AbemaTVが菅官房長官と杉田水脈のヨイショ番組タレ流し! 取材はテレ朝政治部、放送法逃れの政権PR

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2019年05月05日 00:01  リテラ

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リテラ

AbemaTVにご満悦で登場した菅官房長官(『平成から令和へ 25時間テレビ』より)

 改元でお祭りムード一色のテレビや新聞。そんななかで、すっかり調子づいているのが菅義偉官房長官だ。この間も「令和おじさん」としてテレビで繰り返し紹介されてきたが、改元直前の4月30日にはAbemaTVに登場。特番『平成から令和へ 25時間テレビ』内でそのインタビュー内容がノーカット放送されたのだ。

 

 しかも、その内容は、菅官房長官と安倍政権のPR、ヨイショとしか思えないようなシロモノだった。



 たとえば、若者が「令和おじさん」と呼んでいる動画を菅官房長官にわざわざ見せたかと思えば、菅官房長官も「菅ちゃんだって(笑)」とニコニコ。新元号についても、インタビュアーを務めたテレ朝政治部長の伊井忠義氏は突っ込んだ話もせず、「会見のときはブルーのネクタイだった。何か思いを込めたのか」と質問をすると、菅官房長官は「私、拉致問題の担当大臣なので、その際には(拉致被害者救出運動のシンボルカラーである)ブルーだと決めていました」と回答。その流れで連休明けの訪米に話がおよぶと、菅官房長官はこう述べた。



「しっかりと拉致問題解決に向けての働きかけをおこなうのは当然のことだと思っていますし、同時に沖縄の基地負担軽減を担当しているので、そうしたことも含めて、この機会にトランプ大統領を支える責任者のみなさんにお会いして、しっかり訴えてこようという思いです」



 拉致問題は完全に「やってる感」の演出だけで進展もなく、沖縄の基地問題にいたっては民意を無視して工事を強行しつづけている。それでよく正義ヅラで「しっかり訴えてくる」などと言えるものだと唖然とするが、呆れたことに伊井政治部長はそうした問題をひとつも突っ込まず。



 それどころか、ほかの質問では「長官といえば、政策的には携帯料金値下げやビザ緩和、当たり前とされてきたことを変えようとチャレンジするのが長官の真骨頂」と言い出し、あたかも携帯料金問題やインバウンドの増加が菅官房長官の手柄であるかのようにヨイショをはじめる始末。すっかり気をよくした菅官房長官も、したり顔でこんなことを語った。



「国民から見て当たり前でないことを当たり前にするのが仕事だと思っていますので、そういう意味で官房長官には非常に大きな権力があります」



 その大きな権力を振るいに振るって、都合の悪い質問には答えず、不都合な記者をフェイクの主張で排除しようとさえしているのが「令和おじさん」の正体ではないか。そして、こうやって菅官房長官の“本来の姿”をメディアが覆い隠しつづけることで、薄気味悪い「令和おじさん」ブームなるものが生み出されてしまったのだ。



 よくもまあこんなPRインタビューを無批判に放送したものだと思うが、それもそのはずで、これを放送したのはAbemaTV。本サイトでもお伝えしたように、菅官房長官は昨年末にAbemaTV代表であるサイバーエージェントの藤田晋社長や幻冬舎の見城徹社長らと会食をおこなっている。そう。安倍首相のみならず菅官房長官もまた、以前からこうやって会食を繰り返すことで財界・マスコミ界での“親政権人脈”を固めてきた人物なのである。



 しかも、AbemaTVによる安倍政権ヨイショの例は、これだけではない。じつは、菅官房長官の独占インタビュー放送の2日前である4月28日にも、こんな番組が放送されたのだ。



●杉田水脈の禊ぎのために稲田朋美、LGBTとの対談番組をセッティング



「独占!杉田水脈議員と稲田朋美議員が新宿2丁目でLGBTの皆さんと対談」



 タイトルのとおり、「LGBTには生産性がない」発言をおこなった杉田議員が、稲田元防衛相とともにLGBT当事者と対談した模様を1時間にわたって放送したのである。



 言っておくが、杉田議員のあの論文は、「生産性」の箇所のみにとどまらず、LGBT当事者たちの「生きづらさ」の問題を“社会ではなく親の責任、自己責任”と言い放った上、〈LGBは性的嗜好の話〉とし、同性愛を“趣味の問題”だと断言。さらに同性愛者を〈不幸な人〉呼ばわりした挙げ句、〈「常識」や「普通であること」を見失っていく社会は「秩序」がなくなり、いずれ崩壊していくことにもなりかねません〉と主張するなど、“異性愛=常識、同性愛=異常”というあからさまな差別を展開したものだ。そうして国会議員が公然と差別を垂れ流す行為をおこなっておきながら、杉田議員はいまだに国民に向かって正式な説明はおろか、「生産性」という表現の撤回さえしていない。



