新人はあえてAI禁止! 吉本興業元会長とSTARTO創業CEOが明かす「熱狂を生む現場主義」

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2026年09月12日 18:21  ITmedia ビジネスオンライン

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STARTO ENTERTAINMENTの初代CEOを務めた福田淳氏(左)と吉本興業の元会長・大﨑洋氏(撮影:シカマアキ)

 リスクを削ぎ落とした80点の正解、型通りで優等生な組織──。生成AIがあらゆる業務に無難な答えを出しながら効率性を突き詰めたその先に、顧客の心を揺さぶり、自社を急成長させる「熱狂」は生み出せるのだろうか。


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 ダウンタウンをはじめ数々の「異能の逸材」を世に送り出してきた吉本興業元会長・大﨑洋氏と、旧弊を打ち破り、俳優“のん”氏のエージェントやSTARTO ENTERTAINMENT(以下STARTO、旧ジャニーズ事務所)創業CEOを務めてきた福田淳氏が、大阪府内のイベント「『結局、熱狂できる人がうまくいく。』出版記念トークライブ 福田淳×大﨑洋が語る『熱狂』の力」で対談した。


 日本のエンタメ業界の変革をけん引してきた2人が明かすのは、AI依存では到達できない「ややこしいおっさん」(=「強い個」)の圧倒的な価値だ。「新人はあえてAI禁止」「芸人は管理せず暴れさせる」と明かす2人の経営者が語る「突き抜ける組織を作るための現場主義」に迫る。


●「80点の正解」に感動はない AIが消し去る「歪み」


 AIは、そこそこ良い「80点レベル」のコンテンツを自動生成する一方、コンテンツを作る際に欠かせない「偏愛」や「不合理」といった“熱狂の源泉”ともいえる部分を「そぎ落としてしまう」と指摘するのが福田氏だ。


 過去に携帯電話向けコンテンツを手掛けるソニー・デジタルエンタテインメント創業CEOやSTARTO創業CEOなどを務め、デジタルとエンタメの可能性を追求してきた福田氏は現在、AIだけで2時間映画を作るプロジェクトを手掛けているという。その経験から「AIが弾き出す映像やシナリオって、きれいに整い過ぎているんです。人の心を揺さぶる『エグみ』や『歪(ゆが)み』がないんですよね」と指摘する。


 「AIは、効率化の道具としては最高です。しかし、100点を超える感動や熱狂を生むことはできないなと思います。やっぱり0から1を作るのは、人間。人間の狂気的な偏愛や熱量だけなんです」


 大﨑氏も、エンタメ業界におけるAI活用の可能性については懐疑的だ。


 同氏はかつて、スウェーデン出身の4人組ポップグループ「ABBA」のメンバーが20代だったころの姿をデジタルで再現したライブショー「ABBA Voyage」を、英ロンドンで鑑賞した。その際「超ハイテクで完璧に再現されていて、最初はお客さんも熱狂しているんやけど、僕は途中で虚しくなって座り込んじゃいました」と明かす。


 その後パリのミュージカルやサーカスを見に行ったといい「やっぱり舞台に人が出てこんと面白くない。ステージは人。人間がステージに立ち、汗をかいて生で演じるから感動する。やっぱり俺はこっちが好きやなと思いました」と感想を語る。


 同氏は、東京・四谷にある寿司店のベテラン職人が、マグロの身を指先の感覚だけで極薄に削ぎ分けてしまう事例を挙げ「マグロを削ぐための微細な差はデータ化こそできても、そこに宿る『大将の念や呼吸』はAIには作れない。エンタメもビジネスも同じです」と指摘した。


●新人はあえて「AI禁止」 過度なコンプラやガバナンスが「異能」を殺す


 組織をマネジメントする場合は、どうだろうか。両氏は、AIが吐き出す「無難な解に浸かりきった組織は、型通りの優等生ばかりを生み出しかねない」と懸念する。実際、毎年300人以上を採用するIT大手のSHIFTが、新人研修で「5分間のAI禁止タイム」を設け、まず人間同士で考え抜かせるなどの取り組みをしているように、デジタルから一旦離れて思考力を鍛え直す試みは広がりつつある。


