マスコミはなぜ水原希子への差別攻撃を放置するのか!「日本人感出すな」「日本名名乗るな」攻撃の背景にある在日コリアン差別

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2020年06月19日 21:20  リテラ

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リテラ

水原希子Twitter

 またしても、水原希子がひどい差別攻撃を受けている。



 6月15日にある一般ユーザーが〈水原希子、て日本国籍じゃないんだよね?

これ以上何かやるなら日本人感を出すのをやめてほしいと思う。毎度、私が日本の女性の代表感出すのが言ってることの是非でなく国籍的に引っかかることしかない〉などと差別的投稿(現在は削除)。



 この卑劣な投稿に対し、水原は真っ向から反論。上記の投稿をリツイートした上で、以下のようにツイートした。



〈私がいつ日本人感出しましたか?日本国籍じゃなかったら何か問題ありますか?29年間、日本で育って、日本で教育を受けてきました。何が問題なのか全く分かりません。〉



 何から何まで、水原の言うとおりだろう。水原自身が何度も公言しているように、水原はアメリカ人の父と在日コリアンの母の間にアメリカで生まれ2歳から日本で育ち、日本の芸能界でデビュー。現在の活動は日本だけにとどまらないが、日本をベースに活動している。水原自身はその多様なルーツを活かし「地球市民でありたい」と何度も語っており、「日本人感」とやらを売りになどしていない。もししていたとしても、いったい何が問題なのか。水原に限らず、日本社会には様々なルーツを持った人が生活しており、日本国籍か否かによってその生活や言動が制限されるならば、それこそ差別そのものだろう。



 ところが、逆にこの水原のツイートのほうが炎上状態になり、さらなる差別攻撃を受ける事態となっているのだ。



 匿名のネトウヨだけでなく、安倍応援団のネトウヨ文化人たちも同調して水原攻撃を展開している。



「在日特権」など差別デマをふりまいてきた“ネトウヨのアイドル”竹田恒泰氏は〈いえ、問題ありません。日本を愛してくれるなら。本心から「私たち日本人は」という話し方ができるなら。たとえ日本国籍でも日本を貶めようとする人は、困ったものです。ましてその人が外国籍なら、尚のこと〉とツイートし、「外国籍なら尚のこと日本を愛せ」などという差別丸出しの要求を課し、極右ネトウヨ論壇で現在売り出し中のウクライナ出身・日本在住のナザレンコ・アンドリー氏も〈つまり民族的にも法的にも「日本人」の要素が皆無。にも関わらず日本名を名乗り、日本人として発言しようしている。言論の自由を侵害してはいけない。しかし、ポジションを明らかにした上で発言しないと、反感を買ってもしかたがない。詐欺的な成りすましをやめて、外国人として意見を言えばいいだけ〉と、水原が自らのルーツを公言していることを無視して「詐欺的な成りすまし」などとまるで犯罪者扱い。



 さらに「リベラルの男はキンタマ小さい」なるトンデモを披露したこともある動物行動学研究家の竹内久美子氏もツイッターで、ネトウヨ心性丸出しでこう攻撃した。



〈水原希子の名が思いっきり、日本人感出してるけど。でもって、反日活動してるよね。〉(現在は削除)



 ようするに、ネトウヨたちが水原を攻撃しているポイントは2つ。水原が「物を言う女性」であること、そして、在日コリアンのルーツを持つこと。つまりミソジニーと民族差別に他ならない。



●水原希子攻撃の背景にあるミソジニーと在日コリアン差別



 本サイトでも何度か指摘してきたが、日本のネット空間では、日本の男尊女卑社会を濃縮反映して、女性、とりわけ「物を言う女性」が叩かれる傾向が強い。たとえば、社民党の福島瑞穂参院議員や立憲民主党の辻元清美衆院議員、蓮舫参院議員をはじめする野党女性議員や、性被害を実名で訴えたジャーナリスト・伊藤詩織氏や#KuToo運動の石川優実氏、辺野古新基地や環境問題に声を上げるローラなど、社会の現状に対して異議申し立てをする女性たちが日常的に苛烈な攻撃に晒されている。水原に対する攻撃も同様で、明らかに「物を言う女性」が気に食わないという女性蔑視、ミソジニーが背景にある。



