ターナス氏(写真提供:Apple)

 Appleは、9月10日未明(日本時間)に新製品発表会を米カリフォルニア州クパチーノで開催。初のフォルダブルスマホとなる「iPhone Duo」や、カメラに絞りを搭載した「iPhone 18 Pro」「iPhone 18 Pro Max」などの新モデルを発表した。Apple WatchやAirPodsの新製品もそろえた。


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 同社初のフォルダブルスマホということもあり、iPhone Duoに高い注目が集まっているが、スマホのラインアップ全体を見渡しても、今回は大きな変化がある。ノーマルモデルのiPhoneや、2025年に登場した「iPhone Air」の後継機が不在な上、継続販売する過去モデルも通常なら値下げされるところが、値上げになっていることだ。背景には、メモリの調達が厳しくなっている市場環境がありそうだ。


●スマホは3機種、例年より少ないiPhoneのバリエーション


 例年、Appleは9月にiPhoneのラインアップを一新してきた。2017年の「iPhone X」登場時に、1機種だけ投入が遅くなるといった例外はあったものの、ここ数年はノーマルモデルとプロモデルで画面サイズ違いが2機種ずつというのが定番になっていた。2025年はこの図式がやや崩れ、ノーマルモデルの大画面版に変わって、超薄型モデルのiPhone Airがラインアップに加わっていた格好だ。


 一方で、2026年9月に発表されたスマホは、iPhone DuoとiPhone 18 Pro、Pro Maxの計3機種。カテゴリーとしてフォルダブルスマホのDuoが新設されたものの、ノーマルモデルの「iPhone 18」やiPhone Airの後継機は発表されていない。


 恒例となっている締めのラインアップ紹介では、iPhone DuoとiPhone 18 Proに加え、iPhone Airと「iPhone 17」「iPhone 17e」がまとめて並べられていた。2026年3月に登場し、発売から半年しかたっていないiPhone 17eはもちろん、販売開始から間もなく1年が経過するiPhone 17やiPhone Airもいまだ“現役”というわけだ。


 とはいえ、ノーマルモデルのiPhoneは販売実績も高く、Appleにとって文字通りのドル箱だ。香港に拠点を構える調査会社のCounterpoint Researchは、10日、iPhone 17シリーズが発売初年度の売上高で過去最高を記録したと発表した。その記録をけん引したのはノーマルモデルのiPhone 17で、同調査によると前年度比で1.3倍にも拡大しているという。同モデルは、上期に世界で最も台数が売れたスマホにもなった。後継機を出さない選択肢は考えづらい。


 2025年2月に投入された「iPhone 16e」の登場以降、AppleはiPhoneの投入時期を徐々に分散させようとしていた節がある。Appleの決算を見れば分かるように、iPhoneは同社の主力製品で、売り上げの約半分を占める。その半分を9月に一斉発売していることから、同社の決算は四半期ごとの波が大きく、例年、9月を含む同社の第4四半期や年末商戦を含む翌第1四半期に売り上げが大きく伸びていた。


 サービス部門や他の製品で売り上げは分散させようとしているものの、サプライチェーンや社内リソースにかかる負荷にも波が出てしまう。予測の難しさは、株価に悪影響を与えることもある。また、今回は、フォルダブルスマホのiPhone Duoが加わったため、もしiPhone 18やiPhone Airの後継機があったとすると、スマホだけで一気に5製品も展開することになる。Duo投入のタイミングは、ラインアップ戦略を見直すには最適な時期だ。


●見え隠れするメモリの影響、日本では2段階値上げに


 売れ筋ということはそれだけ製造のためのデバイスも必要になる。ここ最近、特に調達が難しくなっているのが、メモリやストレージなどの半導体だ。ユーザー側には、値上がりという形でその影響が波及しているが、メーカーにとって値上がりはもちろん、必要な量のメモリを確保するのも困難な状況になっている。出ていないので気付かれないが、中にはお蔵入りになった製品もあるはずだ。


 ラインアップの投入時期を分散させるのは、この影響を受けた可能性も高い。上記のように、ノーマルモデルは特に売れ行きがいいため、その分、メモリやストレージの数量も必要になる。品薄になってしまうぐらいであれば、もう1つの人気モデルであるiPhone 18 Pro、18 Pro Maxとは間隔を空けたいと考えても不思議ではない。