 両氏によれば、特に、欧米型の厳格なコンプライアンスやガバナンスをそのまま日本企業に適用しすぎると、個性的なアイデアを出す人材を排除し、組織全体の“基礎体力”が削がれていくという。福田氏は「『企業経営でAIをどう使うか』とよく質問されますが、僕は新入社員には、会社でのAI使用を禁止したらいいんじゃないかと思っています」と話す。


 福田氏は、エンタメ分野の海外進出支援を手掛けるスピーディ(東京都港区)を経営し、若手の育成にも取り組む。自社では、プロとして自律させるための基礎体力づくりとして、あえて「AIを使わずに自分の頭で格闘する修行期間」を設けているという。


 「私の会社では、新入社員は一時的に『AI使用禁止』にしています。最初からAIに頼ると、自分の頭で格闘する力が身に付かず、日本企業特有の強みや熱量が殺されてしまうからです。これは細かなルールで管理・統制するためではなく、将来的にプロとして対等に扱える『自律した個』を育てるための修行期間なんです。その土台があって初めて、個々が自由に暴れられるプラットフォーム型の組織が成立します」


 大﨑氏も吉本で社長・会長を務めた経験から、組織の論理や管理手法に「個」を当てはめようとすればするほど「尖ったイノベーションの芽は摘まれていく」と主張する。個性の塊のような芸人たちを長年束ねてきた大﨑氏は、経営者の役割が変化し、これまでの「管理」から「居場所作り」になっていくと話す。


 「吉本の芸人は全員が個人事業主で、いわば『狂っている奴ら』です(笑)。彼らを会社型にはめようとしたら、個々の才能は死んでしまう。社員も同じで、会社経営も同じ。経営者の仕事は彼らを管理することではなく、彼らが暴れられる『居場所』(舞台)を作り、僕らは横で寄り添うだけでいい。一見すると無駄に見えるおしゃべりや関係性、失敗を許容する文化の中にこそ、次のビジネスの新しい芽があるんです」


●米Microsoftも驚愕 AI時代に日本企業が「世界で勝ち抜く」道は?


 世界の市場で競合と対峙する際、日本企業の勝ち筋はどこにあるのだろうか。「単純な規模の大小を競うような勝負に挑んでも、勝ち目はない」と両氏は指摘する。むしろ、欧米的な視点からは「非効率」に見える日本人の「オタク的なこだわり」が、強力な参入障壁となり得ると話す。


 大﨑氏は、日本人が無意識に発揮している「細部への異常な執着」こそが武器になることを、自身が顧問を務めているデバッグ(バグ探し)の専業大手デジタルハーツの事例を基に説明した。同社は米Microsoftから、日本企業として初めて家庭用ゲーム機「Xbox 360」の推奨ゲームテスト企業認定を取得した企業だ。その後デジタルハーツは、Xbox向けタイトルのデバッグ業務を数多く受注し、急成長を遂げる大きな原動力となった。 


 「Microsoftの重役がわざわざ来日して、デジタルハーツのオフィスに来たんです。そして『なぜ日本人はアングロサクソンより4.2倍も早くバグを見つけられるのか』と驚かれたことがあります。日本人の『細かいノイズに気付く力』『オタク的集中力』は異常なんです。つまり、欧米の模倣をしていても勝てないということです。日本人が昔から持っている『オタク的なこだわり』こそが、AI時代に世界で勝てる武器になり得ます」


「数値」ではなく、ノイズを見逃さない「深さ」が勝ち筋になるということだ。福田氏も「マーケティング上の数字」を追うのではなく、特定顧客との「熱量の深さ」を追求することが、結果として「事業の持続可能性を高める」と同調する。


 「熱狂する人って、声が大きくてよく食べて、自分の好きにどこまでも没頭できるエネルギーのある人。例えるならTikTok(の短尺動画)で、0.3秒でスクロールされてしまう『薄い何万人のファン』よりも、自分の言動に3時間付き合って自著を読んでくれる『1000人の深いファン』(熱狂)を作る方が、ビジネスとしては、はるかに息が長くて強いと思うんです。数の多さよりも『数は少なくても共鳴する読者』に届くことに意義があるんです」


