
クックパッドのポッドキャスト番組「ぼくらはみんな食べている」。食や料理に熱い思いを持ち活躍するゲストを迎え、さまざまな話を語ります。クックパッド初代編集長の小竹貴子がパーソナリティを務めます。第88回目・89回目のゲストは、「タコス・トレス・エルマノス」代表・古屋大和さんです。
店では、タコスを絶対に持ち帰らせない。それなのに冷凍タコスは1年で47都道府県に広がり、10万食が売れています。タコス専門店「タコス・トレス・エルマノス」代表の古屋大和さんにその理由を尋ねると、返ってきたのは奥さんと子どもの話でした。クックパッドのポッドキャスト番組「ぼくらはみんな食べている」で語ってくれました。
冷凍は全国へ。でも、店では持ち帰りお断り
収録中、2人の前に登場したのは、この日スタジオに持ち込まれた一つの箱。トレス・エルマノスが売り出している冷凍タコスです。白地に赤一色のパッケージは「悪ノリですね。うちのデザイナーがこれを持ってきて」と笑うほど強気なデザイン。中には、トルティージャに具材とサルサまで盛りつけた状態のタコスが、そのままの形で凍っています。箱の切り口を引くと、皿の上に店で出しているのと同じ姿が現れました。
|
|
|
|
「何気にこれ、めちゃめちゃ重要です。誰が本当のタコスを知ってるんですか。お店の人は知ってたとしても、消費者は知らない。盛り方もバランスも、掴み方も知らない」
材料を送って各自で組み立ててもらうのではなく、完成形のまま届ける。レンジで2分半温めれば、店と同じ状態のタコスになります。さらに、持ち方まで教わりました。3本の指でつまみ、傾けずにまっすぐ口へ運ぶのだそうです。
この1年間、冷凍タコスを届けた先は、47都道府県すべて。年末年始のような家族が集まる時期にまとめ買いされ、誰かと一緒に食べられていることも、データからわかったそうです。
|
|
|
|
一方で、店舗では持ち帰りを受けつけません。メキシコには冷めたタコスを食べる人をからかう言い回しがあるそうですが、理由はそれだけではないようです。
「『嫁さんが家で待ってるんで、持ってってあげたいんです』。その優しさ、最高です。でもそれなら、次の機会に店へ連れてきた方がいい。なんでかっていうと、嫁さんの1回目が冷めたタコスですか。あなたの感動はここで得られたけど、嫁さんは得られない」
子どもが大事なら、子どもを連れてきていい。「そのために僕らやってるんで」と言い切ります。その代わり、冷凍で届くタコスは店と同じ形で用意。温かい状態、お店に限りなく近い状態で食べることができる。そういう筋の通し方の結果なのです。
台本になかったパスタと、明治記念館の決起集会
この日の収録は、途中から用意された台本から離れます。「僕ら、なんか言っちゃったんですよね、パスタ食べるなんて」と言いながらクックパッドのキッチンに立った古屋さんが、あるものだけでパスタを作り始めたのです。
|
|
|
|
ソーセージは包丁を使わず手でちぎり、にんにくは焼かず、茹で湯には海水くらいの塩。皿に取り分けると「やばいでしょ」「いや、感想欲しいっす」と、その場の全員に配って回ります。
社長が思いつきで麺を茹で、その場の全員に食べさせる。この距離感は、会社としての集まり方にも出ています。公式YouTubeには、決起集会の映像が上がっています。会場はなんと明治記念館。「かっこいいでしょ。ど真ん中取って」と得意げです。メキシコ人スタッフが集まる決起集会の場に、この会場を選ぶ。そこには理由がありました。
「メキシコは良き日本だと思います。良き日本は普遍をつかんでいたと僕らは思ってるし、江戸、明治で昭和になっていくところで、素敵なことがいっぱいあったなとか、世界の中にアジア人で躍り出ること、自分たちは誇りがあって、だからその先に希望を見ていたこと。そういうことを僕らはちゃんと戻そうとしてるから」