 くわえて、水原やローラ、蓮舫議員は、外国にルーツがあることも攻撃対象となっている。水原の場合は、在日コリアンのルーツを持つことで、さらなる苛烈な攻撃を受けている。



 発端となった一般ユーザーのツイートにも、上述したネトウヨ文化人たちのツイートにも、「在日」「コリアン」「韓国」「朝鮮」などという言葉は一切ない。しかしこれらは、水原が、在日コリアンにルーツを持っていることをターゲットにした攻撃だ。



 それを表すのは、彼らが水原の「名前」を問題にしていることだ。「日本人感」という一見、何を言っているの?という言葉も、水原のスタイルやファッション、言動のことではなく(その表現もどうかと思うが水原のそれらはどちらかといえば「日本人離れ」していると形容されるものであろう)、暗に「名前」のことを想起させているのは間違いない。実際「日本人感」ツイートに端を発して、水原を攻撃している者には「名前」をあげつらっているものが数多くある。



 そもそも日本の芸能界では芸名で活動している芸能人は山ほどいるが、ネトウヨたちはいちいち「嘘つき」などと攻撃して回っているわけではないだろう。だいたい日本の芸能界で芸能人として活動する際の名前は、本人の意志より所属事務所の意向が大きい。とくに外国にルーツを持つ芸能人でも日本語風の芸名でデビューさせられてきた例はめずらしくなく、外国にルーツを持つことを積極的に公表させない事務所も少なくない。最近でこそ“ハーフタレントブーム”があり、外国風の名前をあえて芸名にする例も増えてきたが、それも欧米の白人系の場合が多く、フィリピンなどアジア系に対してはいまだ蔑視の風潮が強い。



 在日コリアンの場合は、それ以上だ。古くから日本では、在日コリアンや在日コリアンのルーツを持つ芸能人は少なくないが、多くがその出自を明かしてこなかった。しかし、それは本人の意向というより、事務所サイドから強制されてきたものだ。実際、過去に在日コリアンである出自や名前を公表しようとした芸能人が事務所に反対されたケースもある。背景にあるのはもちろん、日本の芸能界というより日本社会全体の差別意識によるものだ。



 そして在日コリアンをめぐる差別で必ずあげつらわれるのが「名前」だ。



●在日コリアン攻撃に使われてきた「通名は在日特権」なる差別デマ



 在特会をはじめとした差別主義者やネトウヨたちは、なんの根拠もないデマにも関わらず、在日コリアンの「通名」を「在日特権」であると主張している。たとえば、ネトウヨ連中は「通名制度」によって、犯罪歴を隠すことができるなどと言っているが、これは真っ赤な嘘で、警察の履歴にも名前が残る。



「通名」を名乗ることで、在日コリアンが特別な利益を得ることなど何もない。むしろ「通名」は、日本の植民地政策のなかで、半ば強制されてきたものであり、戦後も就職差別や結婚差別から逃れるために「通名」を使い続けざるをえないという側面があった。在日コリアンの芸能人が通名や日本風の名前を芸名とするのも、こうした差別の延長線上のことだ。



 これのどこが優遇的な権利を意味する「特権」や「なりすまし」になるというのか。「通名」を名乗らなければいけない社会がおかしいと思うなら、いまも日本社会に根強く存在する在日コリアンの就職差別などを解消するよう訴えなければならないはずだ。にもかかわらず、差別をなくそうと主張するどころか、ネトウヨや差別主義者たちは難癖をつけ、在日コリアンを“敵”に仕立てた上で攻撃する“免罪符”として「通名制度」は「特権」だとのたまってきたのである。



 ネトウヨ連中が必ずと言っていいほど水原希子の「名前」をあげつらうのも、明らかにこうした「通名」や「在日特権」を想起させ民族ヘイトを煽動する「犬笛」のようなものだ。今回バズっていた「日本人感」という言葉も、同じく民族ヘイトを煽動する「犬笛」として機能したのは間違いない。



  本サイトでもこれまで何度も指摘してきたが、日本のネットやSNSでは在日コリアンと韓国に対するヘイトスピーチが横行している。そんななかで水原は、SNSやインタビューで何か発言するたびに、それどころか単に映画やCM出演が決まったことが報じられるだけで、ネトウヨたちから差別攻撃にさらされているのだ。



