
高市内閣の「内閣広報室」が、来年度の概算請求予算として、今年度の約7億円から10倍超となる約72億円を要求していることが明らかになり物議を醸している。だが、巨額な予算はこれだけではない。
内閣府の「政府広報費」も、前年度当初予算の78.8億円から280.5億円へ、約3.6倍に増加している。
「『内閣広報』が首相官邸から内閣の重要政策などを発信する一方で、『政府広報』は政府の重要政策について広く国民に周知し、理解を促す役割を担います。両方を合わせると、2027年度の要求額は約350億円規模に達しており、異例の規模の広報予算が要求されていることになります」(全国紙記者)
元・博報堂の社員で『原発広告』(亜紀書房)などの著書がある作家の本間龍さんは、この金額に驚きを隠さない。
「280億円なんていう巨額の予算が通るとしたら、これはもう『何に使うか』というより、逆に言えば『何でもできる』という金額です。テレビ、新聞、ネット、SNSなど、あらゆるメディアを使って、まるで“絨毯爆撃”のような大規模キャンペーンも可能になる。
|
|
|
|
例えばトヨタや日産といった大企業が使う広告費と比べても、引けを取らないような規模感ですよ」
■「イチゴ動画」も物議…政府が「あらゆる広報媒体」で発信強化
すでに高市政権では、SNSを使った動画発信が相次いでいる。
8月には、高市早苗首相(65)が、被災地・熊本を訪れた際の様子をBGMやテロップを交えた動画にして官邸が発信。「PR動画のようだ」などの批判が上がった。9月には、鈴木憲和農水相(44)がイチゴのかぶり物とサングラス姿で登場する動画も公開され、こちらもその演出が物議を醸した。
「今回の政府広報費で注目されるのが、280.5億円のうち188.3億円が『「強く豊かな日本」投資枠』に計上されていることです。
|
|
|
|
政府は、重要政策についてインターネットやテレビ、新聞など『あらゆる広報媒体』を活用し、政府広報を抜本的に強化するとしています。高市政権はAI・半導体、造船、量子、創薬・先端医療など17の戦略分野を掲げています。
今回、その日本成長戦略における重要政策の広報が『投資枠』に位置づけられているわけですが、広報が具体的にどう成長や投資につながるのか、という点は必ずしも明確ではありません」(前出・全国紙記者)
だが本間氏は、「広告」がなぜ「成長投資」につながるのか疑問視する。
「成長投資というなら、何にどれだけ投資するのか、その対象がどれだけ成長するのか。正確に費用対効果を計る必要があります。
一般企業なら、そうした詳細を示さないまま『今年は去年より数倍の広告予算を投じます。それは我が社の成長投資のためです』と言って、通るわけがありません」
|
|
|
|
■メディアにとって政府が“大スポンサー”に
本間さんが、さらに警戒するのは、政府が「巨大広告主」になることだ。
「広告業界では、年間100億円以上を投入できるところは“ビッグクライアント”です。350億円規模ならなおさらです。つまり、メディアにとって政府が“大スポンサー”になり、頭が上がらない存在になってしまいます」
そこで本間さんが重ね合わせるのが、自身が長年取材してきた「原発広告」だ。
電力会社や政府が、文化人や芸能人をも巻き込んで、巨額な広告費を投じ続けてきた結果、「原発安全神話」が確立。結果的に事故を招く一因にもなったという。
「巨大なスポンサーの広告を載せてしまうと、その広告が載っている同じ紙面で広告主を批判することが難しくなる。テレビも同じです。
政府側が露骨なことをしなかったとしても、年間350億円以上を使う巨大スポンサーが誕生すれば、普通はメディア側の営業が『うちに出稿してください』と駆けつけてくる。そうなると、メディアの本来の仕事である『権力の監視』が揺らぐ可能性は十分にあります」
■「政府広報なのか、自民党の広報なのか」改憲・選挙への懸念
さらに問題となり得るのが、「政府広報」と「政権・与党のPR」の境界だ。
「予算の根拠が分からない以上、軽々なことは言えません。ただ、『政府の発信をもっと力強くしたい』というだけなら、なぜこれほどの増額が必要なのか、その根拠が分からない。
憲法改正に向けた地ならしに使おうとしているのではないか、という推測はあり得ます。ローカル紙にまで広告を打てるわけですから、選挙のときなどに『これは政府広報なのか、自民党の広報なのか、よく分からない』ということにもなりかねない」
だからこそ、本間氏は巨額の広報費を「ガラス張り」にする必要があると訴える。
「これだけ巨額の予算を要求するのであれば、その根拠をまず示せ、と。しっかりと国会で追及して、使った後も『どこに、何を、いくら払って、成果物はこれだ』というものを、すべてガラス張りにしないといけない。これだけ巨額の税金を使う以上、それができなければ許されないと思います」
政府が政策を国民に伝えること自体は必要だ。だが、そのための巨額の税金が、いつの間にか「政権をよく見せるためのお金」にすり替わってはいないか。
約350億円の広報予算が実際に何に使われ、誰に支払われ、どんな成果を生むのか――。その行方を私たちも厳しく見ていく必要がある。
|
|
|
|
|
|
|
|
Copyright(C) 2026 Kobunsha Co., Ltd. All Rights Reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。