『エール』が革新的な朝ドラとなる3つの要素 『いだてん』のアナザーストーリーの一面も

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2020年03月30日 08:21  リアルサウンド

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写真『エール』写真提供=NHK
『エール』写真提供=NHK

 新しい連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『エール』(NHK総合)が、本日3月30日より始まった。


参考:窪田正孝が明かす、『エール』モデル・古関裕而とのシンクロ 「“愛情”を皆さんに届ける半年間に」


 本作は「栄冠は君に耀く」(全国高等学校野球選手権大会の歌)、「六甲おろし」(阪神タイガースの歌)、「闘魂こめて」(巨人軍の歌)といったスポーツの歌や、「長崎の鐘」「イヨマンテの夜」など様々な歌謡曲のヒット曲を生み出した作曲家・古関裕而をヒントに造形された青年・古山裕一(窪田正孝)と妻の音(二階堂ふみ)の物語だ。


 ドラマは紀元前1億年前から始まる。いわゆる原始時代がコメディ仕立てで描かれるのだが、それ以上に驚くのは、台詞ではなくテロップで「音楽とは何か」ということが延々と語られること。そして、イメージショットのようなシーンが続いた後、1964年の東京オリンピックの場面となるのだが、試写でこの第1話を観た時は、大胆な朝ドラだなと思った。


 そして、第2話から大正時代へと舞台が遡り、裕一の幼少期(石田星空)が描かれるのだが、本作には今までの朝ドラにはない新しい試みが多数ある。


●初の4K朝ドラ


 まず注目すべきは本作が4K映像で撮影された初の朝ドラだということだろう。現在放送中のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』が4Kでフル撮影された大河ドラマとして話題になっているが、本作も画面の色使いが鮮やかで、今までとは違う手触りがある。


 映像の精度が高く、細かいところまで映りすぎるからこそ、建物や着物といった細部のディテールには力が注がれており、映像作品として見るべきところが多い。今後、4K映像がテレビドラマにどう馴染んでいくかを知る上で、大きなテストケースとなるのではないかと思う。大規模なロケが多く、カット数が多いことも注目だ。


 第1週を担当したチーフ演出の吉田照幸は、NHKで『サラリーマンNEO』や『となりのシムラ』といったドラマテイストのコント・バラエティを演出し、朝ドラでは『あまちゃん』に参加している。その意味で第1話のドタバタとしたバラエティ感は、吉田ならではと言え、演出の占める割合がかなり高い朝ドラだと感じた。


●話数短縮がもたらす演出の変化


 次に話数の短縮。今回の朝ドラは月〜金の週5日の放送となっている(土曜日は一週間のの放送振り返り)。これは働き方改革を意識しての変化だが、少なくともこの第1週に関しては、とてもテンポの良い展開になっており、良い方向に働いていると感じた。


●内気な男性主人公の珍しさ


 最後に一番興味深いのは、男性主人公の物語だということ。もちろん近年では『マッサン』もあり、男性主人公の朝ドラが初めてというわけではないのだが、おとなしい男の子の成長を、幼少期から丁寧に描く試みは、朝ドラに限らずテレビドラマでは珍しい試みではないかと思う。


 主人公の古山裕一は老舗呉服屋の息子という豊かな生まれだが、人とのコミュニケーションが苦手。だからこそ音楽の才能が開花し、会話ではなく音楽という表現で、社会とのつながりを獲得していく。この第1週は、学校でいじめられていた裕一が音楽と出会い、音楽を通して世界が広がっていく発端が丁寧に描かれているのだが、幼少期から行動的な主人公(朝ドラヒロイン)が多い朝ドラではめずらしい主人公像で、こういう引きこもりタイプの少年を主人公に朝ドラが作られる時代になったのだなと、嬉しく思った。


 面白いのはこの3つの要素(演出主導、話数短縮、内気な男性主人公)が有機的に絡み合っていること。基本的に朝ドラは、明るく前向きな女性を主人公に、脚本主導で物語が展開されてきた。


 そのため会話劇が中心で、物語の起伏もゆったりとしたものだった。これは週6日、半年の放送という長尺に対応する形で生まれた朝ドラの基本形態だ。それゆえスケジュールに余裕がなくなると、家や喫茶店といった密室での会話劇ばかりになってしまうという弱点を抱えていたのだが、『エール』は話数が少なく、会話が苦手な主人公が一人で考え込む場面が多いからこそ、撮影やレイアウトに凝っており、演出の遊びも多い。


 もちろん、朝ドラはスケジュールとの戦いであるため、この演出主導の世界観が、後半まで持続できるかはまだわからないが、これを最後までやりきることができれば、朝ドラの新境地となるのではないかと期待している。


 福島県出身で「東京オリンピックマーチ」を作曲した古関裕而をヒントに造形された古山裕一を主人公にして、1964年の東京オリンピックをクライマックスに添えた物語である『エール』は、東日本大震災からの復興五輪と言われる2020年の東京オリンピックの年にふさわしい朝ドラとして企画されたのだろう。その意味で、昨年のNHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』を観ていた方なら、『いだてん』の“アナザーストーリー”としても楽しめる。


 それだけに新型コロナウイルスの世界的流行の影響で、東京オリンピックが延期となってしまったことは大変残念だが、エール(応援)というテーマはまったく色褪せていない。むしろこういう時代だからこそ人々を励ましてくれる朝ドラとなるのではないかと思う。そう感じさせてくれた第1週である。(成馬零一)


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  • 全編アバンタイトル…初回のあまりのハズしっぷりに目を覆いたくなった。悪ノリ演出はノイズだけれど、ドラマ内容は良さそうなので、土曜日だけ見ますわ
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