月収17万円でも「東京で暮らしていたときより、はるかに幸せ」元銀座のバーテンダーが山梨の限界集落で掴んだ“豊かな暮らし”

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2026年09月24日 16:01  日刊SPA!

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山梨県上野原市西原地区で青年隊隊長を務めるカズさん
物価高・賃金低迷の時代、コスパでもタイパでもなく「ウェルビーイングパフォーマンス」という新たな価値観が浮上している。“ウェルパ”の実践者たちから、お金に縛られない幸せの条件を探った。
◆スピリチュアルな人々の聖地

現代のヒッピー村がある――。そんな噂を耳にして記者が訪れたのは山梨県大月市。新宿から中央線特急で1時間ほどとは思えない山深いこの場所に、突如ピラミッド状の建物が現れた。

「ここは『大月ピラミッドセンター』といい、約40年前に地元の人が造った大規模イベントスペースです。スピリチュアルな人々には昔から聖地として有名な場所でした」

そう説明してくれたのはカズさん(30代)。生まれも育ちも東京で銀座の老舗バーでバーテンダーを務めていたシティボーイながら、現在は山梨県上野原市西原地区で青年隊隊長を務める。

「僕は一時期、日本中のジャズ喫茶を回りたくて、原付きに寝袋とテントを積んで日本一周の旅をしていたんです。そしたら途中からジャズよりも日本の風土そのものに惹かれてきちゃって、2年前にここにたどり着いた。東京と比べたら何もない田舎に見えるかもしれないけど、一本山道を入るだけで個性豊かな集落が点在しているんです。

その地元の人の飾らない暮らしと人柄は、東京で育った自分にとって何よりも魅力的に見えた。人と競うようにお金を稼いで、見えを張るように洒落たバーに繰り出す……そんな東京人よりも、ここ西原の人はたくましくて格好いいと思った」

◆収入は大幅に減ったが不満はない

カズさんは現在、地元の森林組合の正職員として月17万円ほどの収入を得ている。東京時代よりも収入は大幅に減ったが、不満はないという。

「最寄りのコンビニまで車で25分という環境に移住すると『本当に必要なものって何だろう』と常に考えることになる。大抵のものは自分で作るか近所からもらえば済んじゃうので、お金もモノも少ないけど、不足するものを人の繫がりで埋めるんです。当たり前のように支え合って暮らしていて、それが心地いいんです」

物欲にまみれ、ドーパミン溢れる都会暮らしと対照的な田舎暮らしを満喫するカズさん。実は、西原には同じように都会から移り住む若者が増えており、一部で「ヒッピー的」だと呼ばれている。

「西原の若い移住者7〜8人と『青鶴隊』という青年会を立ち上げました。ヨガの先生・芸術家・農家など多種多様な移住者が、西原の自然に惹かれて集まってきたんです。この地区は人口が400人ほどで、60歳で若手扱いされる超高齢化・過疎地域だから、青鶴隊は『地域の人に喜んでもらいたい』をモットーに活動しています。コロナ以降止まっていた神社のお神輿担ぎを『担ぎ手10人用意します』と申し出て復活させたり、高齢者への送迎を手配してビールを飲みながら地域の古い写真や映像を観覧する会を開いたりしてきました」

◆移住して幸福度ははるかに増した

カズさんは「地域と地元の人のために、という思いは移住して初めて芽生えた」とも話す。その思いと活動が非常に喜ばれていることもあって、「東京で暮らしていたときよりも、はるかに幸福度は増した」と言う。

記者が訪れた日、前述のピラミッドセンターでは神奈川県相模原市の移住者コミュニティ「廃材エコヴィレッジゆるゆる」との交流祭が開かれていた。同じく若い移住者を中心に組織されたグループだ。その“ゆるゆる村”の村長はこう語る。

「戦後ずっと進んできた核家族化・孤立化・自己責任化という社会デザインは幸福に繫がらない。誰かのためにみんなで手を動かすことが、自然とコミュニティをつくっていく。0円物件が手に入り、固定資産税が年間1万〜2万円という里山という場所は、そういう生き方を実践するには最高の舞台です」

◆心身の充足を重視する“ウェルパ”が注目される理由

近年、心身の充足を重視する「ウェルビーイングパフォーマンス」(ウェルパ)が注目を浴びているが、カズさんや“ゆるゆる村”の活動は、まさにウェルパを上げるものと言っていいだろう。幸福と経済について詳しい拓殖大学教授の佐藤一磨氏が解説する。

「行動経済学の研究では、幸福度が上がる要素として、創意工夫や自分の意思が通る環境と、他人と体験を共有して面白い時間をつくること、この2点が指摘されています。これが達成できれば、お金をかけなくても幸福度が上がる可能性が大いにある。所得が伸び悩み、物価上昇が続く現代の日本は、昔のように他者との繫がりや助け合いが重要な意味を持つ時代へと回帰しているのかもしれません」

山梨の山深い村で垣間見た光景は、確かに幸福感に満ち溢れたものだった。

【拓殖大学政経学部教授 佐藤一磨氏】
「主観的幸福度」を経済学の視点から分析し、年齢による幸福度の変化や、結婚・出産などが幸福度に影響する実証研究を行っている

※2026年10月7日号より

取材・文/週刊SPA!編集部

―[お金をかけず知恵と工夫で幸福度を爆上げ![格安で快楽]ゲット術]―

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