「就活偏差値で選んだ」コンサルに就職した名門大生の末路。1年目で年収600万超えも、3年未満で離職した理由

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2026年09月24日 16:01  日刊SPA!

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同じく、アクセンチュア時代の同期集合写真。赤ネクタイが伊藤さん。特徴的なピースポーズは、「アクセンチュアピース」と呼ばれている
東大生をはじめとする高学歴層を中心に、コンサルティング企業が人気だ。「年収が高い」「成長できそう」という漠然とした動機による志望者は多い。一方、コンサル業界全体での離職率は20%前後と言われており、新卒・中途を含め、3年前後で会社を退職する人も後を絶たない。若者はなぜ、コンサルを「辞める」のかーー。
◆「就活偏差値」を意識してコンサルを選び、3年未満で離職

「やりたいことは明確になく、自分のスペックでも挑戦できる企業を受ける。今思えば、いわゆる『ミーハー就活』の典型でした」

伊藤洸暉さん(30)は、苦笑いしながら過去を振り返る。立教大学経済学部の出身。2018年から2年10か月、世界約50か国に拠点を持つ大手コンサルティングファーム「アクセンチュア」に勤務した。

就職活動では100社近くを見たものの、やりたいことが見つからなかった。そんななか、参考にしたのは「就活偏差値」。大学ランク別に企業の入社難易度を示す、格付け表の一種だ。

「上位にコンサル企業が複数入っていて、『レベルの高い環境に身を置けば成長できそう』と考えました。アクセンチュアを選んだのは、MARCHランクの採用実績もあったから。コンサルに入れば業種や会社が変わっても通用する『ポータブルスキル』が身につきそう。やりたいことは入ってから見つければいい、という考えでした」

入社後は会議の進行や議事録の整理など、「アナリスト」と呼ばれるサポート的な仕事からスタート。その後、とある証券会社のシステム開発プロジェクトに配属された。きらびやかな日々の幕開けと思いきや、現実は理想とは異なっていた。

「主な業務内容はプロジェクト管理やシステムのテスト計画など、エンジニア寄り。深夜まで働き、常駐先付近のホテルに寝泊まりすることもざらでした」

少し補足しよう。一般にコンサルというと、企業戦略のイメージが強い。だが、総合系ファームであるアクセンチュアでは、デジタル領域を中心に幅広いプロジェクトを扱う。さらに同社では戦略の実行や運用、改善プラン立案までを一気通貫で担うモデルを採用しており、業務内容はシステムインテグレーター(SIer)とも重なる部分が多いのだ。

業界研究本によれば総合系ファームの場合、アナリストの年収目安は500〜800万。伊藤さんも、新卒1年目の段階で残業代を含め、600万円を超える年収を手にしていた。だが、先述したような業務内容へのギャップから、「入社1年目の後半にはすでに転職を意識していた」と振り返る。退職後は、人事系スタートアップに勤務。業務とは別にAI動画の実務活用を解説するYouTubeチャンネルも運用していたことから、’26年3月には、企業のAI動画制作をサポートする会社を立ち上げた。国内で競合他社はまだ少ないが、「コンサル時代、時代の最先端の技術に触れたことで、『ブルーオーシャンにいち早く飛び込む』精神が養われた」と語る。

◆過去の徹夜話で盛り上がる上司陣に抱いたギャップ

近年ではコンサル業界も働き方改革が進む。たとえば先述のアクセンチュアでは、長時間労働是正に向けた社員アンケートなどを10年ほど前から実施。企業HPには、「離職率は約半分に低下」したと記載されている。

しかしながら、これが実態通りかと言われれば怪しい。関西在住の西野彰吾さん(仮名・33歳)はメーカーから大手外資系の総合コンサルティングファームに転職したが、トラブル続きの「炎上案件」に巻き込まれ、長時間労働に疲弊し、3年で退職した。

「入社後に配属されたのが、製造系企業のDX化に関わる案件です。クライアントの都合で納期がいきなり短縮され、朝8時から深夜2時頃まで働くこともざらでした。飲み会ではマネージャー層が過去の徹夜話で盛り上がっていたり、長時間労働を良しとする文化は根本的になくなっていないと感じました」

年収は前職から200万円以上上がったが、同僚との金銭感覚のギャップも感じていたという。

「高級ブランド好きだったり、独身でも家賃20万以上する家に住んでいたり、派手な生活ぶりが目立つ人が多かった。散財の結果、生活がカツカツになっているケースもありました」

プライベートで結婚が決まったことなども背景に、働き方の見直しを本格的に考えるようになったという西野さん。今年に入って、知人の紹介でより長時間残業の少ない同業他社に転職している。

◆発注側にも見えづらい「実力」

蓋を開けるとギャップが生まれやすいーーそうした感覚を持っているのは、コンサルに業務を発注する側も然りだ。

「コンサルタントを使う難しさは、実際に業務を始めてみるまで、成果が見えづらいところにあります」

こう漏らすのは、とあるサービス系の企業で代表取締役を務める50代男性だ。会社起業時、営業マッチングを行うコンサル3社に、将来顧客となる見込みがある企業情報(リード)を獲得するテレアポ業務を外注した。年間にすれば約700万円もの契約だったが、いずれの会社も成果が出ずに終わったという。

「粗利が仮に20%だとして、700万円分の利益を出すには、3500万円近い売上が必要です。額の大きさを思えば、自社の営業部隊でやった方が早かった」と、苦々しい表情で振り返る。

このようなミスマッチが生まれてしまう背景について、教育ジャーナリストの石渡嶺司氏は次のように指摘する。

「IT寄り、商社寄りなどコンサル業界の専門領域は幅広い。守秘義務もあり、業務内容の詳細を説明できないため、入社後のギャップが生まれてしまう。コンサルタント個人を取っても、専門領域やスキルの幅は当然あり『当たり外れ』も起きやすい。企業側からすれば業務内容はあらかじめ保証しづらいため、何かあったときに転職できるような心づもりは必要です」

コンサル業界の離職率の高さについて、転職エージェントでは「キャリアアップのため」など前向きな説明がなされることが多い。それも誤りではないが、メディアで語られる華やかなイメージと現実の業務にギャップがあるのも、また事実なのだ。

石渡 嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ、大学・教育ジャーナリスト。東洋大学社会学部を卒業後、2003年から現職。大学・教育問題や就職活動・雇用を主なテーマとし、著書は35冊、累計68万部を突破。

【松岡瑛理】
一橋大学大学院社会学研究科修了後、『サンデー毎日』『週刊朝日』などの記者を経て、24年6月より『SPA!』編集部で編集・ライター。 Xアカウント: @osomatu_san

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