
増井健仁がビジネス、エンタメ、政治など様々な分野のキーパーソンを迎え、“いま起きていること”と“これからの社会”を多角的に読み解き、新しい視点とヒントを届ける「MEDIAMIXI with interfm」。2026年6月23日放送回は、noteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦氏が登場。
1972年生まれ。1995年よりNTTで法人営業やIR活動に従事したのち、IT系コンサルティングファーム、アリエル・ネットワークを経て、2006年のアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。代表取締役社長、取締役CMOを歴任した。現在はnote株式会社のnoteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業のnote・SNS活用を支援している。
個人では「エンタメビジネスウォッチャー」として、日本のエンタメの世界展開を応援すべくYahoo!ニュースやYouTubeで業界ニュースを解説。Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024で特別賞を受賞している。そしてこのたび、MEDIAMIXIのオフィシャルインタビュアーに就任した。
「投票する人たちも相当の覚悟が必要」。6月13日に開催された「MUSIC AWARDS JAPAN 2026」に投票者として参加した徳力氏が、アワードの内側で見たもの、XG「HYPNOTIZE」受賞の裏にあったファンダムの力、そして世界で評価されながら現場から「つらい」という声しか聞こえてこないアニメ業界の課題までを語った放送のハイライトをお届けする。
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目次
Toggle- 「投票する人たちも相当の覚悟が必要」徳力の目から見たMAJ
- 日本のコンテンツの世界展開
- アニメ業界が早期に是正すべきこと
「投票する人たちも相当の覚悟が必要」徳力の目から見たMAJ
話題は、6月13日に開催された「MUSIC AWARDS JAPAN」(MAJ)へ。徳力は今年から、投票権を持つ約5000人の音楽人の一人に加わっている。まずは、そんなMAJの裏側について語った。
増井「その5000人の音楽関係者が投票するっていう仕組みになってますけど、この辺の透明性ってどう思われてますか?」
徳力「僕がMUSIC AWARDS JAPANを知ったのは去年で、今年初めて投票の方の音楽人の中に入れていただいたんですけど、仕組みがよくできてるなと思いましたね。投票が終わったやつはこれで完了とわかるとか、ここはちゃんと投票しなくちゃダメみたいなのもわかる。ちゃんとWEBシステムになっていて、すごい投票しやすかったですし、それが投票してもらうことの準備なんだなっていうのは、すごい感じたんですよね。一方で、やっぱり僕が思ったのは、これは投票する人たちも相当の覚悟が必要だなっていうこと。部門がやっぱめちゃめちゃ多いんで大変なんですよね。特にアーティストの方々の、ノミネートされた方々も皆さん権利を持つわけじゃないですか。これは本当やっぱりちゃんと向き合って投票しないと大変な賞なんだなっていうのを投票する側になって初めて分かりました。去年は本当に好き勝手言わせていただいてたんですけど“なるほど、これは大変だ”っていうのをすごい分かりましたね」
増井「徳力さん、事前予想されていて、結構当てられてると思うんですよ。最優秀楽曲賞は『IRIS OUT』という予想で、実際は『怪獣』だったという外しはあるけど、最優秀アーティストのミセスとか、それから最優秀アルバムの藤井風とか、その辺を当てられてるし……」
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(中略)
徳力「予測の話なんですけど、今年は実はね予測がすごいしやすい年だったんですよ。去年(2025年)はノミネート対象が過去曲全部に渡ってたんで、もう全然わかんなかった。それこそ藤井風さんのアルバムとか、3年前のアルバムだから、ご本人が一番びっくりするって、そんな3年前のアルバムの受賞でいいんですか? みたいなリアクションをされるっていうのがありましたけど。今年はさすがにちょっと古い曲ばっかりになるのは良くないかなっていうので、対象が1年に絞られたんですよね。そうすると、やっぱりビルボードのデータとかをベースにしているから、大体年間で1位だった人たちはこの人たちだよねと思えば、比較的予想はしやすかったんですよ」
増井「なるほど」