●次世代リーダーへの提言 経営者の覚悟が組織に「熱狂」を生む


 両氏とも、AI活用の可能性について否定はしていない。むしろ作業自体はAIに委ね、その浮いた時間で「生身の人間と向き合い、挑戦と失敗を繰り返すハイブリッドな経営を目指すのが最適」と提言する。


 福田氏は「『失敗を恐れるな』と言うなら、経営者自身が一番泥をかぶり、100回失敗しても101回挑戦する姿を見せないと意味がない」と主張する。経営者がリスクを取って現場で汗かく姿を見せなければ、組織に熱狂の波は広がらないためだ。失敗を許容する「覚悟」をリーダーに求めている。


 「上司が『失敗してもいいぞ』と言える空気を作ることが、大事です。ビジネス書って『成功法則』ばかり書かれていますが、本当に価値があるのは『失敗談』。失敗の数だけ成功の確率が上がるんだから、社員にはどんどん失敗させればいいんです」


 大﨑氏も「世の中がAIやネットでスピードアップすればするほど、生身の人間と向き合い、声を聞き、背中を押してあげる『人間くささ』の価値が上がっていく」と語る。「AI時代だからこそ、人間を諦めちゃいけない。AIに教わるんじゃなくて、AIを使って人間をもっと面白くするんです」


●「ややこしいおっさん」に宿る真価 ビジネスの勝敗を分けるのは?


 あらゆる業務プロセスへのAI導入が不可避となる中、いかに作業の効率化を図りつつ、自社ならではの独自性や人材の創造性を損なわずに組織文化へ落とし込むか──多くの経営層がそのかじ取りに頭を悩ませている。AIが便利さと可能性を広げられる期待がある一方、思考力や表現力をAIに過度に依存すると、創造性や考える力、訓練や経験で得られる能力が衰える危険も伴う。


 AIが標準的な答えを出すことで、人間の「均質化」が進む。実は大事なのはその先にある。「個々の持つ力こそがビジネスの成否を左右する」というのが、両氏の見通しだ。


 例えば「文章を書く」「地図を読んで旅をする」といった体験を通して基礎能力を鍛えることが、AIと向き合う上でも有利に働くという。スマホネイティブ世代には、地図を読んだことがなく、スマホがないと目的地に到着できない若者も存在する。福田氏はこうした若者の体験不足を懸念しつつ「さまざまな訓練や現場での経験こそが、人材育成には必要」と言い切る。福田氏は「AI依存では、私や大﨑さんのような『ややこしいおっさん』にはなれません。AIが一番苦手な部分だからです」と話す。


 AI時代における組織経営の正解は、明確だ。定型業務など「80点でいい作業」は徹底的にAIに任せ、経営者は個の才能を解き放つ「環境づくり」に集中することである。AIが弾き出す均質化された答えからは、人を惹きつける熱狂もイノベーションも生まれないからだ。


 リーダーがやるべきは、AIで浮かせた時間と資金を現場の「人」へ注ぎ込み「100回失敗しても挑戦できる環境」を作ることだ。現場体験を通して育った「尖った個」が、自由に暴れられる舞台を整える。この「現場と異能への投資」に舵を切ることこそが、AI時代に他社を圧倒し、強い組織を作る勝ち筋だ。


●著者紹介:シカマ アキ


大阪市出身。関西学院大学社会学部卒業後、読売新聞の記者を経てフリーランスのジャーナリスト・フォトグラファーとして活動中。主な取材分野は、旅行、飛行機・空港、官公庁や自治体、スポーツなど。国内外で、雑誌やWebなど向けに取材、執筆、撮影などを行う。ニコンカレッジ講師、空港や旅行会社などでのセミナーで講演活動も。



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  • 某有名AI使って作成しました。と自慢げにレポートを公開していた後輩がいるんだけど、 アホなインテリジェンスと間違えたんかと思うくらい酷かったぞ。 やはり、利用する人のア・タ・マも大事です。
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