【コラム】 途上国発ブランドから考える、真の「フェアトレード」とは

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2009年10月10日 10:00  よりミク

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よりミク

 「Motherhouse(マザーハウス)」を知っていますか? ショルダーやメッセンジャー、トートなどカジュアル路線中心のバッグブランドです。麻の一種「ジュート」の柔らかい風合いを生かしたクシュクシュラインや、皮素材とあわせたシンプルなデザインが、ナチュラル派に人気を呼んでいます。嵐の相葉雅紀さん主演のほんわかドラマ「マイガール」(テレビ朝日系)にも、持ち物として登場するとか。  マザーハウスの代名詞ともなっている「ジュート」は、耐久性・通気性・吸湿性に優れ、廃棄しても完全に土に還るという、環境にも優しい天然繊維です。味わいある素材ですが、これまで使われていたのは主にコーヒー豆の保存袋。それをかわいく質の良いバッグに育てたのが、マザーハウス代表取締役兼デザイナーの山口絵理子さん(28)です。テレビ番組「情熱大陸」(TBS系)や、著書「裸でも生きる 25歳女性起業家の号泣戦記」など、多くのメディアに登場しているので、ご存知の方もいるのでは?    山口さんの足取りは劇的です。小学校でいじめに遭い、中学で非行へ。柔道に打ち込んだ工業高校から一転、政治家を志し、慶應義塾大へ入学します。国際機関でインターン体験をしていた大学4年の時に、机上で政策を練る日々に疑問を感じ、アジア最貧国のバングラデシュに渡りました。そこで見たのは、賄賂まみれの日常、不衛生なスラム、テロなど過酷な実像ばかり。支援金だけでは「変わらない現実」にもんもんと葛藤する日々が続きます。しかしある日、バングラデシュの特産品ジュートに出会い、「途上国から世界に通用するバッグを作る」とひらめき、ブランド創設へひた走ります。現地の作業員と悪戦苦闘しながら、160個のバッグを生産し、日本への売り込み開始。飛び込みで販路を開拓していきました。  マザーハウスのバッグには、多くの人の胸を打たずにはおかない情熱と夢、苦難と戦いの物語が詰まっています。山口さんの「真の国際貢献を」という高い理想にひかれて、バッグを買うファンも少なくありません。けれども、そんな「物語」をまったく知らずに買いにくる人が増えているといいます。バッグそのものの魅力にひかれて。  発展途上国との商取引には「フェアトレード」という言葉がしばしば取り上げられます。貧しい人々の生活向上にふさわしい価格を、ということですが、時に消費者が「かわいそうだから、割高でも買ってあげる」行為になりがちなのも事実です。山口さんはこの「かわいそう」型フェアトレードに疑問を感じ、お互いにとって「良いモノ」を、追求し続けてきました。  マザーハウスは現在東京、大阪、福岡に直営店を設けています。今年の9月末、「Maitighar(マイティガル)」という、ネパール伝統のダッカ織りを生かした、フェミニンで機能的なバッグや小物など、働く女性向けの新ブランドを発表。10月1日には、山口さんの新しい著書「裸でも生きる2 Keep Walking 私は歩き続ける」も発売されました。生い立ちから、ブランド創設までの壮絶なストーリーで話題を呼んだベストセラー「裸でも生きる」シリーズの第2弾で、バングラデシュから2か国目ネパールへの挑戦ストーリーが書かれています。  山口さんが図らずも紡ぐことになった波瀾万丈の「物語」は、多くのマザーハウスファンを生み出す原動力となりました。感動物語が先行することに、疑問に思う人もいるかもしれません。しかし値段も決して安くはないバッグ。物語があろうと、モノに満足しなければ顧客は離れていきます。本当に「フェア」なトレードで、生産者にとっても消費者にとっても、「良いモノ」とは一体何なのでしょう? 山口さんの行動は、途上国だけでなく、日本の消費者にも考えるきっかけを与えたのではないでしょうか。(コイシ/mixiニューススタッフ) ■参考文献: 山口絵理子「裸でも生きる 25歳女性起業家の号泣戦記」講談社2007年 山口絵理子「裸でも生きる2 Keep Walking 私は歩き続ける」講談社2009年 ■関連サイト: マザーハウスHP  http://www.mother-house.jp/ 【よりミクとは?】ちょっと気になるあの話題、巷でウワサのあの商品をニューススタッフが調査し、コラムにしてお届けします。「より道」感覚で、ニュースとはひと味違うコンテンツをお楽しみください。

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