 しかし、水原はそうした差別攻撃に屈することなく、そのたびに反差別と多様性の尊重を訴えるメッセージを繰り返し発信してきた。



 たとえば、2016年に中国のネトウヨから攻撃を受けた際は「私は世界平和を支持し、戦争に断固反対するものです」「私は自分自身を地球市民だと思っています」「私たちはみんな異なる文化を背景にもっています。でも、私は心から信じています。お互いがもっと理解しあうこと、そして愛と平和が私たちをつなげ、世界をよりよき場所にするだろうということを」と毅然とメッセージを発信。さらにそれが日本のネトウヨから攻撃された少し後には、テレビ番組で「もう本当に色んな差別がなくなればいいって心の底から私は願っていて。それで苦しんでいる人がすごいいっぱいいて、そういうメッセージをもらったりするし。そういうことを(私は)伝えていきたくて」(日本テレビ『アナザースカイ』2016年10月14日放送)と語った。



●テレビはこれ以上、水原希子への差別攻撃を放置するな



 また、2017年に水原がサントリー「ザ・プレミアム・モルツ」(以下、「プレモル」)のイメージキャラクターとしてCMに出演した際、プレモルの公式ツイッターアカウントに水原に対する差別投稿が殺到した際は、〈一日も早く、この世の中の人種や性別などへの偏見がなくなってほしい。そして、世界中の人がどこにいても自分らしく生きていける世の中になるように、まずは私が私らしくこれからも強い心を持って、生きていこうと想います。全ての争いがなくなる事を心から祈っています。LOVE&PEACE〉とナショナリズムを超えた相互理解を訴えた。



 とりわけ、安倍政権下において在日コリアンをめぐる差別について発言することはタブー化しているが、今年の2月には神奈川県川崎市で在日コリアンを狙った卑劣なヘイトクライムに対しても、水原は敢然と〈悪質な人種差別、在日コリアンに対してのヘイトに心が痛みます。どこに生まれても私達はみんな同じ地球人〉と抗議の声をあげ、国と市に緊急対策を求める署名を呼びかけた。



 今回も、『DNAの旅』という動画を紹介しているが、これは、様々な国籍やルーツの人々のDNAを分析することで、多くの人間が信じ込んでいる純粋な民族的血統などというものは無意味で、世界中のすべての人がつながっているということを伝える動画だ。



 しかし残念ながら、水原に対する差別攻撃は一向になくならない。もちろんネットでは彼女を支持し応援する声もたくさん上がっている。本サイトなどネットメディアや、朝日新聞や神奈川新聞など一部新聞が水原に対する差別問題を取り上げたことはある。



 ところが、テレビでは水原希子の差別問題について取り上げられたことが、まったくと言っていいほどない。



 今年4月23日放送のNHK『バリバラ』(Eテレ)で、「2019年度に多様性の推進に功績のあった人」というテーマのなかで、ゲスト出演していた伊藤詩織氏が、人種差別に正面から反対のメッセージを発信したとして水原希子の名前をあげ、「彼女はヘイトスピーチに対して声を上げたというんですけど、日本の芸能界という場で、なかなか政治の話をするというのはすごく勇気のいることだったと思うんですけど、そうやってオピニオンリーダーとしてどんどん自分の思ったことを発言していく、声を上げるというところは、本当に水原さん、素晴らしかったなと思って。もっといろんなそんな人が出てくれたらいいなと」と称賛したことがあったが、それくらいだろう。



 つい先日、ネットの誹謗中傷問題を盛んに取り上げていたワイドショーやニュース番組は、なぜ水原希子に対する差別攻撃を取り上げないのか。いま、日本のネットでもっとも問題なのは、ミソジニーと在日コリアン(と韓国)に対する民族差別であり、もう何年も、その被害を受け続けているのが、水原希子だ。



 日本のテレビも、いい加減、見て見ぬ振りで差別に加担するのは止めにして、水原希子への差別問題を、女性蔑視や在日コリアン差別という背景も含めて、きちんと追及するべきだろう。

(本田コッペ)


このニュースに関するつぶやき

  • リテラって読むのがつらいほど、差別的。それでいて、他人のことを「差別」って決めつけるからつける薬がないって感じ。
    • イイネ!29
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