 にもかかわらず、「LGBT当事者と新宿2丁目で対談」することで反省アピールにし、それを番組にしてしまうって……。正式な説明を放棄しておいてシラッと出てくる杉田議員も、PR番組をつくるAbemaTVも、どうかしているとしか言いようがない。その上、杉田議員は騒動を引き起こしたことに対して「ごめんなさいね」と言い、「家族が傷ついた」という意見に「ちゃんと受け止めないといけないと思っています」などと述べたが、結局、寄稿文に書き連ねた差別発言を明確には撤回、謝罪していないのだ。



 つまり、「LGBT当事者とも意見交換しましたよ」という模様を番組で流すことによって、禊ぎは済ませたことにしたいのだろう。実際、会場となった新宿2丁目のバーに行く道すがら、稲田元防衛相は杉田議員に向かって、こんなことを言っていたのだ。



「ずいぶん日も経ったし、自然に当事者の方々と話せたらいいなと。杉田さんは発信力があるし党内でも力になってもらいたい」



●テレ朝が露骨な政権PRを取材し放送法の及ばないAbemaで放送する手口



 ようするに、これはネトウヨ人気が高い杉田議員を“復活”させるための、安倍自民党によるPR番組ということではないか。



 このように菅官房長官に杉田議員と、立てつづけに安倍政権PRを垂れ流したAbemaTV。しかもタチが悪いのは、こうした政権PRを、AbemaTVの関連会社であるテレビ朝日も「ニュース」として放送していることだ。



 たとえば、杉田議員とLGBT当事者たちとの対談の模様は、4月27日の『スーパーJチャンネル』が「独自「自民党に物申す」当事者が 炎上の議員「ごめんなさい」」とテロップを打ち、ニュースのひとつとして紹介。菅官房長官の単独インタビューについても、4月30日の正午前に放送された『ANN NEWS』内で「菅官房長官に単独インタビュー 「令和」受け入れられ ほっと」と題して伝えられた。



 インターネット放送局のAbemaTVは放送法が適用されない。事実、AbemaTV は2017年の総選挙公示日2日前、見城社長がホストを務めている番組『徹の部屋』に安倍首相が生出演。安倍首相が思う存分、持論を展開し、見城社長も「日本の国は安倍さんじゃなきゃダメだ」「(独裁と呼ばれるのは)あまりにも実行力がありすぎるからだよ」「すごくハンサムですよ。内面が滲み出ているお顔ですよ」などと歯が浮くようなヨイショ発言を連発した“接待放送”を繰り広げた前例もある。



 総選挙公示直前に総理大臣が無批判のまま主張を繰り広げるなど、政治的公平性が求められる放送法が適用される民放の地上波では絶対にあり得ない。だが、それがAbemaTVならば可能なのである。だからこそ、安倍政権はAbemaTVを利用してPRを垂れ流させているのだ。



 そして、これはテレ朝も共犯だ。実際、菅官房長官の単独インタビューはANNの取材であり、インタビュアーはテレ朝の政治部長だった。杉田・稲田議員の番組も、取材をおこなったのはテレ朝政治部で与党担当の延増惇記者だ。



 つまり、テレ朝が政権や自民党幹部のPRをニュースとして扱い、放送法適用外のAbemaTVで完全版を放送する──。これはいわば「放送法ロンダリング」ではないか。



 テレ朝ではいま、『報道ステーション』から政権批判が薄れ、『大下容子ワイド!スクランブル』ではネトウヨ思考を隠さない小松靖アナのもと、政権擁護と反韓感情の煽動が繰り広げられ、『スーパーJチャンネル』でも政権に批判的だったコメンテーター大谷昭宏が降板になり「令和」発表時は安倍首相を生出演させるなど、安倍政権への忖度がますます露骨になってきている。そして、AbemaTVと展開する政権PR……。今後もこうした報道には注意を向けていく必要があるだろう。

(編集部)


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