顔認識でそっくりさん絵画を探すグーグルアプリ

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2018年02月14日 17:02  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<顔認証を応用した遊び心で大人気に――だがプライバシーや差別問題への懸念も>


最近、インターネットで大きな話題となっているのが、グーグルによる美術作品鑑賞アプリ「グーグル・アーツ&カルチャー」だ。アプリ自体は2016年に発表されたものだが、世界1200カ所以上の美術館の収蔵作品からユーザーとそっくりな顔を探し出すという機能を新たに搭載、人気が爆発した(ただしこの機能を利用できるのは現在、アメリカ国内の一部のみ)。


手順はスマートフォンで自撮りをして、画像をアップロードするだけ。すると写真を解析・検索し、似ている(とされる)顔の絵を提示してくれる。


このアプリに使われているような顔認識のソフトウエアは顔のパーツや目立つ部分を分析し、指紋ならぬ「顔紋」を導き出す。これを支えているのは、人工知能(AI)を使ってコンピューターが自力で新しい情報を学び取る機械学習の技術だ。


テクノロジー企業による顔認識技術の応用はいろいろあるが、今回のグーグルのアプリはそれを美術に親しむ手段として活用した好例だ。その一方で、顔写真を使うことによるプライバシーの問題を懸念する声も一部で上がっている。


グーグルによれば、アップロードされた自撮り写真が機械学習プログラムの訓練やデータベースの構築など他の目的に使われることはない。だが大量の顔データが目的外使用されることは本当にないのか。ツイッター上でも「監視国家による顔認識の前段階だ」とか「グーグル・アーツ&カルチャーのユーザーさんたち、おめでとう。国家安全保障局(NSA)の顔認識データベース入りしたぞ」といった声が聞かれる。


一方でこのアプリには人種差別的な問題点への指摘もある。有色人種のユーザーがこのアプリを使うと、かつて白人の画家たちが有色人種の人々を描く際に使った奴隷や使用人といったお決まりの表現手法の作品ばかりが出てくるのだ。


もっとも、照合の対象が欧州中心の美術作品が集まったデータベースである以上、仕方ないとの見方もメディアからは出ている。女性についても同じことが言え、性的な特徴を強調した女性像のオンパレードになりがちだ。


顔認識ソフトに、人種の違いに基づく識別方法を教えるかどうかも問題だ。正確性は向上するかもしれないが、人種差別的なものになってしまう可能性がある。


こうした困った問題を抱えつつも、人々は本アプリが見つけ出した「そっくり絵画」をせっせとSNSに投稿している。プライバシーへの懸念を語ったツイッターのユーザーはこうも述べている。SNSで皆に認めてもらいたいから、結局は使ってしまう、と......。


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[2018.2.13号掲載]


カスタリア・メドラノ


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