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「ぶさいく村」の住人だった鴻上尚史が明かす“容姿”がもたらす絶望と希望

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2018年10月23日 16:02  AERA dot.

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写真作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします(撮影/写真部・小山幸佑)
作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします(撮影/写真部・小山幸佑)
 鴻上尚史の人生相談。「10キロ太ったら、突然周囲の男性たちの態度がかわりました」と戸惑う相談者。鴻上尚史が答えた「容姿でジャッジされる理不尽」さと「人間の価値」とは?

【相談9】「結局女は容姿が10割でしょうか」(相談者:25歳 女性 セシル)

 3カ月前に、足を骨折して体を動かさない間に、10キロ太ってしまいました。

 足は治りましたが、すごくびっくりしたのは、周囲の男性たちの態度のかわりようです。

 私はもともとの容姿に恵まれていたと思います。会社でもよく男性に話しかけられ、段ボールを持っていれば誰かが持ってくれたし、なにかとランチにも飲み会にもデートにもよく誘われていました。つまり、モテていました。でも、10キロ太ったら、本当にわかりやすく男性が話しかけてくれる回数が減りました。ランチも飲み会のお誘いもデートもめっきり減りました。私はこれからダイエットして元に戻るつもりです。今までどんなに得していたか身にしみてわかったからです。でも、これでまた元の容姿になってモテたとしても、そのまま恋人をつくっていいのか、不安になりました。

 だって、私の中身じゃなくて、私の容姿に惹かれた人とつきあって結婚したとして、いつかは私も老けます。そしたら、愛情はなくなるということですよね。

 姉に言ったら「バカだなあ、ミツバチはきれいな花に集まるにきまっているでしょ、婚期を逃す前にさっさとダイエットしなよ」と返されましたが、なんだか気持ちが晴れません。

 結局女は容姿が10割でしょうか。ダイエットしようと思いながら、モヤモヤしてます。

【鴻上さんの回答】
 そうですか。セシルさんは、10キロ太ることで、人生の大切な疑問と出会ったのですね。それは、ズバリ言えば「人間の価値とは何か?」ということですね。

 困難な状況とかトラブルにあうことで、問題の本質が見えてくることってありますからね。

 僕は英語が不得意なまま、イギリスに留学しました。言葉がうまく通じない毎日で、いきなり「言葉とは何か?」とか「日本語とは何か?」という疑問にぶつかりました。ふだん、当たり前に使っている言葉が使えなくなると、「どうして私は言葉を使っているんだろう」「言葉の役割とはなんだろう?」「不自由な言葉でも使う意味はあるんだろうか?」と、言葉そのものに対して深く考えるようになるのです。

 一番、悔しかったのは、英語がうまく使えないと、「中身」まで劣等であると判断されたことです。日本語でなら、簡単に複雑なことを言えるのに、英語で稚拙(ちせつ)な説明しかできないと、イギリスのクラスメイトは、中身まで幼稚な人間だとみなしました。それが、どんなに辛く歯がゆかったか。

 さて、セシルさん。「結局女は容姿が10割でしょうか」というセシルさんの相談に答える前に、まず、僕が質問します。

 セシルさんにとって、男の容姿は何割ですか? 男性の容姿は全然、気にしませんか? 眼の前に、ぶさいくとイケメンがいたとして、容姿は恋に落ちることとまったく関係ないですか? それとも、やっぱり、イケメンの方がいいですか?

 セシルさんは、「私はもともとの容姿に恵まれていたと思います」と、正直に書かれたように、10キロ痩せていた時は、間違いなく「美人村」の住人でした。

 それが、一時的に10キロ太ったことによって、僕の故郷「ぶさいく村」に引っ越したのです。

 すると、何が起こるのか?

