トイザらス Ned Snowman - stock.adobe.comディスカウントストア「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が、日本トイザらスの事業譲受を発表。トイザらスは長年赤字が続いていました。PPIHは立て直し策として従来とは異なる顧客層の獲得や、キダルト領域の品揃えを拡大する方針を掲げています。玩具市場の成長を牽引するキダルトは、トイザらス再生のカギを握ります。
◆少子化でも過去最高を記録する玩具市場
日本トイザらスは2025年12月期に27億8800万円の営業損失、37億5900万円の純損失を計上しました。2019年12月期は営業利益を出していたものの、2020年12月期から6期連続で営業赤字に陥っていた経緯があります。店舗リニューアルやEC販売の強化など売上向上施策を図ったものの、減収を食い止めることができませんでした。
PPIHは運営する「MEGAドン・キホーテ」や「アピタ」などにトイザらスの導入を進め、新たな来店動機を作るなどして集客力の強化を図る予定です。トイザらスはベビー・キッズ・ファミリーの顧客基盤を持つ一方、PPIHは若年層やシニアにも強みを持ちます。顧客基盤を統合することで、ベビーからシニアまでライフステージ全体で顧客接点を構築できると説明しました。
既存店の進化に向けてはキダルト関連商品の強化施策を掲げていますが、トイザらスはすでにこの分野へ注力していました。キダルトは子供と大人を組み合わせた言葉で、子供向けに作られた商品やサービスを大人が楽しむ消費行動を指します。トイザらスは今年7月に「トイザらス 上野マルイ店」をオープンしました。この店舗は4つ目のキダルト専門店。もちもちとした質感の「スクイーズ」や、開封するまで何が入っているかわからない「ブラインドボックス」など、大人にも人気の商品を販売しています。
少子化にも関わらず、日本の玩具市場は堅調です。日本玩具協会によると、2025年度の玩具市場は前年度比6%増の1兆1664億円で過去最高を更新しました。大人にも子供にも人気のトレーディングカードが好調な他、ぬいぐるみやプラモデル、鉄道模型、フィギュアなどが伸びています。
◆単身者の玩具支出額が著しく伸長
キダルトの消費動向は、総務省の家計調査に顕著に現れています。2025年における勤労世帯のうち二人以上の世帯の玩具への年間支出額は1万6459円で、前年比33%の増加でした。一方、単身世帯の支出額は2万4404円で、同68%も増加。単身者は子供を持つ世帯よりも8000円近く多く支出しており、伸び率の大きさも特徴的です。
家計調査からは、結婚していない大人が進んでオモチャを買う姿が浮かび上がります。子育て世帯が子供と一緒に買い物をするなかで、ついで購入する傾向は低いことを示す結果と言えるでしょう。小売店は大人に足を運んでもらう理由を作らなければなりません。
日本トイザらスは1989年設立で、1991年に1号店となる「トイザらス 荒川沖店」をオープンしました。1997年に日本初のベビーザらスコーナーが誕生。消費者の間では、子供向けの販売店という印象が根強く残ります。キダルト専門の店舗展開を開始した時期も2025年からであり、決して早い対応ではありませんでした。
PPIHがトイザらスの業績回復施策の一つにキダルト強化を挙げる理由には、こうした背景が存在します。「ドン・キホーテ」はもともと繁華街や都市部に出店し、アクセサリーや日用雑貨を主軸として若者や単身世帯を主なターゲットとしてきました。ブランドを掛け合わせることで、トイザらスの集客力を引き上げる潜在性が見込めます。
◆キダルト市場が抱える「特有の難しさ」
キダルト消費の恩恵を受ける企業も目立ちます。バンダイナムコホールディングスは、2026年4月〜6月の国内トイホビー「機動戦士ガンダム」の売上高が307億円に達し、前年同期間の1.2倍に増加しました。一方、「アンパンマン」は同4%増の24億円、「ウルトラマン」は同8%減の12億円、「プリキュア」は同40%減の15億円でした。
キダルトは海外でもトレンドになりつつあります。プラモデルやフィギュアなどの企画販売を手掛ける壽屋は、2026年6月期の海外プラモデル売上高が計画を大きく上回りました。自社IP「アルカナディア」や、「メガミデバイス」などのプラモデルがアジア圏を中心に人気を集めます。
「ドン・キホーテ」は訪日外国人にも人気で、トイザらスはインバウンド需要を獲得できる可能性も秘めます。ただし、キダルトは売り場づくりが難しい領域です。子供向けの商品は売れ筋が比較的読みやすいカテゴリーですが、大人向けとなるとプラモデルやフィギュア、鉄道模型など扱う商品の広さに加え、マニアックな顧客に対応できる深さも要求されます。
トイザらスのようなチェーンストアの場合、オペレーションを均質化しなければなりません。そのバランスをとり、玩具に多額の投資をする単身者を獲得する必要があります。PPIHがいかなる改革を実行するのか、その手腕に期待が集まります。
<TEXT/不破聡>
【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界