徳力「ただ、Best Global Hit from Japanは唯一対象期間が設けられてないんですよね。だからAdoさんの『うっせぇわ』のような過去曲がいて、XGの『HYPNOTIZE』があって、これXGの『HYPNOTIZE』だけ今年の曲なんですよ。(中略)僕もさすがに今年の曲だからねえべって思っちゃったんですよね。ファンとしては取ってほしいんだけど、やっぱ普通に考えたら2025年大ヒットした『IRIS OUT』が取ると思うじゃないですか。実際データで表彰されたベスト曲の地域別のやつはもう全部『IRIS OUT』が持ってったんですよ。プレミアセレモニーで海外ヒットを『IRIS OUT』が全部持ってったのを見た直後だから、これは『IRIS OUT』だろうなと思って、ちょっと傷つかないように構えて待ってたんですけど。XGの『HYPNOTIZE』って豊田章男会長の口から出てくるわけですよ。僕もめちゃめちゃ感動しました」
増井「泣きはしなかった?」
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徳力「泣きはしなかったですけど(笑)。ALPHAZ(XGのファンネーム)の方々、海外のXGのファンダムの方々が、たくさんSpotifyで投票してくれたということなんですよね」
増井「なるほどね」
徳力「地域別のやつはもうデータで自動的に決まるんですけど、Best Global Hit from Japanだけ、Spotifyの画面から投票したもののポイントで、海外の人たちが選ぶっていうアワードなんですよ。たぶんやっぱりファンダムの力がここで出たんですよね。再生数で言ったら多分『IRIS OUT』なんですけど、ファンダムとして投票をちゃんとし続けるっていうのは、XGのファンダムの方々が頑張ってくれたんだなっていう意味では本当に感謝ですよ。これでちゃんとMUSIC AWARDS JAPANの受賞者にXGが名前を残したっていう。すいません。ファンなんで、ちょっと語りすぎてしまいましたけども」
日本のコンテンツの世界展開
番組の後半では、話題は日本のコンテンツの世界展開へと移った。
増井「日本のコンテンツの世界展開について、ちょっと伺っていきたいと思うのですが、まず日本のアニメについて、海外ではもうどんどんどんどん人気で、うなぎ登りですけど、徳力さんどう見てます?」
徳力「恥ずかしながら、僕がエンタメの記事を真面目に書き始めたのはこの3年ぐらいなんですけども、やっぱり日本のコンテンツが実は海外に刺さってるんだっていうのを実感し始めたのが、それぐらいだったってことなんですよね。その中でも、やっぱりアニメは本当にすげえなっていうのを、改めて今頃かよって話なんですけど、ほんと味わう出来事がたくさんあって。去年は何と言っても『鬼滅の刃』ですね。海外だと『Demon Slayer』ですけど、興行収入が1000億を超えてるんですよね。世界興行収入。世界の映画の興行収入のトップ10のランキングとかに並ぶわけですよ。日本の映画が。アニメが。やっぱ個人的にもほんと信じられなくて。今Netflixのデータなんかでいうと、Netflixは今世界の会員が確か3億2500万人とかで、そのうちの半数の人は、一度は日本のアニメを視聴したことがあるっていうデータをNetflixが出してるんですよね。で、ソニーが買収したクランチロールは今2000万人かな、会員突破して、ここがたぶん超コア日本アニメユーザーですね。クランチロールって日本のアニメを見るためのグローバルサービスで、日本だけは見れないっていうサービスで。で、その裾野をさらにNetflixは広げてくれているっていう、その結果、『鬼滅の刃』が1000億行き、『チェンソーマン』も確か280億とかいってるんですよね。世界興行収入が。『チェンソーマン』は、MAPPAさんの単独出資で、めちゃめちゃギャンブルだって言われたのがすごい大ヒットを生み出したわけですよ。やっぱアニメはね、完全にフェーズが変わったなっていうのはすごい思うんですね。これがまた実写とか音楽とかの人気のベースにもなってるんで、本当にすごいなと思いますね」
増井「現地時間5月15日からは、アメリカで『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』が公開されて、北米で850館以上上映されてるって」
徳力「アメリカでは850館は実はそんなに多くないんですよね。アメリカは映画館が数千館とかあるらしくて、850館は小規模で、そこまで大きくはないですけど、でもそれでも上映できたっていうのは大きいですし。ガンズ・アンド・ローゼズがね、メインの楽曲になってますから、ぜひガンズ・アンド・ローゼズファンの方に見てほしいですけど。ガンズ・アンド・ローゼズの曲を聴くための映画みたいな感じになってるんで面白いですけど。でも本当に、いろんなアニメがやっぱりアメリカで公開上映されるようになったんですよね。Netflixで配信されてるアニメの『ダンダダン』とかも、実はアメリカではNetflixでアニメが配信される前に映画館で上映されるんですよ。日本でも『呪術廻戦』とかアニメ先行上映とかやってますけど、あんな感じでアメリカで上映されて、『ダンダダン』は、アメリカの興行収入と動員数のトップテンとかに顔を出してるんですよね。アニメの先行上映なのにみたいなことが起こり始めてて、すごい面白い状態になってますね」