良き日本。世界を渡り歩いた末に古屋さんが持ち帰ってきたのは、日本人が何を誇って生きるのかという問いでもありました。みんなで集まって喜びを表現すること、仲間をねぎらうこと。今の日本では照れくささが先に立ってしまうかもしれない、と言います。
「お前のこと好きだよとか、お前がいなくなって寂しいとか、俺が泣いちゃうこととかって、あんまりないのかもしんないけど、そんなん泣くやん。絶対もう寂しいぜ。で、そいつ戻ってくるんですよ」
今がもう、夢のなか
会社としては、メキシコとの取引を自分たちの手で太くしていくことを考えています。ライムの直輸入を始め、トルティージャの生産者とは株を持ち合う形での協業へ。「民間親善大使のように」、あいだに余計な商売が挟まらないまま伝わる回路を作りたいのだといいます。
「今すごい強烈に、僕らばっかりなんでタコスだとか言われちゃうかもしんないけど、僕、全然そうじゃなくて。皆さんが僕らを通じて買っていただくんだったら、めちゃめちゃ嬉しい。すごいみんなでメキシコのこと好きですよ、メキシコに敬意持ってますっていうタコス屋さんになってほしい」
他店に対しても、タコスをイベントのように扱わないでほしい、タコスは毎日のものなのだから、といったことを伝えていきたいのだそうです。
面白いのは、スタッフが独立を口にするときの言い方です。奥さんの実家がある沖縄でも、米軍関係で移るイタリアのナポリでも、みんな「トレス・エルマノスをやる」と言い出すのだそうです。
そして最後に夢を尋ねると、笑いながらこう答えました。「夢はな、いつも夢の中に生きてるからな」。もうビジョンがあって、そこを見ている。叶わない夢だとは思って見ていない。だから今が夢のなかなのだ、と。
「ここからトレス・エルマノスの2代目、3代目が出てきても、トレス・エルマノスをやっていって、日本の食卓にトルティージャも選択肢の中に入るみたいなことを目指して、日々日々やる感じですかね」
ポッドキャストとは?
インターネット上で配信される、ラジオのような音声コンテンツ。スマートフォンのアプリやPCのブラウザ上で、好きな時間に聴くことができます。
ご視聴はこちらから
🎵Spotify
https://hubs.li/Q02qmsmm0
🎵Amazon Music
https://hubs.li/Q02qmslg0
🎵Apple Podcast
http://hubs.li/Q02qmztw0
【ゲスト】
第88回・第89回(7月31日・8月7日配信) 古屋大和さん
1974年、山梨県富士河口湖町生まれ。富士山信仰の浅間神社・葭之池温泉の家系で育ち、ミュージシャン、広告映像制作などを経て、2015年にメヒコへ移住。2021年にタコス専門店トレス・エルマノスを起業。フードトラックで横須賀、福生、横田などに出店し人気を博す。2022年に山中湖店、2024年に原宿店をオープン。日本より先にメヒコ本国で「メヒコのタコスそのものだ」と話題となり、日本にある唯一無二の道端タコスとして支持されている。他に恵比寿店、浅草店、下北沢店。愛称はジャミタ(Yamita)。著書『愛を貫く タコス・トレス・エルマノスの革命』(Type Slowly)
HP:https://3hermanos.co.jp
Instagram:@tacos3hermanosdf
X:@3hermanos_df
【パーソナリティ】
クックパッド株式会社 小竹 貴子
料理愛好家・ 料理の楽しみ共創室 部長/創業期から参画し、初代編集長としてメディアづくりに携わる。現在は、料理家や生産者といった食のつくり手の声を届ける活動を行っている。「日経ウーマンオブザイヤー2010」受賞。プロの技術や食材の背景にある物語を、暮らしに馴染む言葉で伝えることをライフワークに、生活者の目線で食の楽しさを探求している。
X: @takakodeli
Instagram: @takakodeli