 容姿によって「中身」が判断されるという、恐ろしい現実とぶつかるのです。

 10キロ痩せて「美人村」にいた時と、10キロ太って「ぶさいく村」にいた時と、「中身」に違いはありません。

 わずか3カ月の違いですから、この間に、セシルさんの「中身」がものすごくいじわるになったり、バカになったわけではありません。

 なのに、こんなに周りの反応が違うことが、セシルさんは納得できないのですよね。私の本質はなにも変わっていない。ただ、容姿が10キロ太っただけなのに、と。

 でもね、セシルさん。セシルさんが、そう思うのは、セシルさんが、まぎれもなく「美人村」の住人だからです。

「ぶさいく村」の住人には、こんなことは当たり前のことなのです。

 僕は、容姿によって中身が判断される、つまり「結局男は容姿なんだ」という衝撃の現実に19歳の時に気付きました。

 僕の顔を知る人には信じられないかもしれませんが、僕は18歳までは自分が「イケメン村」の人間だと思っていました。高校までは、クラス委員をしたり、演劇部の部長やったり、生徒会長したりしてましたから、なんとなくモテていました。

 同時に、ずっと一人の人に片思いしていたので、多くの人にモテるかどうか、たいして関心がありませんでした。ですから、それなりにモテると思い込んでいたのです。

 それが、大学に入り、「合コン」というものを初めてしました。今でもはっきり覚えています。レストランで、6対6でした。僕は間違いなく面白いことを話している自信がありました。

 でも、目の前に並ぶ女性達は、みんな別の方角を見ていました。その視線の先を探ると、イケメン君がいました。6人のうち、2人が「イケメン村」の中央広場の住人でした。あと1人が、「イケメン村」の村外れに住んでいました。残り3人が、「ぶさいく村」の住人で、2人は「イケメン村」との村境の水車小屋に住んでいました。「ぶさいく村」の中央広場で生活しているのが、僕でした。

 どんなに話しても、女性たちの視線は動きませんでした。ただ、イケメン村の中央広場の住人を見つめていました。

 その衝撃の体験から、自分が「ぶさいく村」の村人だとはっきりと自覚し、それがどんなに不利なことなのか身に沁(し)みて分かるまでに、そんなに時間はかかりませんでした。

 そこから、僕は「ぶさいく村恋愛対象地区」に強引に引っ越しするために、たくさんの本を読み、トーク力を磨いたりしたのですが、それは別の話。

 自分が「ぶさいく村」の住人だと自覚して、よかったことがあります。それは、「人を容姿だけで判断することの危険と理不尽さ」を知ったことです。

 容姿だけでジャッジされる理不尽さを知ると、自分もまた、他人を容姿だけでジャッジしていた恐ろしさに気付くのです。

「美人村」や「イケメン村」に無自覚に住んでいると、このことになかなか気付かないと思います。

 なぜなら、容姿でマイナスにジャッジされて、中身までマイナスに判断されることは、まずないからです。ほとんどは、プラスにジャッジされ、中身もプラスに評価された経験のはずです。もちろん、「イケメンなのに(美人なのに)そんなことするんだ」という、容姿の美しさが、中身の評価を厳しくすることもありますが、とんでもない行動や発言を慎めば、こう言われることは少なくなります。

「美人村」のセシルさんもまた、容姿によってマイナスにジャッジされるという経験をしたことがなかったと思います。そして、容姿がひどいから、中身もたいしたことがないんだろうと判断されたこともなかったでしょう。

 ですから、10キロ太るまでは、「容姿」と「中身」の評価のアンバランスさに悩むこともなかったのです。

 でも、「ぶさいく村」の住人は違います。ずっと、「容姿」と「中身」をイコールとされるアンバランスさ、理不尽さと戦ってきました。

「合コン」の時、「ぶさいく村」の僕が語る面白い話を女の子達は無視し、「イケメン村」の友人が語る凡庸(ぼんよう)な話を喜びました。

 僕および「ぶさいく村」の村仲間は、何度、その理不尽さに悔し涙を流したか。

 英語しか話せない人間は、言葉がつたないイコール中身がないと判断すると書きました。けれど、母国語以外の言葉で苦労したことがある人間は、言葉の下手さだけで中身をジャッジしません。英語が母国語で、英語しか知らず、世界中が英語を話すのが当然だと思い込んでいる人達だけが、英語がつたない人間に対して思い上がった反応を見せます。その姿に、何度、悔し涙を流したか。いえ、違う話ですが。

