“汚客”に苦しむベテラン販売員の本音トーク! 本当に「お客さまは神さま」なのか

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2020年01月31日 08:00  週刊女性PRIME

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百貨店に入社した後、転職してメーカーなどを渡り歩き、現場での経験は30年以上の“接客マスター”の真澄さん(写真・右)と、小売店で販売員をする傍ら、コンサートの受付や、イベントなどでの接客もこなすベテランの村江さん(写真・左)

「ドコモ代理店で店員がお客さんをディスったメモが拡散して大炎上しましたけど、“相手を選べない接客”にさらされている人たちは表に出していないだけで、だいたいあのようなメンタルになっていると思います。

 一部の“汚客”によって店員のメンタルがどれだけ病むか、世間は理解しないとサービス業という仕事はどんどん衰えていくと思います」(都内在住・飲食店勤務の女性)

“クズ”を相手にするのは本当に苦痛

 今年の1月8日にツイッターで、ある販売メモがさらされた。それはドコモ代理店の店長からのセールス指示書。

《親代表の一括請求の子番号です。つまりクソ野郎》《親が支払いしてるから、お金に無トンチャクだと思うから》

 と、より高額なプランへの誘導を促すものだった。このメモが、客へ渡す書類に誤って紛れていたことで存在が発覚。侮辱されたと客側がツイッターで公開したのだ。

 このツイートは瞬く間に拡散され、テレビなども報道。問題となった代理店の運営会社は謝罪文を出し、当事者に対して厳正な対処を行う、と発表した。

 今回の騒動、販売や接客といった仕事に就いている人たちはどう思っているのだろうか? ネットアンケートで意見を募ってみると、相手に“心の声”を伝えてしまったことは完全にNGだが、接客しているほうだってストレスを抱えている、といった声が多く寄せられた。冒頭の飲食店勤務の女性もそのひとりで、

「非常識な“クズ”を相手にしなくてはいけないのは、本当に苦痛」

 とまで毒を吐く。アンケートでは9割近い人が、接客中にお客さん相手に不愉快な思いをした経験がある、と答えた。

「閉店時間でも帰らずに居座る」(飲食業・30歳女性)

「商品が欠品していることを伝えると、どうしてないんだ、とキレられた」(販売業・22歳女性)

「お客さん自身の勘違いで違う場所へと案内したら、“ここじゃない”と理不尽に怒鳴られた」(添乗員・47歳女性)

「上から目線で、やってもらって当然という横柄な態度」(販売業・50歳男性)

「『お客様は神様』だろう、と言われて上から目線でいろいろと指示された」(アパレル関係・32歳女性)

【接客業100人にアンケート(アスマーク調べ)】

Q1 接客をしているとき、お客さん相手に不愉快な思いをした経験はありますか?
A1 はい……87人 / いいえ……13人

Q2 『お客様は神様です』という言葉、本当だと思いますか?
A2 思う……14人 / 思わない……86人

セルフサービスは“悪”?

 目立った意見では、客が店員を自分より下に見て接してくるということ。このことについては、海外での客と接客側の関係について示唆する声も。

「海外ではお店側もお客も、日本と比べてもっと対等な感じがしました。日本では、お金を払えば上からものを言ってもいいという輩が少なからずいます。お店側とお客は、ギブアンドテークの関係だと思って、もっと謙虚になるべきではないでしょうか」(飲食業・59歳女性)

 日本人の“サービス”に対しての考え方“お・も・て・な・し”の精神が、するほうもされるほうも強いのかもしれないが、客側がサービスを求めすぎではないか、と思うことは? の問いに、

「セルフサービスが“悪”だと思っているお客が多い」(飲食業・32歳男性)

「“ありがとうございました”ということは、もう来るなということか?“ありがとうごさいます”と言え! って、違いが私には理解できませんでした」(飲食業・56歳女性)

「年に1〜2回ご来店されるお客さまですが、“いつもの目薬”といわれても……。答えられずにいると“何、知らないの? わからないってどういうこと?”ってあきれられました。あきれるのはこちらだと思うのですが」(販売業・57歳女性)

 以前、百貨店で10年以上婦人雑貨の販売を担当していた元販売員は、ため息まじりにこう話す。

「昔から“厄介なお客さま”は確かにいました。自分の理屈で販売員に食ってかかったり、どうにかして自分の要望を貫こうとする方とか。でもそれって、百貨店だからという部分もあったと思います。バーゲンセール以外では定価販売が当たり前。近所のスーパーに比べて価格が割高なぶん、接客の中で行われる、形のないきめ細かな“サービス”に価値を置かれるお客さまが多かったのかなと。

 今は時代も変わり、リアルな店舗でモノが売れなくなったぶん、百貨店はもちろん、売り上げを伸ばすために、格安店でも同じようなサービスをしなくてはいけなくなってきたと感じます。そこにつけ込むというわけではないのでしょうが、お客さま側の立場が接客の現場では上だという意識が強くなっているのかもしれません

