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旅人マリーシャの世界一周紀行:第186回「ラマダン開始! 男だらけの国・クウェートで禁欲中の“迷える旅人”」

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2018年06月14日 16:22  週プレNEWS

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写真クウェートのスーク街で見つけた壁。クウェート旅の中で一番お気に入り
クウェートのスーク街で見つけた壁。クウェート旅の中で一番お気に入り

ドバイの居心地が良くなってきて、こりゃ延泊決定だなと思ったら、あらま。その日の宿は満員だとさ。

これは神様のお告げだなと、別の国へ出かけることにした。

「そうだ、クウェート行こう」

私の頭の中には、かの有名なJR東海のCM曲の代わりに、アザーン(イスラム教の礼拝の呼びかけ)が流れ始めた。

クウェートは厳格なイスラム国のひとつで、ここもまたオイルマネーで潤ったリッチな国ではあるが、見どころはあまりない。ドバイからは空路となり、交通費が高くつく上に安宿などなく、ホテル宿泊しか選択肢がないのは旅人にはツライとこ。宿で出会った多国籍な旅友たちにも「何しにいくの? なんで行くの?」とめちゃめちゃ不思議がられた。

旅人があまり訪れないということは、つまり情報も少ない。唯一、手に入った情報といえば、“もしかしたら安宿があるかもしれない”ということと、厳格なイスラム国であるため街中で女性がひとりで歩いていることなどないという、男だらけの国”だってこと。

さらに、この日をきっかけにラマダン(イスラム教における聖なる月)がスタート。世界中のイスラム教徒は日没まで一切の欲を禁じなければならず、飲み食いもしてはいけない“禁欲月間”! そんなところへ飛び込んでしまって、果たして大丈夫だろうか?

「なんか怖くなってきた。やっぱり、行くのやめようかな…

勢いで航空券を買ってしまったが、後から緊張がこみ上げ、ご飯も喉を通らない。私の身体は確かに出発を拒んでいたが、迷っているうちに出発の時間は来てしまった。

覚悟を決めた私はドバイの空港から真っ黒の洋服に身を包み、黒いショール(友人の結婚式の時に肩にかけていたやつ)を頭に巻いて、せめてそれらしい格好をすることに努めた。

この時は怖くて仕方がないという気持ちが80%、未知の国へ向かうワクワクが20%。恐怖と好奇心が混ざり合ったおかしな感覚であったが、そんな私の緊張を解いてくれたのは、今回搭乗するエミレーツ航空

数々の飛行機に乗ってきた中でも一番好きな航空会社で、CAさんは美人でコスチュームもオシャレ! エコノミーでもゆとりのある座席に思わずテンションが上がる。深夜便だったし、明日からは精神力も体力も使うだろうから機内で睡眠をとろうと思っていたのだが、最新の映画も揃っていたためにまさかの映画鑑賞に現(うつつ)を抜かしてしまった。

そしてクウェートの空港に着くと、そこは思ったよりも大きな空港で快適。椅子もズラっと並んでいて電源もあるので、私はスマホを充電しながら朝が来るまで眠りこけた。

そして朝が来た――。空港を出るのは怖かったが、アライバルビザの手続きをしたら、すぐに市内行きのバスがあったので飛び乗り、いよいよラマダン中のクウェートの旅の始まりだ。

朝9時、街は男性どころか人の気配のないゴーストタウン

クウェートは金土が休日なので木曜日に滑り込み、グランドモスクを見学しようと目論んでいたのだが、警備員さんが「ラマダン開始で今日はお休みだよ!」だって。ただでさえ見るものがないのに…残念。

仕方がないので、今度は安宿探しだ。

古いガイドブックに載っていた住所が曖昧(あいまい)な安宿を探し、外国人労働者が多く生活するというスーク(商業地区)の中をウロウロ。ポツポツと店が開店し始めたそこには、確かに男性ばかりで女性の姿は見当たらない。

ラマダン開始で空腹なのか暇なのか、ボーっとベンチに座っているおじさんや、半畳くらいの絨毯を敷いてお祈りをしている人など、私のことはチラっと横目で見てくる程度であった。

