月給の手取り11万円 「最低賃金以下」に苦しむ「ナイーブな介護労働者」

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2013年11月20日 19:50  弁護士ドットコム

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少子高齢化とともにますます高まっている介護の需要。しかし介護従事者の離職率は高く、現場は常に人手不足が指摘されている。理由の一つはその労働条件の悪さにもあるようだ。「タイムカードすら無くて、驚いた」「辞めたくても代わりの人がいないから、辞められない」。ネット上には介護現場で働く人の悲痛な叫びが寄せられている。


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そんな中、介護現場で働く人の労働上の悩みを解決しようと、労働問題にくわしい弁護士たちが無料の電話相談会を行った。「介護労働ホットライン」と銘打たれた電話相談会は10月29日から30日にかけて実施され、介護現場で働く人から多くの相談が寄せられたという。



働く人の入れ替わりが激しいようでは、利用者に満足のいくサービスを提供することも難しい。その点からも働きやすい環境づくりは急務といえるといえるだろうが、介護の職場環境の問題はどこにあるのだろうか。ホットラインで見えてきた課題とその対処法について、介護労働ホットライン実行委員会の共同代表をつとめる井堀哲弁護士に聞いた。



●「介護労働者の賃金の低さに驚かされた」


「ホットラインで介護労働者の状況を聞いて、その賃金の低さに驚かされました。月給で手取り11万から12万、時給700円から800円。最低賃金を下回っている可能性のある方が多い。



介護職員の処遇改善については、国が、処遇改善交付金(2011年まで)や処遇改善加算(2015年まで)といった制度を作り、事業者に支払っていますが、これらが介護職員の給与に十分に反映されていない実態も明らかになりました。



もし、税金が本来の趣旨と異なる使途に費やされていたとなれば、大きな社会問題となることは必至でしょう」



井堀弁護士はこのように説明する。さらに、問題は賃金だけにとどまらない。



「事業所から専門的かつ適切な訓練や研修を受けさせてもらえないまま、現場に放り出されて大きなストレスを抱えている声も多く聞かれました。



ほかにもサービス残業や長時間労働、人手不足、厳しい労務管理など、他の労働現場と同様の問題も抱えています」



介護労働現場には、こうした問題を生み出す何かがあるのだろうか。井堀弁護士は次のように述べ、介護労働者たちが声を上げることが、労働者自身のためにも、社会のためにもなると強調していた。



●事業者が「ナイーブな介護労働者」に付け入っている


「相談を受けて感じたのは、介護労働者の皆さんは、ナイーブ(=お人好し)な方が多く、そこに付け入る事業者も多いということです。



労働者なのですから、賃金や労働時間等について最低限の知識を身につけて、これに反する実態があれば、上司や、場合によっては労基署や弁護士等の第三者に相談すべきです。



介護従事者が自己の権利をきちんと主張することが、職場環境や介護制度自体の改善、ひいては利用者のサービス向上につながっていくのではないでしょうか」


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
井堀 哲(いぼり・あきら)弁護士
1969年生 中央大学法学部卒 第二東京弁護士会所属 同会人権擁護委員会委員長 日本労働弁護団員(労働相談ホットライン相談員) 介護労働ホットライン実行委員会共同代表 東京家庭裁判所(立川支部)調停委員
事務所名:TOKYO大樹法律事務所
事務所URL:http://www.tokyotaiju.com/



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  • 青山さんや三好さんを見たらわかる。儲かる人は結局、現場にいない人たちってことを。
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