隣の夫婦の家事分担 第7回 理解されづらい孤独な闘い……覆面座談会から見えてきた専業主婦の本音

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2018年04月17日 16:02  マイナビニュース

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国の調査によれば、全世帯の約35%を占めると言われる専業主婦世帯。共働き世帯が増えつつある昨今、専業主婦として日々奮闘している女性たちは、家事や育児、仕事についてどのような思いを抱えているのでしょうか。覆面座談会で、女性たちの本音を聞いてみました。

○参加者

高村由佳(聞き手)
5歳と2歳の男の子のママ。結婚を機にフルタイムで働いていた放送局を退職し、4年間専業主婦を経験。その後、フリーライターに転身。

Aさん
5歳の男の子と1歳の女の子のママ。同居している義父母のサポートなどを受けながら、以前正社員として働いていた総合スポーツ用品の販売店舗で、アルバイトをしている。医療事務の正社員、リハビリ助手のパートなど、さまざまな業種、職種、働き方を経験してきたが、子どもが生まれてからしばらくは専業主婦をしていた。

Bさん
5歳と1歳の女の子を育てるママ。総合アパレル企業の正社員、料理教室の講師、洋食店の調理担当などを経て、妊娠を機に退職してからは専業主婦をしている。食に関わる仕事をしたいという目標を持つ。

Cさん
5歳の男の子と1歳の女の子のママ。大手住宅機器メーカーで正社員として働いていたが、夫の転勤により退職し、それ以降、専業主婦をしている。

○専業主婦になったそれぞれの理由

――みなさんはどうして専業主婦になったんですか?

Aさん: 1人目の妊娠中に働いていた病院は、産休・育休を取るのが難しい職場環境だったので、退職するしかありませんでした。ただ、自分の親が共働きで寂しい思いをしたから子どもといっしょにいたいと思ったこともあって、最終的には納得して専業主婦になることを決めました。

Bさん: 私の場合は最初、出産しても仕事を続けようと思っていたのですが、妊娠時に働いていた洋食店でつわりがひどくなってしまい、厨房にいることがつらく感じるようになりました。パスタをゆでる匂いで気持ち悪くなってしまうこともあって……とてもじゃないけど、続けられませんでした。それからは専業主婦をしています。

Cさん: 私も初めは、産休・育休を取って働き続けようと考えていました。しかし産休を申請したところで夫の転勤が決まったんです。産後に異動先での復帰を希望しましたが、制度的に難しく、仕方なく退職したという感じです。

――夫は専業主婦をすることに対してどのように言っていますか?

Cさん: 金銭的な理由もあって、辞める前は「仕事を続けてほしい」と言っていました。ただ、退職後、1歳のときの子どもたちの子育ての様子を見て考えが変わったようで、今は「これで復帰するのは無理だよね」と言っています。いずれ手が離れたら働いてほしいとは言われますね。

Aさん: うちもお金のことがあって、しばらく専業主婦をしたあとに「働いてほしい」と言われました。夫婦で話し合って働く選択をしたけれど、危機感がなければずっと専業主婦をしていたかもしれません。

Bさん: 私の夫は、働くことに関して割と自由にさせてくれています。専業主婦をしてもいいし、働いてもいい。自分の好きなようにしていいという感じですね。
○「俺は疲れている」の一言で、まかり通ることにモヤモヤ

――家事分担についてはどうしていますか? 夫も家事をしてくれますか?

Bさん: 本当はお願いしたいこともあるのですが、夫に頼みごとをすると「主婦なんだから時間あるでしょ?」とか「時間の融通きくでしょ?」と言われてしまい、カチンときます。働いているかいないかでスタートラインが違って引き離されている部分が大きいなと感じます。主婦も家事や育児で大変だし、無賃ではあるけれど立派な仕事じゃないの?と思うことはあります。

Aさん: 私は夫に「これはやってほしい」と伝えて、家事分担しています。洗濯物を干す、たたむ、朝の子どもたちの世話をするといったことは、全て夫がやってくれています。文句は言っているけれど、してもらわないと家事・育児が回っていかないから、やってあげると言ってくれていますね。

Cさん: 家事の分担では私が我慢することがすごく多いです。基本的にこちらから言わないと、何もしてくれません。夫は仕事で疲れていれば、ソファで休憩したり、携帯を見たりできますよね。もちろん、疲れているので仕方ないんですけど、私だって、携帯を見る時間もないし、ごはんをゆっくり食べる時間もないくらい忙しく、疲れているのにな……と思ってしまいます。夫は「俺は疲れている」という言葉だけでまかり通るけれど、私はそれが難しい。日々、私が倒れたら家のことはどうなるんだろうと思うけれど、倒れないようにがんばっちゃうんですよね(笑)。

――夫に「手伝って」とは言いづらいですか? 言っても無駄だと思うことが多いのでしょうか??

Bさん: 言う体力がもったいないし、体力を使うくらいなら自分で動いちゃおうと思います。家事を頼んでも上手にできないので、失敗されると二度手間だな……と思ってしまうんですよね。

Cさん: 夫を褒めて伸ばしたら、家事をやってくれるようになると聞きますが、それをする労力がないです(笑)。
○"お金を多く持って帰ってくる方が偉い"という気持ちに

――専業主婦には、家事や育児など、無賃労働と言われるタスクが多いですよね。やってみて、どんな点に苦労していますか?