 販売員もミスをすることはある。しかし、そのミスに過剰に反応したり、自分の思うようにしてもらうのが当たり前、と考える客が増えているのも事実なのだろう。

 このような現場の変化をどう見ているのか、接客業のベテランふたりにいつもは隠している“心の声”を出してもらった。

販売とサービスの境界線が引きにくい

 いろいろな修羅場(!?)を乗り越えてきた販売員のおふたり。販売員サイドから感じる、接客業の“今”とは──。

真澄「ここ5年くらい、百貨店に入ってくるクレームは接客についてのものが本当に多いな、と感じます」

村江「それはどんなことについて怒っているんですか?」

真澄「販売員の接客態度。アパレルのショップに入っても店員同士で話していて“いらっしゃいませ”の声がなかったとか」

村江「あ、確かにそれは気になるかもしれない(笑)」

真澄「あとは、常連のお客さまには何人も店員がついて接客しているのに、一見の自分には誰も来なかったなんてお叱りの言葉もありましたね」

村江「実際、販売員の質というものが落ちているということを感じません?」

真澄「すごく感じるし、正直そういった声を耳にする機会が増えていますね。これはどこの百貨店を見ていてもみんな同じ」

村江「お客さんが来たのに店員同士で話しているのは論外だし、いつも買っていただける常連さんを優遇する気持ちは理解できるけど……」

真澄「それを別のお客さまに悟られてはダメなんですけどね(笑)。あと、笑顔がないとかもよく言われることだけど、極端な話、買っていただくための笑顔だから(笑)」

村江「そうそう、ビジネススマイル」

真澄「買っていただけるお客さまなら、どんなお客さまでも一生懸命販売しますから。今ふと思ったんだけど、販売員はホストとそっくりだなって」

村江「お金を使ってくれるお客さんには一生懸命サービスするしね。財布のひもが固いお客さんにはそれなりに、って(笑)」

真澄「ホストって絶対に裏で“あの人はお金持っているからシャンパンお願いしても大丈夫”とか言ってますよね。“あっちはお金使いそうにないから、ヘルプに行きたくない”とか。それが表に出たら大変なことになるけど」

村江「それって今回のドコモの騒動、そのままじゃないですか」

真澄「うん。でもね、ホストクラブはモノを売るのではなく、お客さんを気持ちよくさせるというサービスの対価としてお金をもらうじゃないですか。でも、私たちの販売業って、あくまでモノを売るための接客ですよね。お客さまは同じように考えているかもしれないけれど、私の中でどこまでが販売でどこまでがサービスなのか難しいな、と感じることがあって

村江「確かに、商品知識が豊富なことと、愛想がいいことはまったくの別物ですよね」

真澄「極端に言ってしまえば、お客さまのニーズに合わせ的確な情報提供をして、納得してもらってお買い上げいただければ問題ないと思うこともあるし。

 私は販売という仕事に誇りを持ってやってきましたし、販売とは離れた部分でのサービスについて触れられると“私は販売員だから笑いません”くらいのことを言いたくなるときありますよ(笑)」

村江「ただ話を聞いてほしくて、1時間も2時間も居座るお客さんもいますしね。でも、そういったお客さんも買っていただけるかもしれないから無下にもできないし……」

真澄「そういうお客さまから逃げるために、会話を終わらせるクロージングをして、フェードアウトする、という研修も受けるんだけど、そのとおりにできない人もいますから。裏では“あ、あの人に捕まっちゃった”なんて言われるし。

 そういった対応を続けていく中でお客さまが増長して、うまくフェードアウトしようとすると“あの人はちゃんと対応してくれるのに”とクレーマーになっちゃう。そういったお客さまをつくらない企業努力も必要かなと思いますね」

お客さんと販売員の関係が変わってきている

 販売員の質も落ちているが、対するお客さん側にも変化がある、とふたり。その変わりようについて聞いてみると……。

真澄「最近、コンビニとかで店員が土下座させられている画像が流れたりするじゃないですか。販売員とか責任者に無茶ぶりして……。もしかしたら店側に非があったかもしれない。でも、あそこまでやったら犯罪者ですよ」

村江「あれは自分のほうが立場が上だと思っているからですよね。自分より弱いだろうと思う人を上から卑下して、自分を優位にしようとしているんでしょうね」

真澄「昔はあそこまでのことって、なかったじゃないですか。接客していて、欲しいものを相談されて、いろいろアドバイスをありがとう、じゃあこれを喜んでいただきます、ってお互いに“ありがとう”のはずだったのに」

村江「いつの間にか関係が変わってきてますよね。要望がエスカレートしてきて、それに応えようと努力をすると、もっとお願いしても大丈夫かな、って。お客さんと販売員の気持ちの、ボタンの掛け違いみたいな感じになっていますよね

真澄「昔と比べて、情報拡散のスピードが段違いに早くなったこともありますよね。“あの店でこんなことをされた”ってネットに書き込まれたら、それがウソでも本当のことのように流れてしまいますし」

村江「それがお客さんの態度を大きくする原因のひとつであることは間違いないですね。お店側にとってはネットの拡散力は脅威ですよ

真澄「クレームの中で『お客さまは神さま』だろう、なんて言葉が出るときがあるけど、この言葉はどう思います?」

村江「お客さまがちゃんとしたお客さまなら、という条件が満たされればそのとおりかなと思います」

真澄「それはどういうこと?」

村江「あなたは私に対して、ちゃんと利益をもたらしてくれる方ですか? 私を不幸にしませんか? って。利益をいただけるなら、私もできる限りのことをさせていただきますよ(笑)」

真澄「確かに(笑)。“買ってやるんだ”ではなく、“買わせていただきます”くらいの気持ちを持っていただければ、お互いに気持ちよく“ありがとうございました”で別れられますよね」

このニュースに関するつぶやき

  • 酷い応対のお店があるのも事実。反面教師として捉えています。『あっちでは○○円だったぞ�फ�á��ܤ��』『ではそちらでどうぞ』と言ってみたいです。
    • イイネ!72
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