
『週プレ』復活シリーズ、オメガ・ケンタウリの六鎗客編が始まるJC『キン肉マン』第61巻をおぎぬまXがレビュー!!
シリーズ最長となった「完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)編」のレビューに続いて、今巻から新シリーズが幕を開けます!! 新超人はもちろん、前シリーズでは姿を見せなかったなつかしの超人たちも続々参戦する新章をさっそく熱く語らせていただきます!!
●キン肉マン第60巻
レビュー投稿者名 おぎぬまX
★★★★★ 星5つ中の5
【サグラダ・ファミリアを狙う謎の集団、出現!】
前巻のレビューでも語りましたが、「完璧超人始祖編」は僕のような厄介なオールドファンが完全敗北し、そして賞賛した、素晴らしいシリーズでした。 そうなると、人気作の宿命、バトル漫画のジレンマと言いますか...イチ読者として心配になるのは、「今後、これ以上強い敵って現れるの!?」という点です。
しかし、『キン肉マン』の物語は続きます。始祖編の美しい幕引きによって完全燃焼した読者たちが余韻に浸っている間、ゆでたまご先生はあれほどの熱い闘いを描ききったというのに、わずかな充電期間を挟んで新シリーズをスタートさせました。これには僕も同業者の端くれとして、尊敬と畏怖(いふ)の念を抱かずにはいられません。少なくとも三年ぐらいは休養されても、文句を言う読者はいないはずですよ...! それなのに、あまり早いカムバックです!
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ということで、新章開幕です! 本編の第209話では「完璧超人始祖編」から数日後、委員長率いる宇宙超人委員会が激闘の後片付けをしているシーンから始まります。少年ジャンプ時代では、よくキン肉マンが凱旋パレードで馬鹿騒ぎしてる最中に敵が乗り込んできて...という流れが鉄板でしたが、こういう静かな始まり方は新鮮ですね。
エアーズロックにて試合会場の片付けを手伝うミートくんと委員長が、キン肉マンについて語り合います。これまでのエピソードを振り返りながら、ほっこりする回想も語られます。
指を傷だらけにして手作りした牛丼を病床のミートくんに振る舞うキン肉マン。素敵なエピソードなのに、誰も得しない裸エプロンなどツッコミどころも...
片付けを終えて撤収する委員長たち。その直後、エアーズロック山頂に落雷があり、謎の人物が登場します。謎の人物は、土中に埋まったストロング・ザ・武道(ブドー)の竹刀を手にすると、軽々とへし折りました。のどかだったプロローグに、不穏な空気が漂(ただよ)い始めます...。
続けて、キン肉星の叙勲式に場面は変わります。これまでの『キン肉マン』では、試合時の負傷は新シリーズの開幕と同時にリセットされることが多く、なんなら死んだはずの超人がしれっと復活するようないい意味でルーズなところがありました。しかし、超人墓場が機能停止した今、ロビンマスクは死んだままですし、テリーマンの義足もバックランド爺が作った「最高の義足」ではありません。先の大戦がもたらした爪痕が癒えないシリアスさを感じますね...!
そんなマッスルガム宮殿に突如、結界が張られ、正義超人たちが閉じ込められてしまいました。同時に魔界では悪魔超人たちが、超人墓場では完璧超人たちが結界に封じられます。これは、ゆでたまご先生お得意の「分断作戦」ですね。始祖編でもメディカル・サスペンションという舞台装置を使って、徐々に超人が解禁されていく構成だったのを思い出します。
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連載長期化に伴い、登場人物がかなり多い作品となりましたので、まず登場人物を絞り込むわけです。読者はスポットが当たった超人の動向に集中できますし、今後どんな超人が戦線復帰するのか予想するのも楽しい、画期的なシステムといえるでしょう。
不穏な状況の中でジャスティスマン戦で再起不能になったアシュラマンがまさかの復活...!?
結界の発生源をたどると宇宙に浮かぶ不気味な心臓のそばで、黒い影が人の顔に変化します。なんと、その正体は大魔王サタンでした。サタンはおどろおどろしい口調で、「わが憎しみの感情を体現した 真の悪魔となりうる一族」を地球に解き放つと予告します。なんだかヤバそうな雰囲気ですが、それにしても懐かしい...! 大魔王サタンといえば、少年ジャンプ時代から、その存在を認識しておきながら、まだキン肉マンが直接闘っていない珍しい存在。言ってしまえば、取りこぼしていた「悪」なんですよね。ここでの登場は本当に意外でした...!
そんな状況で再び場面は変わり、スペインのサグラダ・ファミリアへと移ります。その地下にはサイコマンがマグネット・パワーの研究をしていた資料が残されているため、その警備も兼ねて、周辺一帯が正義超人の練習場となっているわけです。
スペイン巡業に訪れていたウルフマンと委員長がそんな会話を交わしていると、そこに謎の6人組が襲いかかります。謎の集団に若手超人や衛兵が倒されていく中、敵の姿が明らかになりました。
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フードの下から姿を現したのは、キン肉星王位争奪編で死んだはずのオメガマン...!?
