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「感染しないし、不潔ではない」知ってほしい皮膚の病気「乾癬」 フケのように皮膚がポロポロと……

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2018年10月21日 07:01  ウィズニュース

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写真乾癬の啓発イベントで話す山下織江さん(右)。イベントでは乾癬であることを公表したモデルの道端アンジェリカさんと共演しました=10月5日、東京都港区
乾癬の啓発イベントで話す山下織江さん(右)。イベントでは乾癬であることを公表したモデルの道端アンジェリカさんと共演しました=10月5日、東京都港区

 皮膚が赤くなって盛り上がる病気「乾癬」(かんせん)。フケのようにポロポロと白い皮膚片が落ちるため、「不潔、汚い」との偏見にさらされています。また「かんせん」との響きから「感染するのではないか」と誤解されることもあり、多くの患者が悩んでいます。13歳で発症し、今は啓発活動に取り組む山下織江さん(39)に話を聞きました。(朝日新聞文化くらし報道部記者・岩井建樹)


【乾癬(かんせん)】
日本での乾癬患者は、50〜60万人いるとされ、男女比は2:1。男性は50代、女性は20代と50代で発症する人が多い。体質やストレスが影響しているとされるが、はっきりとした原因は不明。治療法は塗り薬、紫外線療法、飲み薬のほか、2010年以降に生物学的製剤(注射療法)が登場。治療法が充実し、症状を大きく改善させる患者が増えた。

【画像】変形した顔、あざ、アルビノ……「見た目問題」の当事者たち

乾癬は「感染しません」
<美容室、職場、男女の営み……。乾癬患者は何げない日常の場面で、心の葛藤や悩みを抱いています。山下さんも、経験があります>

 私にとって、美容室は緊張する場でした。美容師さんに、髪の毛をさわられただけで、皮膚がフケのようにポロポロと落ちてしまいます。勇気を出して、「乾癬という病気です。『かんせん』と言っても、うつるほうの感染ではありません」と説明していました。「かんせん」というネーミングから誤解されやすいので、とにかく「あなたに影響はありませんよ」ということを、いち早く伝えるようにしていました。

 乾癬は知られている病気でもないので、伝えると、気まずい空気が流れました。それが、とっても嫌で……。大学生のころは、二度と同じ美容院に行く気になれず、転々と美容院を変えました。

 男女の関係にも影響を与えます。「こんな肌の私を受け入れてもらえるのか」「醜いと思われないかな」と不安でした。中には、肌を見せる関係になるのが怖くて、好きな人と別れてしまった女性患者もいます。

引きこもってしまった患者
<顔の変形や脱毛、あざなど、特徴的な外見をもつ人が困難にあう「見た目問題」。乾癬患者も見た目問題の当事者とされています>

 乾癬患者は、非常に見た目に影響のある病気です。皮膚が赤くなる紅斑(こうはん)が全身に広がり、頭皮やひじ、ひざの皮膚は白くなり、ふけのように落ちます。爪が変形したり、濁ったりする人もいます。

 私も人と話をしている時、「女性のくせにフケを落として汚いって思われているんだろうな」「私の肌を見ているのでは」と不安でした。たとえ、服で隠せたとしても、自分の心は隠せません。劣等感で自尊心が低くなって、人と目を合わせて話すのも怖かったです。

 見た目問題は、当事者が嫌な思いをしても、当事者が我慢し、その場を立ち去っていくので、なかなか可視化されません。でも、当事者は心の中で苦悩を抱えています。

 知り合いの患者の中には、中学生から30代まで、乾癬が原因で引きこもりを経験した人もいます。それほど、他人との関係に影響を与える恐れがある病気です。

長袖・ジーパンが基本スタイル
<13歳で、頭に乾癬を発症した山下さん。医師には「一生治らない」と言われました>

 中学生のときは、黒い制服を着るのが嫌でした。ちょっと頭を振るだけでも白い皮膚片がポロポロと落ち、制服に付着して目立つんです。肩の周りをいつも手で払っていました。

 高校生になると、ひざやひじの皮膚が白くなってしまい、周りの目が気になりました。プールに入るのが嫌で、理由をつけて休んでいました。
 
 治療と言っても、かゆみを抑えるために塗り薬を塗ったり、紫外線が効くと聞き、家でひなたぼっこをしたりするくらいでした。

<大学生のとき、症状が悪化。乾癬は全身に広がります。顔のほおや鼻の周りも赤くなりました>

 症状を隠すため、長袖・ジーパンが基本スタイル。オシャレを心から楽しむことはできませんでした。顔の症状は化粧で隠しましたが、それでも他人の目線が気になっていました。

