限定公開( 1 )

こんにちは! refeiaです。
今日はワコムが5月に発売した回転検知に対応したペン、「Art Pen 2」を見ていきましょう。Art Pen 2は、これまであった筆圧検知や傾き検知に加えて、軸の回転を検知できるようになったペンです。
「軸の回転? たぶん、自分と関係ないし見なくていいか」と思う人が多そうです。ですが、実際には「回転検出用の特殊なペン」というより「標準ペンの新たな選択肢」のような側面も持っています。
我々は日常、刷毛やマーカーなどを使うときはもちろん、シャープペンシルで文字を書く時ですら、紙と芯が触れる回転の向きを感じ取ったり、直感的に向きを変えながら書くことができます。
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ところが、デジタル作画では「回転=無い」が自然な理解になります。知り合いと話しても、回転検知という概念自体を知らない人が多く、傾き検知すら使ったことがないケースも多いです。
そういう自分も、回転は制作には使わないので、本製品には関係ないはずです。ところが、触ってみると、どうも関係ないで済ますには惜しい製品だと分かりました。今日はそのあたりを中心に見ていきましょう。
●Pro Pen 3+回転検知→Art Pen 2
まずArt Pen 2自体についてです。Art Pen 2は、基本的には「Pro Pen 3」の描き味とスペックに、回転検知機能を足したペンです。
対応モデルは現行の「Intuos Pro」と「Cintiq」、「MovinkPad Pro 14」で、Cintiq Proは執筆時点では非対応、2026年内の対応予定になっています。価格はワコムストアで1万7380円で、Pro Pen 3より3300円高いです。
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回転検出や「Art」が付く製品名からは特殊なペンのイメージがありますが、価格的にはPro Pen 3よりすごく高いというわけではないですね。同じく回転検出に対応した「Apple Pencil Pro」(2万3800円)と比べても、大幅に安いです。
Pro Pen 3と同じく、3つのサイドボタンとテールキャップを備え、テールキャップの中には描き味の異なる替え芯が合計3本入っています。
一方で、金属のボディーではなくなり、グリップを交換したり取り外して細ペンになる機能は省かれています。Pro Pen 3(オモリ無し+太ペン状態)よりわずかに重いですが、すぐに慣れる程度の差です。
●初代Art Penから16年が経っていた
この製品が「2」ということは、「1」もあるわけで、初代のArt Penは2010年に発売され、筆圧検知が2048段階だった時代(現在は8192段階以上が普通)の、今となっては大昔の製品です。
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そこから、Art Pen 2まで約16年かかっています。マイナーチェンジで先代のCintiq ProやIntuos Proまで対応モデルは広がっていたので、使い続けていた人もいるでしょうが、事実上、回転検出のペンは途絶えていたと言って差しつかえないでしょう。
また、マーカー風の平べったい芯や、交換できる丸い芯も妙に太いなど、癖の強さも持っていたため、標準のペンと用途に応じて持ち替えるのがベストという側面もありました。
●最新のPro Pen 3には不満の声もあった
ところで、現状最高の描き味とカスタマイズ性を誇るPro Pen 3ですが、不満の声も聞こえていました。よく聞こえる不満の1つが、ボタンの耐久性、もう1つがテールキャップの外れやすさです。
Pro Pen 3はグリップを脱着できて、1本で細ペンにも太ペンにもなれるカスタマイズ性があります。それを実現するために、スペーサーのようなボタンパーツになっています。この作りが、ちぎれて脱落しやすいとか、押し心地が硬くてつらいという不満を引き起こしていました。
サイドボタンに、消しゴムやアンドゥを割り当てて頻繁に押すユーザーに多かったと思います。
テールキャップの外れやすさは、まあ、ささいな問題です。金属の硬質なネジで、摩擦を助けるパーツもありません。締めたつもりでも気づくと緩んでカタカタ動き、イラっとすることはありました。
●常用ペンとしてのArt Pen 2