フードの下から顔を見せたのは、オールドファンなら見覚えのあるオメガマンらしき超人でした。ただ、デザインがリファインされていることもあって、どことなく違和感を感じた読者もいたのではないでしょうか。始祖編でもビック・ザ・武道(ブドー)をある意味でリファインした、ストロング・ザ・武道というキャラクターが登場した前例がありますからね。始祖編も含めた新シリーズでは、ジャンプ時代に活かしきれなかったキャラのデザインを、今の画力でちゃんと描き直してリベンジするといったテーマがあるのかもしれません。
襲撃者は、自らをジ・オメガマン(ディクシア)の双子の兄・アリステラであることを明かし、�爛�メガ・ケンタウリの六鎗客(ろくそうかく)�瓩鯡松茲蠅泙后H爐蕕料世い魯汽哀薀澄Ε侫.潺螢△涼浪爾砲△襪�宝でした。いやはや、なんというスピード感でしょう、新章開幕からわずか数話で、敵の親玉、メンバー、目的が開示されました。読者的には、結界によって主力超人たちが軒並み封じられている中、いったい誰が彼らと闘うことになるのか気になるところです。
はじめに立ち上がったのは、その場に居合わせたウルフマンでした。ケガで引退した身とはいえ、アイドル超人が不在のため、多勢に無勢を承知で六鎗客に挑みます。ただ、これは『キン肉マン』の鉄則なのですが、多人数を相手にひとりで突撃しても、だいたいうまくいかないんです...。
案の定、六鎗客のメンバーたちに四方から噛みつかれ、蹴られ、ラリアットをぶちかまされるウルフマン。その時、どこからからティーパックが飛んできて、六鎗客の進撃を阻止しました。その超人はなんと...(この世にティーパックを振り回す超人はひとりしかいないけど)ティーパックマンでした!
第21回超人オリンピックでウォーズマンに敗れて以来、約35年ぶりの登場! 圧倒的画力で描かれる、筋骨隆々の姿は必見!!
さらに、ティーパックマンに続いてカレクック、ベンキマン、カナディアンマンと、超人オリンピックファイナリストたちが集結します。う、うおお〜! なるほど、今回はこう来ましたか...! これは、前シリーズで7人の悪魔超人が電撃参戦した時に匹敵するほどの、意外すぎる面々です!
超人オリンピック・ファイナリストチーム改め、"正義の五本槍"に文字通り横やりを入れられたアリステラは、六鎗客のメンバーに彼らを惨殺するように命じます。
ここで今回の敵たちが、地球の超人に対して異様なほど深い怨恨を抱いていて、殺意をむき出しにしていることが窺(うかが)えます。前シリーズで襲来した�犂萎�無量大数軍(パーフェクト・ラージナンバーズ)�瓩砲蓮�堕落(だらく)した下界の超人たちを粛清するという、ある種の崇高(すうこう)さがありましたが...この六鎗客からにじみ出る殺意はどこからきているのでしょうか?
さて、正義の五本槍vsオメガ・ケンタウリの六鎗客の準備が整いつつありますが、懐かしい超人のカムバックに心躍る一方、彼らが果たして何人生きて帰ってこられるのか不安になってきました。過去のレビューでも何度も語っていますが、『キン肉マン』は本当に勝敗に対してシビアな作品で、どんな人気超人でも負ける時は容赦なく負けるんですよ。よりによって、今回登場した六鎗客のメンバーは、どいつもこいつも手強そうで一筋縄ではいかなそうです。「せめて勝てないにしろ、どうか穏便に負けてほしい...!」と願ってしまう自分がいます。
ウルフマンのピンチにかけつけた超人オリンピックのファイナリストたち。ジャンプ連載時よりもカッコよく見えるが、どこかゆるキャラ感も..
ということで、対戦カードの発表です。ティーパックマンは氷を操る超人・ヘイルマン、カレクックはテントウムシをモチーフにしたマリキータマン、ベンキマンは物騒な歯車をその身に宿したギヤマスター、スペシャルマンは海賊スタイルの巨漢・パイレートマン、そしてウルフマンは狼男風の超人・ルナイトを対戦相手に選びました。
さらに、現地で正義超人たちに檄(げき)を飛ばす委員長のもとに、なぜかキン肉星にいるはずのキン肉マンからの通信が入ります。どうやら新作のゲームを買いに日本にきていたものの、ついつい買い物が長引いて宇宙船に乗り遅れたようです。なんともキン肉マンらしい間抜けな理由ですが、そのおかげで結界に閉じ込められずにすんだので結果オーライですね(笑)。
事情を聞いた委員長はすかさず、新宿にいるキン肉マンに急いでスペインに来るように要請しました。ところで、前々から気になってたんですけど、超人の距離感覚ってちょっとおかしいですよね? 新宿―スペイン間の移動を「今、渋谷で飲んでるから来い」みたいなノリで頼むの面白すぎるんですよね(しかも、交通機関に頼らず走って向かうし)。ともあれ、キン肉マンの到着を待ちつつ、正義超人と六鎗客の対抗戦が始まります...!
