
9月、10月に行なわれる日本代表の親善試合4試合の招集メンバー31人が以下のように発表された。
GK
早川友基(鹿島アントラーズ)、小久保玲央ブライアン(シント・トロイデン)、鈴木彩艶(アストン・ヴィラ)
DF
板倉滉(ボルシアMG)、渡辺剛(フェイエノールト)、冨安健洋(クリスタル・パレス)、安藤智哉(ザンクト・パウリ)、伊藤洋輝(バイエルン)、瀬古歩夢(ル・アーブル)、鈴木淳之介(コペンハーゲン)
MF/FW
伊東純也(ゲンク)、鎌田大地(クリスタル・パレス)、相馬勇紀(FC町田ゼルビア)、前田大然(イプスウィッチ)、谷村海那(横浜F・マリノス)、堂安律(フランクフルト)、上田綺世(リール)、田中碧(リーズ)、中野就斗(サンフレッチェ広島)、中村敬斗(リヨン)、佐野海舟(マインツ)、熊坂光希(柏レイソル)、久保建英(レアル・ソシエダ)、鈴木唯人(フライブルク)、田中聡(シャルケ)、松木玖生(サウサンプトン)、佐野航大(PSV)、塩貝健人(ヴォルフスブルク)、齋藤俊輔(ウェステルロー)、後藤啓介(フライブルク)、佐藤龍之介(バレンシア)
初招集は谷村、中野、松木、齋藤の4人。復帰組は小久保、安藤、熊坂、田中聡、相馬、佐野航大、佐藤の7人となる。熊坂は昨年6月に代表メンバーに招集された過去があるが、練習中にケガで離脱。キャップ数はついていない。
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一方、ワールドカップメンバーからの落選組は、大迫敬介(サンフレッチェ広島)、長友佑都(FC東京)、谷口彰悟(シント・トロイデン)、菅原由勢(カリアリ)、小川航基(FC町田ゼルビア)、町野修斗(ボルシアMG)の6人となった。
監督、コーチ、技術委員長を含めたスタッフは全員続投した。来年1月までの話だが、優勝を目標に掲げながら32強に終わったワールドカップの責任を、スタッフは誰ひとり取っていない。多少ともクビをすげ替えられたのは選手ばかり。この現実にどこか釈然としない、割り切れない感情に襲われるのは筆者だけだろうか。
【3バックサッカーを踏襲】
招集メンバー31人の顔ぶれをパッと眺めて、目に留まるのはディフェンダーの少なさだ。ワールドカップでは26人中9人を占めたが、今回は31人中7人だ。MFの括りで選ばれた中野はCBができるので、8人と言ってもいいが、それにしても少ない。割合的に大幅な減少だ。
切られた選手は長友、谷口、菅原の3人で、うちサイド系がふたり。つまり、今回のメンバーのなかにサイドバック(SB)ができる選手は数えるほどしかいない。スペシャリストはほぼゼロだ。
このアンバランスな構成から透けて見えるのは、3(5)バックサッカーの踏襲だ。このメンバーで4バックは簡単には組めない。組めてもその特徴を表現しにくい完成度の低いものになるだろう。
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先のワールドカップで、16強に進んだチームのなかで、典型的な5バックを採用したチームはパラグアイのみだった。日本が32強で終わった理由の一端をそこに見る気がする。時代遅れとは言わないが、今日的ではないサッカーである。
だが、森保一監督はおそらくそう考えていない。世界的に見れば自らのサッカーが特殊であることには、さすがに気づいていないはずはない。それでも省みることなく、あるいは教訓とすることもなく、自らのやり方を押し通そうとしている。
よほど頑なな性格なのか、あるいは5バックサッカーが好きなのか。その両方なのかもしれない。そのしわ寄せを受けるのがSBだ。森保サッカーによって支配された日本サッカーのこの8年間は、言ってみればSB受難の時代だった。SBでプレーしている選手はさぞ不安を抱いたものと思われる。自分がプレーしているポジションが、目指すべき代表チームには存在しないのである。このままSBとして続けていっても将来はないと悲観し、プレーの場所を他のポジションに求めた選手は少なくないはずだ。
ポジションがなければ、そこにふさわしい適性を持つ選手は育たない。サッカーにはポジションが選手を育てるところがあるのだ。
【アジアカップ後には変わるとしても...】
ウイングも森保式のサッカーにはないポジションだ。森保式5バックサッカーにはウイングバック(WB)はいるがウイングはない。ウイングの選手は森保式においてはWBとしてプレーする道が残されている。SBがWBとしてプレーする機会より、ウインガーがWBに起用されるほうが多い。SBほど受難の時代ではないが、森保式が続けば、いいウインガーは現れにくくなるだろう。
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今回、中盤より前の選手が占める割合が高くなったと述べたが、その割にウインガーは増えていない。スペシャリストとしての新顔は齋藤ぐらいだ。WBのほうが似合いそうな相馬を加えてもふたりだ。4バックで戦いそうもないことは、そこからも見え隠れする。
アジアカップ終了後、森保サッカーを引き継ぐ大岩剛監督は、アジア大会の戦いぶりを見ればわかるとおり、典型的な4バックで戦う監督だ。だから近い将来、代表にSBは復活する。純然たるウインガーにとっても居心地のいいサッカーになるだろう。「次は大岩監督」と言われてファンの胸がときめくかどうかは怪しい限りだが、サッカーそのものは世界基準に回帰する。
問題は、それは偶然なのか、意図的なものであるか、だ。サッカー協会が森保サッカーを続けるのはマズいと判断し、右に傾いていたサッカーを左に修正しようと舵を切ったのか。だが、山本昌邦技術委員長兼ナショナルチームダイレクターは、その件について触れようとしない。その様子からは4バックサッカーへの回帰は偶然の産物に見える。
森保監督に物申したのは、2022年当時の技術委員長、反町康治氏だった。同年12月、カタールワールドカップ後に行なわれた森保監督続投会見の席で、森保監督に対し「これからの4年はもっと攻撃的なサッカーで」と注文をつけた。実際、森保監督は、反町氏が技術委員長の座に就いている間は基本的には4バックを軸にしていた。
ところが反町氏が退任し、山本氏がナショナルチームダイレクターに就任、技術委員長も兼ねるようになると、森保監督は、待っていましたとばかりに、5バックサッカーに移行していく。森保監督にとって山本氏は物わかりのいい技術委員長なのかもしれない。同時に、技術委員長の存在価値は薄れた状態にあるかに見える。
山本氏は次期代表監督の大岩氏に「継続」を求めながら、「戦術はそれに含まれない」「大岩監督には大岩監督の色を出してもらって......」と、丸投げと言われても仕方のないスタンスを貫こうとしている。技術委員長として、代表監督とは異なる視点を示し、重しになろうとする気配は見られない。それが結果的に、森保監督の特殊で頑ななサッカーを後押しする格好になっている。組織論として、それは歪んだ構図と言うべきではないか。
穏やかな表情とは裏腹な、暴走とも言うべき森保監督の強めのキャラが、あらためて露わになった今回のメンバー発表だった。
杉山茂樹●文 text by Shigeki Sugiyama