増井「あとサウジアラビアなんですけど、自分も去年サウジアラビア、リヤドに行ってきて、eスポーツのワールドカップ見せていただいて、その時に日本館も行ってきたんですけど。マンガプロダクションズのCEO、ブカーリ・イサムさんにインタビューされたんですよね?」
徳力「(中略)サウジアラビアの方で、最初はインタビューしませんかって言われて、え? アラビア語でインタビューするのかなと思ったら、日本語めちゃめちゃお上手なんですよね」
増井「サウジの方たちにとっての日本アニメってどんな感じなんですか?」
徳力「そのブカーリ・イサムさんにインタビューさせていただいて、本当に感動したんですけど『キャプテン翼』で育ったっていうんですよね」
増井「えー」
徳力「『キャプテン翼』なんか日本の小学校、中学校の話じゃないですか。感情移入できんの? って思っちゃいますね、僕らからすると。でも、めちゃめちゃ感情移入されてるんですよ。私は『キャプテン翼』のおかげで友情の大切さを知りましたと、とうとうと逆に語られるみたいな。イサムさんがおっしゃって、なるほどなと思ったんですけど、日本のアニメの中で、特にモーニングアニメとおっしゃってたんですけども、子供が安心して見れるアニメっていうのが、やっぱり僕らの世代の頃からもう実は世界中で放映されていて、それを見て育った人っていうのは、僕らの予想以上に世界中にいるんですよね。なので、サウジアラビアの方々には今も日本のコンテンツ好きがたくさんいて、実はドラゴンボールパークってサウジアラビアに建設予定なんですけど、それもサウジにいる人たちがみんな日本のアニメ好きだから成り立つらしいんですよね。僕らがね、サウジがドラゴンボールパーク作るって、オイルマネーがあるから、こう適当にIP買ったんじゃねえのとかって不安になるんですけど、どうもそういうことではないらしく。本当に日本のアニメで育ち、日本のアニメを愛してる人たちがサウジアラビアにもいるんだみたいなのは、こっちが逆に感動するみたいな部分もあります」
アニメ業界が早期に是正すべきこと
華やかな数字が並ぶ一方で、徳力が最大の課題に挙げたのは、制作現場の状況だった。
増井「(中略)そういう意味では、日本のIPがね、そこに食い込めてるのがすごいなと思うんですけど。日本のアニメ海外展開、今後、徳力さん的にこういう風に考えた方がいいんじゃないのって何か思われてることってありますか?」
徳力「そうですね。どちらかというと、やっぱり現場のいわゆるブラック状態というのをいかに早期に解消して、アニメーターを憧れの職業にできるかどうかは、これはもう国も含めてのすごい大きな課題だと思いますね。これだけ世界で評価されていて、産業規模もすごい右肩上がりで上がっているのに、現場からはつらいっていう声しかなかなか聞こえてこないんですよね。当然多分一部の、それこそufotableさんとかMAPPAさんとか、大手はあんだけ稼いでたらたぶん現場にも還元はしてると思うんですけど。やっぱり総じてまだ日本のアニメは多分数を作りすぎで、その作る過程でやっぱりやりがい搾取的な構造のところっていうのはまだまだ残ってるんだと思うんですよね。これだけ世界でアニメが憧れられているのに、小学生の憧れの職業にアニメーターが入ってこないって明らかにおかしいと思うんで」
増井「確かに」
徳力「これはやっぱり早期に是正しないとダメだと思いますね。YouTuberとかライバーとかトップテンに入ってる場合じゃないと、当然YouTuber、ライバーもいいんですけど、アニメーターもやっぱり入ってこないとおかしいんですよね。やっぱり日本はどちらかというと、まだクリエイターの評価が低い国だと思うんですよね。これは海外の、それこそディズニーさんのイベントとかに参加して思ったんですけど、ディズニーさんD23っていうロサンゼルスででかいファンイベントやるんですね。そこでレジェンドを表彰するイベントがあるんですけど、それこそハリソン・フォードとかジェームズ・キャメロンとかが表彰されるのに並んで、衣装を作ってる人たちとか、ディズニーランドの木を作ってる人とかもレジェンドとして表彰されるんですよ。なんならスタンディングオベーションもそっちの方が長かったりするんですね。日本だとありえないじゃないですか。日本だと日本アカデミー賞で表彰されるのは、俳優の方々で、裏方の賞って大体ダイジェストでガッと紹介されてみたいなのありますよね。でも海外ってゲームクリエイターの小島秀夫監督とか宮本(茂)さんとかももう神扱いされますから。なんなら多分日本の方が扱い低いと思うんですよね。あの辺の裏方の人たちをいかに本当に、アーティストと同じように憧れの職業にするかは、これ僕も含めてですかね、メディアも含めて、本当に真剣に考えないと。今はまだ、やりがい搾取でも頑張ってくれたクリエイターのおかげで産業が成り立ってますけど、放っておくと本当にこれは危ないなっていうのは感じます」
増井「なるほど。じゃあその辺は業界全体で打ち出していくってことが大事なんですかね」
徳力「頑張っていただきたいなと思います。そこに貢献できることがあればやりたいなと思ってますね」