Aさん: 無賃でも、夫から「ありがとう」という労いの言葉があればいいんですが、それがないからモヤモヤすることが多いです。

Cさん: 分かります! 私は夫に「ありがとうって言ってほしい」って伝えたことがあるのですが、「そっちも言わないでしょ」って返されてしまったんですよね。確かに言っていないと気づいて、シーンとなりました(笑)。言うのが悔しいというか、素直に言えないんですよね。

Aさん: 夫に「これ買ってもいいかな?」って聞くのが嫌になってくることもあります。どうしても"お金を多く持って帰ってくる方が偉い"という気持ちが、お互いに出てきてしまいますね。
○想像以上に高い「働く」ことへのハードル

――専業主婦になってから、働くことに対する気持ちの変化はありましたか?

Bさん: 本当に、人それぞれだと思うのですが、義理の親も自分の親もそして自分自身も、子どもとの今しかない時間は、母親が側で見守っていたいという考えを持っています。ですから、子どもが小さい間は、成長を近くで見られる今の時間を大事にしたいと思っています。私自身、子どもを持つ前は自分がやりたいことをたくさんやってきたので。

Cさん: 私は会社の制度上仕方なく退職して専業主婦になりましたが、辞めてから思ったのは、その会社にいても続けにくかったなということです。働くお母さんに優しくない古い制度の残る会社だったので、残っていたら苦労していたかもしれない……と今は感じています。

Aさん: どちらかというと、自分が望んで専業主婦になりましたし、子どもとの時間がたくさん取れて楽しいと感じることもたくさんあったのですが、子どもと1対1という時間があまりにも長くて、息苦しく感じてしまう自分がいました。そこで、以前勤めていた会社でアルバイトとして働くことに。ただ、最終的に採用してもらえるまで就職活動はかなり大変で、なかなか条件のあう仕事を見つけることができませんでした。

――みなさんが考える理想の働き方とはどんなものですか?

Bさん: 子どもができる前は、何歳であれをして、これをして、という目標があったけれど、それが全て崩れ去ってしまったので、自分の働き方についてはまだ模索中ですね。料理教室での勤務経験もあるので、子どもが少し手離れしてきたら、自宅で教室を開くのもいいなとは思っています。しかし、初期費用がそれなりにかかるので、簡単にはいかないですよね。

Aさん: 家で働けるのはいいですよね。私は同居している義父母に助けてもらえることもあって、外で仕事が始められましたが、それがなければ難しかったと思います。働くこともそうですが、就職活動や面接自体も専業主婦で子どもを預かってくれる場所がなければ大変ですよね……。働くまでに、すごくたくさんのハードルがあると感じます。

Cさん: 私は下の子がまだ1歳なので、幼稚園に入って少し手が離れてから働こうかなと思っていますが、保育園に入れるとなると、いろいろ考えてしまいますよね。お金を稼いでも、結局保育料とトントンだなとか、そこまでして保育園に入れるべきなのかなとか……。前職で得た「CAD」(設計図の作成ができるパソコンのソフト)のスキルをいかして、在宅でも働けないかなと、最近考え始めています。
○「自分の時間はほとんどない」主婦の現実、理解されづらく

――専業主婦の立場について、世間から誤解されているなと感じることはありますか?

Cさん: 専業主婦は家にいて、好きなように自分の時間を過ごしていると思われがちですが、周りのママ、そして私自身について言うと、毎日子ども最優先で動いているので、自分の時間はほとんどありません。自分の思い通りには全くならない時間軸の中で、こなさなくてはいけないタスクは日々あって、それをどうやってこなそうか、日々試行錯誤しています。座る暇もないし、自分のごはんをゆっくり食べる暇もないし、授乳していたら夜も眠れないし、こんなに睡眠不足なのにまた朝が来て、同じ1日を過ごすというつらさ……。寝不足と疲労感の中で何とかやっているけど、みんなニコニコして過ごしているから、特に男性には全然伝わっていないよな、と思います。

――孤独な闘いですね。私の夫も転勤族ですが、そういった場合は働き方の選択肢が限られてしまうことも多いですよね

Cさん: そうですね。パートナーの異動に合わせて一緒に転勤できればいいけれど、私の場合はそれがかなわなかったので、そういった点では理不尽さを感じることもあります。希望する、しないに関わらず、専業主婦しか選択肢がない現実もあるので、もっと社会の理解が広まってほしいなと思います。

今回話を聞いた女性たちが専業主婦になった背景はさまざま。一口に専業主婦といっても、その状況や家事・育児、そして仕事に望んでいることは人それぞれです。

夫婦共に納得できる生き方を選べるように、お互いの希望や状況を理解しあえたらいいですし、それに応えられる社会のあり方も求められているのかもしれません。(高村由佳)

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  • ウチはCさんと逆で、妻の『私は(家事と育児で)疲れている』がまかり通ることにモヤモヤw
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