Art Pen 2では、上記のいくつかの問題が解決しています
・初代Art Penの、古すぎる技術基準や互換性、癖の強さ
・Pro Pen 3の、ボタンの耐久性とキャップの外れやすさ
Art Pen 2では、芯は標準的な形状になり、サイドボタンはPro Pen 2のようなシーソー式になり、ちぎれそうな部品は見当たりません。また、樹脂のボディーでキャップのネジがよくかむようになりました。
一方で、Pro Pen 3の方が優れた点も多いです
・細ペンになることができる
・太ペン状態では少し柔らかい握り心地で、グリップの選択肢もある
・オモリでの重心カスタマイズが可能
・ペン先のテーパーが鋭角で、わずかに視界が良い
また、Art Pen 2はボタンの押し心地は硬いですが、グリップの少し上のほうに移動しています。
従来のペンはボタンを避ける握り方が合っていましたが、Art Pen 2はボタンの位置と硬さのおかげで、親指を添えたまま握圧を上げて描くことができます。そして、握る位置を変えずに、親指の腹の方でボタンを押すこともできます。
●一番のお気に入りになる可能性を感じる使用感
いつもの魔女さんでしばらく作業をシミュレートしてみましたが、これが標準ペンってことでいいのでは? という気持ちになりました。
太さを変えたりオモリを入れるカスタマイズ性は無いものの、サイドボタンの安心感や、樹脂製とはいえ剛性感と上質感が揃っているのも良いです。また、芯とボディーの隙間がPro Pen 3よりもさらに小さくなっていて、始筆の感触が良いです。
個体差かもしれませんが、ディスプレイの四隅のごく端の方で、Pro Pen 3よりもカーソルずれが大きいのは気になりました。描画に使うような場所ではないので気になるシーンは多くはなく、操作するときにカーソルを見れば大きな問題はないですが、調整されていくのを期待したいです。
全体として、カスタマイズ性はPro Pen 3の方が高く、Pro Pen 3が標準ペンという立場は揺らがないとは思いますが、回転検知を使う/使わないに関わらず、Pro Pen 3のどの状態よりもArt Pen 2の方が好みというケースも多そうです。
●まとめ
それでは、まとめていきましょう。
Art Pen 2は、現行最上位のPro Pen 3の基準を守りながら、回転検知を追加したペンです。回転検知は、iPadシリーズのApple Pencil Proや、入手困難な古い製品を除いては、ほぼ唯一の選択肢です。
平筆やマーカーなどのアート寄りの表現や、ペンを回して筆致を表現していくような表現に興味がある人は、ぜひ入手して取り組むべきだと思います。その他にも、カリグラフィーや、素材ブラシの向きを直感的にコントロールしたい場合などにも有効です。
入門〜上達期の人や、表現の幅を広げたい意欲のある中級者以上にも推奨できます。今は回転検知にピンとこなくても、常に使える環境に身を置くこと自体が大事です。現状の多くのユーザーが回転検知に興味が薄いのは、「無いものとして育ってしまった」のも大きな原因の1つでしょう。
回転検出に興味がない人や、単に予備ペンの購入を検討しているような人にとっても、Pro Pen 3の新たな選択肢として試す価値は大いにあります。ボタンの耐久性や押し心地が更新され、テールキャップの固定が改善されていて、ペン先の更新で感触も少し良くなっています。
ただし、Pro Pen 2やPro Pen slimのようなサイドボタンの軽い押し心地や、それを押す手の動きに慣れ切った人は、現行世代に代用は無いままです。互換性の確認が必要ですが、現行のペンタブや液タブで一世代古いペンを選ぶのも悪くない作戦と言えそうです(自分も現行Cintiq ProでPro Pen slimをよく使っています)。
といったところで。回転検出を使わない自分が言うのもナンですが、回転検出は標準機能になっていてほしいです。標準ならばアプリ開発者やブラシ制作者も意識するでしょうし、回転を使って表現を向上しようと試みる人も増えていくはずです。
iPadシリーズは、もう既に低価格機以外はApple Pencil Proなので、回転検出が標準機能になっています。
多くの人が回転検出の恩恵を受ける時が来るのを、楽しみにしておきたいです。先のArt Penみたいに途切れてしまうことがありませんように……。
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