そんな中、恐る恐る、宿について聞くと、目星をつけていた安宿はとっくに閉店していたらしく、ホテルのある町の中心へ行けと勧められた。

「仕方ない。宿代は節約できそうにないから交通費を節約。ホテルまで歩こう…」

安宿は見つからなかったけれど、大きな収穫があった。スークの周りをウロウロしていると、落書きされた大きな壁を見つけた。

青空をバッグに白い大きな壁、そこにはペルシャ文字やアラブ系の人物像がポップに描かれていて、なんだかとても素敵なアートだった。後にも先にもクウェートの中でここが一番、私がこの国で気に入った場所だ。

さらにウロつくと、マクドナルドの傍に何やらインスタ映えするオシャレカフェが集まるスポットを見つけた。ラマダン中で店はもちろん全て閉店していたので、自由気ままにひとり撮影に挑んだ。

「私はクウェートまで来て何をしているんだろう」という気にもなったが、思いがけずこの国の意外な一面を見つけたことで、またちょっと緊張が解けた。

それにしても、その日は40度以上あるのではないだろうか。日差しが容赦なく旅人を照らす。

足をスッポリ隠したヒートテックレギンスの効果は絶大で、暑くて仕方がないが脱ぐこともできず、私は7km先のホテルまで歩き始めた。

「無事辿り着くか、途中で倒れるかのどっちかだ…」

実はここまでの間、私は水一滴すら口にしていない。

というのも、“郷に入っては郷に従え”だろうと、また尊敬の意も込めて、私もラマダンに挑戦していたからだ。機内で貰ったお水をひとつバッグに忍ばせていたが、それに口を付けるのは日没になってからと決めていた。

熱中症になりそうだ…(ていうか、もうなってる?)」

フラフラになりながら、フィッシュマーケットに辿り着くと、バングラデシュ人やイラン人などが果物や生活雑貨を売っていた。「アラビア語はできる?」と聞かれたがもちろんできるわけがなく、私に近寄ってくるのは猫だけ。この世で友達は猫だけとなった気分だった。

特に休憩もできず、引き続き、炎天下を歩き始めたがさすがに頭がガンガンしてきた。

だいぶ歩いたが、ついには道も途切れてしまったため、残り2kmはスリランカ人のおっちゃんの運転するタクシーに乗り、インド人の経営する1泊5千円ほどのホテルにやっと到着。全く言葉が通じないアラブ人男性より、英語ができる海外労働者に会って、やっと人と話せた。

「疲れたな…」

本日の日没まであと1時間。せっかくここまで頑張ったのだからとラマダンをやり遂げて、その後、やっと機内でもらった水に口をつけた。

「これが命の水というやつか…!」

今まで、人生で飲んだ水の中で一番“水”の価値を感じた気がする。

そして、ホテルの窓から外の様子を覗くと、日没とともに多くの男性がスーパーの袋を持って現れ始めた。暗くなる前に私も急いでスーパーへ向かうと、買物しているのもまた男性ばかり。

急いでベビーリーフとツナ缶を買って帰り、食器がなかったので手で掴んでむさぼり食った。質素であるがファスティング(断食)していたのですぐにお腹がいっぱい。

やっと落ち着くことができ、再び窓から外を眺めていると、そこにはイフタール(ラマダン明けの夕飯)を食べに、カンドゥーラ姿の男性たちがモスクへ集まる光景が。1時間後には女性と子供も集まっていたが、家で夕飯を済ませてから合流しているらしく、モスクでのイフタールは基本的には男性のみの場のようだ。

“男だらけ”のクウェートを、そっと窓から覗くだけの旅。

「私は何故、ここにいるんだろう。ここで何をしているのだろうか…」

そんなことを思いながら、気絶するように眠りについた。

【This week’s BLUE】 道路や街並みは整然としていて、オイルマネーでの潤いを感じる高層ビルもニョキニョキと。

★旅人マリーシャの世界一周紀行:第187回「アバヤで顔を隠した“にわかムスリムガール”は、イミグレを通過できる?」

●旅人マリーシャ 平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。スカパーFOXテレビにてH.I.S.のCMに出演中! バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】

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