 21歳で気象予報士に合格し、テレビ局でお天気キャスターのアルバイトにつきました。グライダーが趣味で、空にかかわる仕事につくのが夢でした。

 でも、乾癬の私がテレビに出ていいのだろうかと悩んでしまって。誰にも相談できず、ストレスで乾癬が悪化。キャスターを続ける勇気も自信もなく、夢を断念しました。

「結婚相手とはみることができない」
<大学を卒業後、アメリカに留学。乾癬の認知度が高いアメリカでは半袖を着て過ごすことができました>

 アメリカでは乾癬が「感染しない」「患者が不潔なわけではない」ことも知られていました。とても気持ちが楽で、ストレスも減り、皮膚の症状も改善しました。

 でも、恋愛では大きな挫折を経験しました。

 当時付き合っていた男性にカミングアウトしたら、「君には乾癬があるから結婚相手とはみることができない」と言われました。かなりショックでした。

 その後、体調が悪化し、関節炎を発症。帰国後も、手足やひじ、ひざの関節に痛みがありました。骨に釘を打ちつけられるような痛みで。特に朝は痛くて、起き上がれなくて仕事を休むこともありました。牛乳パックさえ痛みであけられませんでした。私のように、乾癬患者の中には、関節炎を発症する人がいます。

妊娠・授乳中に治療せず悪化
<2006年に結婚、出産。子どもへの影響を心配し、治療を放置。「間違った判断だった」と振り返ります>

 今の夫は、乾癬である私を受け入れてくれました。結婚前に乾癬を告白しました。「そうなんだ、治療すれば大丈夫だよ」と言ってくれました。

 妊娠中、関節炎は治まりました。ただ、子どもに何らかの影響が出るのが怖かったので、妊娠中、授乳中に治療を放置してしまい、皮膚の症状が悪化してしまいました。今思うと、医師に相談すべきでした。薬にも種類がたくさんあって、それぞれのライフイベントにあわせた治療法があるので、放置してしまったのは、間違っていました。

注射療法で消えた症状
<2016年、新しい治療法である注射療法(生物学的製剤)を受け、症状が劇的におさまったといいます>

 子育てに忙しくて、新しい治療法ができたことを知りませんでした。患者会に通うようになってこの治療法を知りました。

 注射療法を受けると、皮膚の症状も、関節炎もなくなりました。治療前は、家族で海に行っても、肌を出すのが嫌で、長袖、長スパッツ姿。心から楽しむことができませんでした。治療のおかげで、長男(11)や長女(9)と海で、大切な思い出をつくることができました。

 今も2週間に1度、注射を打っています。費用は年間25万円ほどです。若い患者の中には治療費の高さから二の足を踏む人がいます。また、不正確な情報から、副作用を極度に心配する患者さんもいます。

「乾癬を理由にあきらめないで」
<乾癬になりやすい体質が遺伝する可能性があるとされます。その点は、山下さんも心配だといいます>

 親が乾癬で子どもが乾癬を発症する率は、日本では数%と言われています。私の父も、60歳を過ぎてから発症しました。万が一、自分の子供たちも乾癬を発症したらという不安は正直あります。


<今年4月、患者5人とともに、一般社団法人「INSPIRE JAPAN WPD乾癬啓発普及協会」を設立。啓発活動に取り組んでいます。28日と29日には、「世界乾癬デー」(29日)にあわせ、東京タワーで啓発イベント(http://www.inspirejapan-wpd.net/event/event-schedule/921)を開きます>

 乾癬という病気があること。そして、感染はしないし、患者が不潔なわけではないこと。それだけを知ってもらえれば、私たち患者は生きやすくなります。

 患者のみなさんには、乾癬を理由に何かをあきらめないでほしいと伝えたいです。乾癬は心身に影響を与える深刻な病気ですが、今は治療の選択肢も増え、根治はしなくても、多くの患者さんが、症状を大きく改善できるようになりました。

 私は注射療法を受けるのが遅れたので、足の指が変形したままです。若い患者さんには正しい情報を知り、できるだけ早く、前向きに治療してほしいと思います。

このニュースに関するつぶやき

  • 私のお尻もかな
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  • うちの子アトピー。幼少期、公園でよく言われたのが「うつるんですか?」声を大にして言います。感染するような病気なら公園なんて行きませんから!
    • イイネ!70
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