公文書管理、刑事裁判の記録も危ない 貴重な歴史資料失われる恐れ、法相に保管求める

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2018年04月26日 20:41  弁護士ドットコム

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刑事裁判の記録は、歴史資料ではないのかーー。国会で公文書管理のあり方が問われる中、ジャーナリストや法学者らでつくる「司法情報公開研究会」が4月26日、判決の確定後、一定期間がたった刑事裁判の記録を「国立公文書館」に移管するよう求め、上川陽子法務大臣に請願書を提出した。


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確定した刑事訴訟記録をめぐっては4月4日の衆院法務委員会で、「刑事参考記録」と呼ばれる重要記録が、2014年度以降に14件廃棄されたことが明らかになっている。


記者会見を開いた同研究会共同代表のフリージャーナリスト・江川紹子氏は、自身が取材したオウム真理教の事件を例に、「オウムを知らない世代が増え、『実はサリンはつくっていなかった』などの陰謀論的なものがはびこっている。対抗できるのはきちんとした記録。今あるものは1ページも捨てずに取っておいていただきたい」と語った。



●保管期間を過ぎたら、いつ捨てられてもおかしくない

確定した刑事裁判の記録は「刑事確定訴訟記録法」によって、保管期間が3〜100年と決められている(同法別表)。たとえば、死刑判決が出た裁判だと、判決書は100年、証拠などは50年といった具合だ。


重要な研究資料と認められれば、法務大臣の指定した「刑事参考記録」として保存されるものの、それ以外は保管期間を過ぎると廃棄される可能性がある。参考記録でも途中で指定が解除される可能性があり、安心はできない。


法務省によると、参考記録の数は845件(2017年12月1日衆院法務委員会)。一方、2014年度以降、検察庁によって14件が参考記録の指定を解除され、廃棄されたという(2018年4月4日衆院法務委員会)。何が指定され、何が廃棄されたかは明らかにされていない。



●保存イコール全面公開ではない

同研究会は、(1)参考記録のうち、確定後50年たったもの、(2)検察庁が保管している保管期間が過ぎた判決書、を国立公文書館へ移すよう求めている。さらに、(3)オウム真理教をめぐる事件など、保管期間の関係から破棄の可能性がある4件についても、参考記録に指定して保管すべきだとした。


記録の保管をめぐっては、裁判当事者からの反発も予想される。この点について、青山学院大学大学院の塚原英治教授は「保存イコール全面公開ではない。公開の際の工夫で解決できる」と回答。


龍谷大学の福島至教授は、森友学園問題を例に「(詐欺罪などで起訴された前理事長の刑事裁判が)確定したあと、参考記録に指定されなければ、そのまま破棄されてしまう。記録の保管は、国民の知る権利の確保のために重要だ」と訴えた。



(弁護士ドットコムニュース)


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