※画像はイメージです。生成AIを使用しています 高速道路や自動車専用道路で「あおられたかもしれない」と恐怖を感じた経験があるドライバーは決して少なくありません。
警察庁が公表している交通安全に関する資料では、車間距離を極端に詰める危険な運転や進路妨害などは重大事故につながる悪質な行為として注意喚起が続けられています。
また、あおり運転は2020年の道路交通法改正で「妨害運転罪」が創設され、違反内容によっては厳しい行政処分や刑事罰の対象となりました。交通の流れを乱す危険運転は、一歩間違えれば加害者だけでなく、何の関係もない周囲の車両まで巻き込む重大事故へ発展する可能性があります。
今回ご紹介するのは、仕事帰りに有料道路を利用した男性が、執拗なあおり運転に遭遇した実録エピソードです。逃げ場のない一車線規制区間で迫り続ける後続車。極限状態のなか、とっさの判断が思わぬ結末を招くことになりました。
◆残業後の有料道路で遭遇した後続車の異変
日々の通勤でマイカーを運転する小野田さん(仮名・37歳)は、片道40分の道のりを毎日往復しているといいます。
事件が起きたその日、小野田さんは少し残業がかさみ、普段よりも退勤時間が遅くなってしまったそうです。
「その日は週に1度のジムに通う日だったんです。いつもなら時間に余裕があるのですが、その日はギリギリで焦っていました」と、当時を振り返る小野田さん。
少しでも時間を短縮しようと、彼は寝坊した朝や早く帰りたい時によく利用するという、有料道路へ入るルートを選択。夜の有料道路は比較的空いており、お気に入りのFMラジオに耳を傾けながら、鼻歌交じりでリラックスしてハンドルを握っていたといいます。
しかし、そんな穏やかな時間は長くは続きませんでした。しばらく走行した頃、バックミラーに映る後続車のヘッドライトが、異常なほど眩しく小野田さんの視界に飛び込んできたそうです。
◆逃げ場のない一車線規制で迫る狂気と恐怖
あいにく、その時の道路は道路拡張工事の真っ最中であり、長い区間にわたって一車線に規制されていたようです。
「最初は単に車間距離が近いのかなと思ったのですが、明らかに異常でした。バックミラー越しでも、後ろの車のフロントマスクが迫っているのがはっきりと分かるほどで……」
後続車はピタリと真後ろにつけ、執拗に車間を詰めてきました。一車線ゆえに進路を譲るスペースはなく、下手にブレーキを踏めば即座に追突されかねないという極限状態に陥ったといいます。
「このままでは本当にぶつけられるかもしれない」
という凄まじい恐怖から逃れるため、小野田さんは恐怖心に突き動かされるようにして、徐々にスピードを上げていったそうです。
しかし、いくら加速しても後続車は狂ったように距離を詰め直してあおってきたといい、精神的に追い詰められていきました。
◆もう極限状態、無我夢中でハンドルを切ったところ……
終わりの見えない恐怖のドライブが続く中、小野田さんの脳裏には先週この道路を通った時の光景がふとよみがえったそうです。
「この道路は本来二車線なのですが、工事の関係で車線規制が変わることを思い出しました。先週は左側が閉鎖されて右側を走らされた後、今度は右側が閉鎖されて左側に誘導される構造になっていたんです」
つまり、もう少し進めば、左車線へと車線を変更させる標識とバリケードが現れるはずだと確信したのです。
徐々に上がる速度のまま、運命の車線変更ポイントが急速に前方から迫ってきました。小野田さんはとにかくこの恐怖から一刻も早く解放されたい一心で、ラストスパートをかけるようにアクセルを踏み込み、さらにスピードを上げたそうです。
そして、前方に工事用のバリケードが見えた瞬間、その分岐点でハンドルを急に左へと切り込みました。
「無我夢中でハンドルを切りました。少しタイヤが軋むような嫌な音が響きました」
その結果、小野田さんの車は間一髪で左車線へと滑り込みましたが、その直後、後方から「バリッ」という何かに接触した破壊音と、激しい急ブレーキの音が夜の道路に響き渡ったそうです。
◆帰宅後ニュースで知ったあおり運転の結末
極度の緊張から両手をガタガタと震わせながらも、小野田さんはそのまま走り続けました。しばらくして恐る恐るバックミラーを覗き込むと、先ほどまで車内を暴力的に照らし続けていた眩しい光源が、跡形もなく消え去っていたそうです。その後、小野田さんは何とか無事に帰宅することができました。
しかし、あの瞬間に後ろで何が起きたのかがどうしても気になり、しばらくして地元のニュースサイトを確認してみたそうです。
すると、まさに小野田さんが恐怖におののきながら走っていた同じ時刻、その車線変更の分岐点付近で、1台の乗用車による単独事故が発生したという記事が掲載されていたといいます。
「幸いにも物損事故で、怪我人は出なかったようです。なんだか、私も関わっているのでホッとしたのを覚えています」
車間距離を極端に詰めすぎていた後続車は、前方の小野田さんの車が急に進路を変えたため、前方の状況が見えないまま直進し、そのまま工事用のバリケードに激突してしまったそうです。
今回のケースでは、結果として執拗に車間距離を詰めていた後続車が単独事故を起こした可能性が高く、当事者以外を巻き込まなかったことは不幸中の幸いだったと言えるでしょう。
しかし、一歩間違えれば前方車両への追突や多重事故につながっていた可能性も十分考えられます。
警察庁では、あおり運転の被害を受けた際は、相手と張り合って速度を上げたり急ブレーキをかけたりせず、安全な場所へ避難し、必要に応じて110番通報するよう呼びかけています。
また、高速道路上で危険を感じた場合は、サービスエリアやパーキングエリア、交通量の多い場所へ移動するなど、自分自身の安全を最優先に行動することが重要とされています。
小野田さんは恐怖のあまり必死に車を走らせましたが、冷静さを失えば自分も危険運転になりかねません。
近年はドライブレコーダーの普及によって危険運転の証拠を残しやすくなり、妨害運転の摘発にも活用されています。
万一このような場面に遭遇した場合は、無理に相手へ対抗するのではなく、自分と周囲の命を守る行動を最優先に考えることが、結果的に最も賢明な判断なのかもしれません。
<TEXT/八木正規>
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営