 でね、セシルさん。もちろん、セシルさんも僕もみんなも、美しいものが好きです。よっぽど屈折した趣味の人でない限り、汚いものよりは美しいものを愛でるはずです。

 でも、「あなたは美しい」ということと「あなたは人間として素晴らしい」はまったく別です。

 当たり前のことですが、多くの人は時々、忘れます。

 美人でいじわるとか、イケメンでバカとか、普通にいます。ぶさいくでバカや不潔がいるのと同じです。

 でも、容姿が美しい人を見ると、中身まで素晴らしいと思い込みがちになります。

 でもね、「ぶさいく村」の中央広場に住む人間は間違いません。だって、「容姿」と「中身」はイコールではないんだと、魂にまで刻んでいるからです。

 だから「ぶさいく村」の多くの村人は、女性をジャッジする時に、「結局女は容姿が10割」ではなくなるのです。もちろん、美しいものをみんな好きですから、8割の人も4割の人もいるかもしれませんが、「あの人は、美人だけど、待てよ。性格がものすごく悪そうだぞ」とか「すっごく可愛いけど、ただのバカだぞ。歳とって、『可愛くってバカ』が、『ただのバカ』になるぞ」と見抜くことができるようになるのです。

 同時に「『結局男は容姿が10割』とは限らないぞ。もちろん、10割だと思っている女性もいるだろうけど、さまざまな割合の人がいるぞ。なかには中身10割、外見0割って思ってる女性もいるぞ」なんて、ちゃんと分析できるようになるのです。

 ですから、セシルさん。あなたは10キロ太ることによって、人生の知恵の扉を開けたのです。それは、「あなた自身が恋する相手を選ぶ時に、『容姿を何割』で選ぶか」という問いと出会ったということです。同時に、あなたを好きになってくれた人が、「容姿が何割」であなたに好意を持っただろうかという疑問と出会ったということです。

 この知恵の扉は、「美人村」「イケメン村」に無自覚に住んでいる人には見えません。

 けれど、やがて、歳を取り、かつての美しさが終わり、「美人村」や「イケメン村」から強制的に退去しないといけなくなった時に見えてきます。

 この扉を開けた奥には、「あなたから容姿を取ったら、どんな中身が残りますか?」という自分自身への問いかけが書かれています。

『サンセット大通り』という名作の古典映画をご存じですか? かつての大女優が、年齢と共に美貌が衰え、仕事がどんどんなくなっていく中、幻想の中に生きるようになっていく話です。美しさがなくなった時、自分自身に何も残ってないことを、彼女は認めることができなかったのです。

 美しければ美しいほど、イケメンであればイケメンであるほど、周りは勝手に「中身」も素晴らしいと思い込みます。または、「中身」を問題にしません。それだけで、充分だと思われて、モテます。

 結果的に、「美人村」「イケメン村」に無自覚に住んでいると、「中身」を意識的に磨こうという努力も気持ちも生まれなくなります。昔、僕はエッセーで「モデルは本を読む時間がない。今日こそは本を読もうと思っても、すぐにデートや食事の誘いのメールや電話が来る。だから、本を読まない。読む活字は、ファッション雑誌のメイクと服装に関する部分だけ」と書きました。

 二十代の時、容姿10割、中身0割のモデルさんとデートして、発見したことでした。

 セシルさんは、「私の中身じゃなくて、私の容姿に惹かれた人とつきあって結婚したとして、いつかは私も老けます。そしたら、愛情はなくなるということですよね」と書きました。10キロ太って、一時的にぶさいく村に引っ越したからこその気付きです。もし、ずっと「美人村」に住んでいたら、美しさを失うまで気付くことはなかったでしょう。

 ですから、セシルさん。10キロ痩せて、「美人村」に里帰りした後は、中身をうんと磨いて人間的に豊かな人になって下さい。たくさん本を読んだり、仕事に生きがいを見いだしたりして、容姿につりあう素敵な中身になることを勧めます。

 やがて、歳を取り、かつての美しさが失われたとしても、充実した「中身」があれば、『サンセット大通り』の女優のようになることはないのです。

 聡明なセシルさんなら、きっと大丈夫。中身を磨いていけば、言い寄ってくる男の中身も見抜けるようになります。「容姿10割」で近づく男を判断できるようになるのです。

【おすすめ記事】「そこそこ」なのにモテない相談者 鴻上尚史が解説する二つのモテない理由とその対策


このニュースに関するつぶやき

  • なんか色男組のリーダーみたいなこと言ってると思ったが違うみたい?(��)
    • イイネ!3
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  • かといって、外見に気を使わず「人間は中身だ」と言ってる奴は滑稽だと思う。最低限の身だしなみ、言葉遣いなどは必要じゃないかと思うぶさいく村の私はそう思うのです。
    • イイネ!642
    • コメント 18件

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