ヴィジョン(ポール・ベタニー)=マーベルオリジナルドラマシリーズ『ヴィジョンクエスト』10月14日よりディズニープラスにて独占配信開始(C)2026 Marvel 壁に埋め込まれたテーブル、途中で途切れた階段の手すり、室内にある外窓――。マーベル・スタジオのドラマシリーズ『ヴィジョンクエスト』(10月14日よりディズニープラスで独占配信)では、生成AIの画像に見られるような不自然さを、美術スタッフが人の手でセットに再現した。制作陣が、“AIが暮らす世界”を表現するための工夫を明かしている。
【動画】『ヴィジョンクエスト』本予告 本作の主人公は、「アベンジャーズ」シリーズなどに登場してきたヴィジョン(ポール・ベタニー)。物語の舞台は現実世界に加え、ヴィジョンの脳内世界「マインドスペース」へと広がる。そこには、かつての宿敵ウルトロンや、ヴィジョンの元となったAI・J.A.R.V.I.S.などが登場し、彼が人間として生きるためのサポートを行っている。
「マインドスペース」は、一見すると普通の家のような空間だ。しかし、テーブルに置かれたレモンのそばにはレモンの絵が飾られ、キッチンの横にはキッチンの絵がある。家具や建物の構造にも、よく見ると不思議な“ズレ”が潜んでいる。
プロダクションデザイナーのウィル・ヒューズ=ジョーンズによると、着想のもとになったのは、実際にAIが生成する画像だった。植物の多い家を作るよう指示すると、同じ植物が繰り返し登場する。また、ひまわりが好きだと伝えると、部屋にひまわりを置くだけでなく、壁にひまわりの絵まで飾るという。
制作陣は、こうした繰り返しや不思議な配置をセットのデザインに取り入れた。ヒューズ=ジョーンズは「現実でありながら現実味が全くない、とても不思議な雰囲気のセットです」と説明している。
現在、さまざまな映像作品で生成AIが活用されている中、本作がユニークなのは、AIが生成した画像をそのまま使うのではなく、そこに見られる不自然さを人間が観察し、美術として作り上げた点だ。
ショーランナーのテリー・マタラスは「AIを表現するのに生成AIを使用する必要性はありませんでした。むしろそういうところを表現するのを楽しいと思いました」と語っている。「AIが『家』を構成する際に考える奇妙な要素が、独特の美しさを映し出しています」と、その造形の魅力にも触れている。
ヴィジョンを演じるベタニーは、AIが身近になった今、本作に取り組む意味を次のように語る。「私が最初にヴィジョンを演じ始めた頃、AIはまだ映画的な概念に過ぎませんでした。本作で私たちは大胆な挑戦をし、非常に奇妙で風変わりな作品に仕上げました」。
『アイアンマン』以来、さまざまなAIを物語に登場させてきたMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)。本作では、AIそのものに加え、人間がAIをどう捉え、向き合うかという視点も描く。
マタラスは「本作では、AIがいずれは私たちの姿を映し出す鏡となる、という点について触れています。私たちはAIの親のような存在であり、責任ある形で社会に送り出す必要があるのです」と語っている。
人間として生きようとするヴィジョンと、人間の手で作られたAIの脳内世界。10月14日の配信開始後は、ヴィジョンの物語とともに、美しく整っているようでどこかがおかしいセットの細部にも注目したい。