超特急なら、走るよりも空を飛んだ方が早いのでは...?という無粋なツッコミはナシで!
【紅茶vs氷!奮闘するティーパックマン!!】
一斉に始まった5対5の団体戦ですが、まずはティーパックマン対ヘイルマンの一戦にスポットが当たりました。六鎗客の一員ヘイルマンですが、どうやら氷を自在に操ることができるようで、試合開始と同時にリングを氷漬けにしてしまいました。
ティーパックマンは得意のティーバッグウィップで攻め立てますが、慣れない足場のせいか一向に当たる気配がありません。一方ヘイルマンは自らの手を凍らせた手刀、ブリザードハンドでティーパックマンの胸元を一発、二発と切り刻んでいきます。
さらにヘイルマンは、ティーパックマンの頭部をつかむと「その頭のティーカップをもぎとって、中身の紅茶をキンキンのアイスティーにして飲み干してやるぜ」と挑発。これには、ティーパックマンも黙っていられません。なぜなら彼は、第21回超人オリンピックでウォーズマンに首を落とされ、頭部の紅茶を飲まれたトラウマがあるからです。あれからティーパックマンは二度と同じ醜態(しゅうたい)を晒(さら)さないように、数年間に渡って徹底的に首を鍛えたと語ります。壮絶な特訓の成果もあって、ティーパックマンはヘイルマンに頭をもぎとられることなく、反撃の一撃をくらわすことに成功しました。
頭にカップを載せた弟子(?)たちと、徹底的に首を鍛えるティーパックマンの様子
ここからティーパックマンの反撃スタートです! ティーバッグウィップでヘイルマンをとらえ、超人オリンピック時代では見られなかった新技「死のティータイム」でヘイルマンを締め付けます。ここまでのティーパックマンの奮闘を見て、僕は感動してしまいました。というのも、作中で描かれた彼の唯一の試合である、超人オリンピックのティーパックマン対ウォーズマンはなんと、わずか4ページしかないんですよ。それだけに、今こうして強敵を相手に善戦しているのが、なんだか夢のようで...。ですが、このまま勝利を飾れるかといえば、やはり現実は残酷で、ティーパックマンの渾身(こんしん)の新必殺技は、ヘイルマンにあっさりとはずされてしまいました。さらに頼りのティーバッグまでもが破壊されて絶望的な状況の中、次巻へと続きます...。
唯一の武器・ティーバッグを凍らされ、ヘイルマンに両断されてしまったティーパックマン。このまま終わってしまうのか...!?
冒頭では、ミートくんが「無名の超人が王子を超える一流の超人になるサポートをしたい」というセコンドとしての秘めたる野心を口にしましたが、改めて、この新シリーズからはシリーズ最高傑作と言っても過言ではない完璧超人始祖編に対する挑戦作という意図を強く感じました。果たして、始祖編では出番のなかった旧キャラクターたちは六鎗客を相手にどんな闘いを繰り広げるのか?「強敵に挑む」だけでなく、「読者に挑む」、「過去のシリーズに挑む」ことになった新たな挑戦者たちの勇姿を見届けましょう。そんな大きな挑戦も含めて、次巻のレビューも楽しみにお待ちください!
●こんな見どころにも注目!
今回の新シリーズでは、まず超人オリンピックのファイナリストたちと�爛�メガ・ケンタウリの六鎗客�瓩箸侶稙�が描かれます。どちらも同じ読者募集から生まれた超人ですが、昭和と令和のデザインの違いがよくわかります。なつかしキャラの面々は、インド出身だから頭にカレーを乗せているとかベンキそのものだとか、線も少なくて子どもでも真似しやすいデザインですよね。一方の六鎗客は、全体的に洗練されていて、カッコいいし見るからに強そうです。この違いは応募している読者の年齢が上がっていることもあると思いますが、昭和超人と令和超人のギャップが感じられて面白い対比ですよね。
●おぎぬまX(OGINUMA X)
1988年生まれ、東京都町田市出身。漫画家、小説家。2019年第91回赤塚賞にて同賞29年ぶりとなる最高賞「入選」を獲得。21年『ジャンプSQ.』2月号より『謎尾解美の爆裂推理!!』を連載。小説家としての顔も持ち、『地下芸人』(集英社)が好評発売中。『キン肉マン』に関しては超人募集への応募超人が採用(JC67巻収録第263話)された経験も持つ筋金入りのファン。『笑うネメシス―貴方だけの復讐―』(原作担当)全4巻が発売中。そして、『キン肉マン』コラボミステリ小説シリーズ『キン肉マン 四次元殺法殺人事件』、『キン肉マン 悪魔超人熱海旅行殺人事件』、『キン肉マン 禁断の超人タッグ殺人事件』が好評発売中
構成/石綿 寛(樹想社) 撮影/中里 楓 ©ゆでたまご/集英社

