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よく最近耳にする「発達障害」という言葉。
「発達障害」の特性は“強み”になる! 実例に見る、子どもの個性をありのまま伸ばす方法
実際に自分の子どもが発達障害かもしれない……と考えたことがあるママは、きっとその言葉について少なからず調べた経験があるはず。
しかし、自分の家の子どもに対してはそんな疑いを持ったことのないママにとっては、実際、発達障害がどういったものなのか未知の世界なのではないでしょうか?
今回は、『基本から理解したい人のための 子どもの発達障害と支援のしかたがわかる本』の著者である西永堅さんにインタビュー。
もし子どものお友達が発達障害だったらどう接するべきか、またそもそも発達障害とはどういったものなのか、についてお聞きしました。
■「発達障害」という言葉、よく聞くようになったのはなぜ?
ーー近年、発達障害という言葉をよく耳にしますが、そもそも発達障害とはどういった子のことをいうのでしょうか?
西永堅さん(以下、西永)「発達障害とは、生まれた時にはっきりとわかる障害とはちょっと違うんです。
生まれてすぐに発覚する障害というものは比較的障害の度合いが重いものが多いのですが、発達障害はそういった障害だけではなく、生まれた時はみんなと同じに見えたのに、年齢を重ねることでだんだんみんなと同じことができなくなる場合も指します。
例えば、ADHD(注意欠如多動症)の子なども、一見すると特に障害を持っているようには見えない子が多いのです。」
ーーそうなると、普通にクラスの中に発達障害の子がいる可能性も高いということですよね?
西永「そうですね、我々が子どもの頃にも同じクラスに発達障害の子がいた可能性は高いですね。そして、今後はもっと発達障害の子というのは増えていくと思いますよ。」
ーーそうなんですか! やはり発達障害という言葉を耳にする機会が多いということは、そういった子が今どんどん増えてきているということなんでしょうか?
西永「これは専門家の中でも意見が分かれるところなのですが……。
もし本当に発達障害の子や大人が昔より増えているとすれば、ADHDなどの子も増えているということなので、注意欠如や多動による交通事故なども増えているはずなんですよ。
しかし、以前に比べて交通事故件数などは減ってきているという現実を考えると、”発達障害の子が絶対的に増えている”というよりは、”障害というものの範囲が広がってきている”ということではないかなと考えています。もちろん自動車の性能が上がったり、交通教育の成果もあるとは思いますが。でも、それはむしろ教育や環境でカバーできるということを意味しているとも思います。
先ほど『今後はもっと発達障害の子が増える』と言いましたが、これは単純に発達障害の子が多くなるということではなく、発達障害と診断される子が増える、という意味ですね。」
■発達障害はみんなと同じにできない原因ではなく、結果と考えるべし
ーーなるほど。つまり、子育て世代が子どもの時代にあまり発達障害という言葉を聞かなかったのは、発達障害の子が少なかったというよりは、今だったら発達障害と診断される可能性のある子はいても、それに診断名がつかなかったということなんですね。
西永「そうですね。僕はそう考えています。
というのも現在統計で発達障害の子の割合が数字で出ていて、平均するとクラスの6.5%が発達障害の可能性があって特別な教育的支援を必要とする子であるといわれています。
しかし、小学校1年生のクラスにおける発達障害の子の割合は9.8%なのですが、中学校3年生になると3.2%まで下がるのです。
もしも、生まれもった障害であるならば、この平均値が下がっていくのってちょっと違和感がありますよね。
つまり僕は、『障害があるからみんなと同じようにできない』ではなくて『みんなと同じようにできないから障害と言われる』。発達障害というのは原因ではなく結果だと思っています。」
ーーたしかに、年齢が上がるにつれて自然と落ち着いてくる子も結構いますよね。
西永「例えば、学校がその年齢の子に教えている勉強内容についていけなかったりして、勉強がつまらない、だから教室を立ち歩いたり、他の子に話しかけたりして、結果、ADHDと診断されてしまうという場合もあると考えています。
人間って、本人に課せられた課題が合っていないと上手に発達できないんですよ。
僕は、発達障害の子が特別なわけではなくて、個々の発達ってみんなそれぞれ違うと思うんですよ。ただそれだけって思っていて。
世の中においていわゆる”勝ち組”的な人って、実は日本の教育カリキュラムがその人の発達にたまたま合致しただけなんですよね。」
■普通の子から見ると発達障害の子はどのように映る?
ーーいわゆる”普通の子”というのはたまたま学校の教育方針にその子が合っていただけ、ってとこですね。ちなみに、そういった普通の子から見ると、発達障害の子というのはどのように映るのでしょうか?
西永「実は本当に小さな頃というのは、発達障害だろうと分け隔てなく仲良く遊んでいたりするものなのですが、だいたい男女が分かれて遊ぶようになる9歳頃から、『あれ?なんかこの子違うな』という見方をしたりということがあります。
一例ですが、発達障害の子はお友達に乱暴をしてしまったり、順番や時間を守らなかったり、という部分が現れることで、お友達との間に溝ができてしまったりということもあるようですね。」
ーーしかし、障害は結果、と考えると発達障害の子のそういった行動にも理由があるわけですよね。
西永「そうですね、例えばお友達に乱暴してしまうのは、うまく言葉が出てこなかったりすることからの行動ですし、順番や時間を守らないことに関していえば、そもそも時間や順番の概念がまだ身についていないという理由があると思います。
同じようなことを発達障害があるとは言われていない子ができていたとして、発達障害の子は個々の発達の問題で、まだその行動をする理由が理解できていないからですね。」
■もしもお友達に発達障害の子がいたらどう接すればいい?
ーーもしクラスの中にそういった発達障害の子がいる場合、トラブルになったりすることもあると思いますが、普通の子の親の立場から発達障害の子に対する接し方について、子どもに伝えておくべきことはありますでしょうか?
西永「発達障害の子というのは個々の発達の問題でできないことがあるという場合が多いので、モデルになるような子がいれば、真似をして色々覚えることもできるんです。
なので、親が子どもに発達障害の子との接し方についてわかりやすいヒントをあげると良いですよね。その子の発達に合わせた遊びを取り入れるとか。
子どもはモノマネが上手なので、『真似してみよう!』のような遊びも良いと思います。
あとは、やはり『その子は障害があるから』という見方ではなくて、まだこのようにしなければいけない理由がわからないだけだということも教えてあげてほしいですね。
先ほども言ったように、発達障害は原因ではなく結果による診断なので。発達障害と診断されていても高校や大学でグンと伸びる子もたくさんいますし。
支援する側の子にしても、人に何かを教えたりすることによって自分の能力が伸びたりすることもありますし、お互いに発達を引き上げていくという観点が必要かなと思います。」
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「発達障害」と診断名を告げられることで、本人や家族、周囲も戸惑ってしまうことも多いはず。
しかし、発達障害だからできないのではなく、今はできないから発達障害と言われる、そう考えれば、発達障害を抱える本人や家族はもちろん、普段接している周囲の子どもやその家族もまた違った観点から関係を築くことができるのではないでしょうか?
今回インタビューした西永堅さんの著書『基本から理解したい人のための 子どもの発達障害と支援のしかたがわかる本』は、今までとは違う観点で発達障害を理解できる目からウロコな一冊です。