 また、日本では、ベーシックで価格を抑えたハイエンドモデルが1月から3月の春商戦に売れやすいという特徴もある。この時期は携帯電話の新規契約が最も増えるといわれている。日本の春商戦はやや特殊な例だが、Appleの地域別売り上げでは7%前後を占めており、決算のセグメントとしても地域ではなく、1カ国単独で数値が開示されているだけに一定の考慮はするはずだ。欧米ではイースター、中華圏では春節(旧正月)もあり、この時期に幅広い層に訴求しやすいベーシックモデルと廉価モデルをまとめて投入するのは合理性が高い。


 ただ、iPhone Airがどうなるかは未知数だ。スマホとして見れば決して小さな出荷台数ではないものの、そぎ落とした仕様が裏目に出て、世界的な販売不振が報じられている。特に日本では、専用SKUで大量に出荷したこともあり、たびたびセールにかかっているほか、キャリアでも投げ売り価格がつけられている。


 弱点だったシングルカメラからデュアルカメラに変更し、スペック的なかぶりが多くなるノーマルモデルと統合するとの見方もあるが、現時点では明確なアナウンスは出ていない。iPhone Airは、その薄さゆえにバッテリー容量を増やしづらく、ノーマルモデルの代替にはなりづらいようにも思えるが、シリコンカーボンバッテリーなどでスペックを底上げできれば、ありえない話でもない。iPhone Duoの登場で、増えすぎたラインアップの再編が進む可能性もある。


 メモリの影響は、ラインアップだけでなく、発表された端末の価格にも出ている。iPhone 17シリーズは7月に日本での値上げに踏み切ったものの、これは為替調整の側面が強く、米国などでの価格は据え置かれていた。これに対し、iPhone 18 ProやPro Maxは、米国での価格も1199ドルからと、1099ドルだった前モデルから100ドル値上げされている。


 日本でのiPhone 18 Proは、7月に実施された値上げ後のiPhone 17 Proよりもう一段高い、21万9800円からに設定された。円安とメモリ高騰のダブルパンチにより、iPhone 17 Pro発売時の17万9800円から4万円も高くなってしまった格好だ。


●現役続行モデルの値上げは異例、日本での影響は?


 新発売のiPhone 18 ProやPro Maxだけでなく、現役モデルとしてラインアップに残るiPhone 17やiPhone Air、iPhone 17eも、その影響を受けている。こちらも、iPhone 18 Proの価格設定と同様、米国でのドル建て価格も上がっているため、メモリやストレージの価格高騰を受けたものとみていいだろう。3機種とも100ドルの値上げが実施されている。


 これを受け、日本での価格もiPhone 17と17eが1万7000円、iPhone Airが1万2000円値上がりしている(いずれも最小構成の場合)。ストレージ容量が1TBのiPhone Airは29万4800円になり、7月の価格改定後と比較しても4万7000円高くなっている。容量が大きいほど調達価格が上がっていることを示唆する価格設定だ。


 既存モデルの在庫は、メモリやストレージの調達価格が安いときに出たものなので、一見すると便乗値上げのように思えるが、一部のiPhoneは追加生産しつつ、複数年に渡って売り続けるのが一般的。Amazonやキャリアでたびたび在庫処分のようなセールにかかるiPhone Airはそこに当てはまらないが、iPhone 17や17eは、ここ数カ月で製造コストが上がってしまっているとみていいだろう。


 例年であれば、新モデルとバッティングしない旧モデルを残し、価格を引き下げていた。全てがハイエンドモデルで、廉価モデルのないiPhoneは、過去のモデルを値引いてAndroidのミッドレンジモデルに対抗する戦略を取っている。モデル数を増やして開発コストを上げるのではなく、登場から時間がたったハイエンドモデルをミッドレンジ相当としてラインアップに残すという手法で、こちらの方が費用対効果は高まる。


 継続モデルの値上げを余儀なくされたのは異例だ。それだけ、メモリやストレージの価格高騰がスマホ全体に大きな影響を与えているともいえる。とはいえ、AI需要の高まりは当面続くとみられており、すぐに調達価格が下がるとは考えにくい。一方で、サムスンやGoogleなどの競合は、あえて円高気味に価格設定をするなどして、日本での値上げ感を抑えている。この価格差の広がりが、販売動向にどう影響するかは注意して見守りたい。



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