「争わなくていい」が本音…阪神・佐藤輝明と森下翔太の本塁打王争い、藤川監督が抱える“難題”

0

2026年09月25日 16:01  日刊SPA!

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

日刊SPA!

写真/産経新聞社
 阪神と巨人による優勝争いが、いよいよ大詰めを迎えている。
 24日は阪神の試合がないなか、2位巨人が広島に1−3で敗戦。ゲーム差は2に広がり、阪神の優勝へのマジックは「6」となった。

 阪神は25日、横浜でDeNAと対戦。待望のリーグ連覇に向けて自力で1つずつマジックを消していきたいところだろう。

◆優勝争いの裏で現実味を帯びる佐藤輝明の「三冠王」

 ただ、そんな優勝争いの裏で、もう一つ気になる数字がある。

 阪神不動の4番、佐藤輝明は23日終了時点で打率.313、36本塁打、98打点。すべてリーグトップに立ち、自身初の三冠王が現実味を帯びてきた。

 特に打率と打点は2位以下に差をつけており、逆転されることはほぼないだろう。ところが、本塁打だけは様相が違う。わずか1本差の35本まで迫っている選手がいる。

 しかも、その選手はライバル球団にはいない。同僚の森下翔太である。

 20日のDeNA戦で森下が35号を放ち、当時35本だった佐藤に並んだ。その際、藤川球児監督は「(佐藤と)争わなくていいというのが本音なんですけど」と苦笑しながらも、「2人もの選手がそれだけ華のあるプレーヤーであることを誇りに思います」と喜んだ。

◆チームメイトの佐藤と森下がライバルに…

 ただ、「身内の争い」といっても、2人が火花を散らしているわけではない。

 22日のヤクルト戦では、初回に森下が2点二塁打を放つと、直後に佐藤が36号2ラン。佐藤は「翔太が先制してくれたので、自分も続こうと打席に入りました」と振り返った。

 個人タイトルでは最大のライバル。それでも試合が始まれば、同じ勝利を目指す仲間である。だからこそ、この本塁打王争いは少し変わっている。

 佐藤と森下は、同じベンチに入り、同じ打線に名前が並ぶ。しかも、タイトルを争う2人の出場機会を決めるのは、いずれも藤川監督だ。どちらかを休ませる、途中で交代させる。普段なら何でもない采配まで、1本差のタイトル争いでは意味を持ってしまう。

 森下が次の1本を打てば並び、佐藤が打てば差が広がる。残り試合の一打席、一振りがタイトル争いを動かしていく。

◆リーグ連覇決定後に待ち受ける藤川監督の難しい選択

 優勝争いが続いている間なら、藤川監督も勝つために2人を送り出せばいいだけだろう。しかし、厄介なのは、その先である。

 現日程では阪神の最短優勝日は9月29日。仮にその日に連覇を決めたとしても、レギュラーシーズンはまだ6試合残っている。

 優勝が決まれば、藤川監督にはクライマックスシリーズ(CS)を見据えた選手起用という選択肢も出てくる。ところが佐藤と森下は23日まで、阪神が戦った134試合すべてに出場している。

 森下に至っては今季19死球を受けながらの皆勤。8月29日の巨人戦では148キロの直球を左手首付近に受けて途中交代したが、骨に異常はなく、翌日も試合に出場した。

 佐藤には三冠王がかかり、森下も初の本塁打王が見えている。このまま2人の本塁打王争いが続けば、優勝後の起用にもタイトル争いが絡んでくる。

◆同数で本塁打王なら最高の結末に?

 そして、さらにややこしい状況も考えられる。優勝が決まった時点で、佐藤と森下の本塁打数が並んでいた場合だ。

 その本数のままシーズンを終えれば、2人で本塁打王を分け合う。佐藤が打率と打点でもトップを守れば三冠王となり、森下も自身初の本塁打王を獲得する。

 阪神から2人の本塁打王が誕生し、そのうち1人が三冠王という、これ以上ないほど華やかな結末である。

 だが、そこでシーズンが終わってくれるわけではない。

 残り1試合程度ならまだしも、数試合を残して優勝すれば、2人をどう起用するのか。藤川監督には難しい判断が待っている。もしこれまで通りに2人を送り出せば、どちらか1人が放った次の一発で再び差がつくかもしれない。

 だからといって、同数になった途端に打席から遠ざければ、それはそれで不自然だ。ここまで全試合に出場してきた2人なら、なおさらである。

◆タイトル争いとCSへの準備…藤川監督を悩ませる選手起用

 藤川監督としては、タイトルを取らせるためだけに起用法を変えるわけにはいかないだろう。しかし、その一方で、CSを控えた時期に主力をどう使うかという判断も迫られる。

 藤川監督にとっては、何ともぜいたくで、少々厄介な悩みである。「争わなくていい」という本音が、シーズンの最後になって別の意味を帯びてくるかもしれない。

 もっとも、それも優勝争いを制してからの話だ。

 25日のDeNA戦でも、佐藤と森下のバットは必要になる。本塁打王も三冠王も、その先の話だ。

 いま阪神に必要なのは、待望のリーグ連覇へ近づく1本。それが佐藤のバットから出ても、森下のバットから出てもいい。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。

    ニュース設定