入園者数を抑えた「ディズニー」、伸ばし続ける「USJ」 年パスとIPの違いから狙いを読み解く

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2026年09月25日 05:40  ITmedia ビジネスオンライン

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ITmedia ビジネスオンライン

出所:ユー・エス・ジェイのプレスリリース

 ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下、USJ)と東京ディズニーリゾート(以下、TDR)は、いずれも国内を代表するテーマパークだ。1日入場券の大人料金は、2001年のUSJ開業以来、両社とも近い水準で推移してきた。


【画像を見る】USJの映画『ハリー・ポッター』エリア


 だが、年間パスポートの有無という違いがある。TDRはコロナ禍に年パスを休止し、現在も再開していない。一方、USJは年パスを継続しており、ヘビーユーザーにとっては1回当たりの入場料を抑えやすい。また、TDRがディズニーのキャラクターや世界観を軸とするのに対し、USJは国内外のさまざまなIPを取り入れている。


 TDRは入園者数を抑える戦略を採る一方、USJの客数は伸び続けており、両社の戦略の違いが影響しているようだ。


●1日入場券の価格は同程度で推移


 2001年のUSJ開園時、1日入場券の大人料金は5500円で、TDRと同額だった。その後、両社とも段階的に値上げを実施。おおむね同じ価格帯で推移し、2010年代後半には7000円台となった。USJは2019年に、TDRは2021年に、予想される混み具合によって入場券の価格を変える価格変動制(ダイナミックプライシング)を導入し、曜日やシーズンごとの平準化を図っている。


 USJは2026年9月から、大人料金の最低価格を8400円とし、以前よりも500円引き下げた。最高価格は公表していないが、予約サイト上では1万1900円となっている。同時に、チケット発売後も需要に応じて価格を変更する制度も導入した。既に購入した人には影響しない。短期的な需要の変化に対応する狙いだ。


 対するTDRは現在、大人料金を7900〜1万900円としており、2026年10月からは最高価格を1万2400円に値上げする。


●ディズニーはなぜ年パスをやめたのか


 TDRはコロナ禍以降、年パスを休止している。対するUSJが販売している年パスは2種類だ。大人5万800円の「グランロイヤル」は日付を問わず入場でき、2万2000円の「スタンダード」は連休や一部の休日に使用できない入場除外日を設けている。


 TDRが年パスを休止しているのは、混雑による顧客満足度の低下を防ぐためだ。コロナ禍以前はランド・シーの両方を合わせた入園者数が3000万人前後で推移し、TDR35周年のイベントを実施した2018年度は過去最高の3256万人を記録した。


 だが、入園者数を重視した2010年代後半は、顧客満足度が低下していた。実際、調査研究などを行う日本生産性本部による顧客満足度調査では、100点方式で算出したスコアが2013年度(86.8点)から2017年度(77.1点)にかけて、9.7ポイント低下した。


 年パス利用者の中には物品を買わず、一部のアトラクションやパレードだけ楽しんで帰る客もみられる。客単価を引き下げるだけでなく、混雑をもたらす要因にもなっていた。


 過去記事でも示したように、段階的な値上げや年パス休止の効果で、2023〜2025年度の年間来場者数は、以前よりも1割ほど少ない2700万人台で推移している。


 800万人近くいた18歳未満の若年層は、2025年度には600万人台に縮小した。一方、低単価の客が離れたことで客単価が上昇し、オリエンタルランドの売上高や営業利益は改善している。


●USJは多様なIPを取り込む


 次にIPの多様性について比較したい。TDRは、2020年9月に映画『美女と野獣』をテーマにしたエリアを東京ディズニーランドにオープン。ゴーカート形式のアトラクション「グランドサーキット・レースウェイ」の跡地などを活用した。同映画が日本で公開されたのは1992年だが、メインアトラクションの「美女と野獣“魔法のものがたり”」は人気が高く、2時間待ちになることもある。


 2024年6月には、東京ディズニーシーに映画『アナと雪の女王』『塔の上のラプンツェル』などをテーマとしたエリア「ファンタジースプリングス」をオープンした。


 対するUSJは、多様なIPを扱っている。開業当初は、米ユニバーサル・スタジオにならい、映画『E.T.』『ジュラシック・パーク』といったハリウッド映画の世界観を再現する戦略を採っていた。初年度の来場者数は1100万人を突破したが、その後2010年頃までは低迷していた。


 2010年代から、人気のIPを幅広く取り入れる戦略に転換し、人気キャラクター「ハローキティ」のアトラクションや、映画『ハリー・ポッター』のエリアを開業。2021年には、任天堂のゲームをテーマとするエリア「スーパー・ニンテンドー・ワールド」をオープンした。


 任天堂はゲーム事業に注力してきたが、スマホゲームの台頭などを背景に、家庭用ゲーム機の販売が伸び悩む時期もあった。USJ向けにキャラクターを提供したのは、IPビジネスを強化する一環でもあった。


●将来的にUSJが客数減を狙う可能性も


 入園者数を抑えたTDRに対し、USJは集客を拡大している。業界レポートを発表している米Themed Entertainment協会によると、2022年のUSJの来園客数は1235万人で、2023年と2024年はいずれも1600万人だ。1300万人を下回っていた2010年代前半から大きく伸びており、2024年におけるUSJの実績は東京ディズニーランド単独の来園客数を上回った。


 近年扱っている、任天堂、映画『ハリー・ポッター』、サンリオなどのIPはいずれも知名度が高い。国内外の多様なIPを取り入れていることが、集客につながったとされる。また、ヘビーユーザーにとって1回当たりの入場料を抑えられる年パスも、利用者数を底上げしていると考えられる。


 USJは今後、拡張を見込んでいる。報道によると、パークに隣接する日本製鉄工場跡地の約6万平方メートルの土地を大阪市から賃借する計画だ。現在のパーク面積は約54万平方メートルで、拡張によって面積が約1割増える。2028年度からの契約を予定しており、開業時期は非公開だ。


 今のところUSJの来園者数は伸び続けているが、前述の通り、TDRは混雑によって顧客満足度が低下した経緯がある。USJでも客数の増加が続けば、混雑を抑える必要が出てくる。


 面積の拡張によって来園者密度を下げるにしても、その費用を回収しなければならない。今後、USJは年パスのさらなる値上げや入場除外日の拡大、ひいては廃止に踏み切るかもしれない。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。



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