田中圭×林遣都×吉田鋼太郎が見事なハマり役! 『おっさんずラブ』王道ラブストーリーの魅力

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2018年05月05日 06:02  リアルサウンド

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 土曜日の夜をつい楽しみにしている自分がいる。こんなに笑いが止まらない、それでいてキュンキュンも止まらないドラマは他にあまり思いつかない。気付いたら恋に必死な“おっさん”たちそれぞれの、あまりの可愛さから目が離せない。


参考:田中圭、高まる人気の理由 ”天性の癒やし系”から“理想の夫”へ


 2016年に放送され話題となった単発の深夜ドラマが発展して生まれた連続ドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)。InstagramなどSNSの積極的な活用や、第2話では副音声企画もあり、そういった意味でも新しさを感じさせるドラマである。根強い人気を持つジャンル、ボーイズラブのファン層を狙っているだろうことは言うまでもないが、このドラマは一概に特定層だけを狙ったドラマではない。『おっさんずラブ』というタイトルだけで穿った視線を投げかけ観ようとしない方は、騙されたと思って観てみるといい。これは、ピュアすぎる男たちの切なくも可笑しい、純然たる王道ラブストーリーなのだ。


 常識的じゃないことは何事も咎められる今の時代、上司は部下からセクハラ、パワハラだと訴えられることを恐れ、不倫はヒステリックに攻め立てられ、性的マイノリティはそれだけで色眼鏡で見られる。この『おっさんずラブ』の世界はそれらの要素をふんだんに詰め込み、それらを否定せず「笑い」として、あるいは個性として柔らかく受け入れる。


 公式ホームページにおけるイントロダクションにおいて、このドラマは「多くの人が普通だと思っている価値観を改めて問うラブストーリー」であると書いている。深夜の癒しのような柔らかさを見せて、実は硬派で真摯なドラマなのだ。そして愛すべきこのドラマの登場人物たちは、さらっと本質めいた台詞をしゃべったと思いきや、「なんつて」と重くなりすぎないように誤魔化す。それがきっと、このドラマの面白さの根底にある。


 まず、『おっさんずラブ』の何が私たちを爆笑の渦に巻き込んでいるかと言うと、田中圭演じる春田創一を巡り暴走する恋のバトルと春田自身の愛すべきキャラクターを見事に切り取り、引き立てる演出の妙だ。無駄を許さないテンポの速い画面転換、目まぐるしく展開されるショット転換は、視聴者に余計な余韻を残さない。テンションマックス状態の彼らの暴走が次から次へと繰り出されていく1時間は、あっという間に終わってしまう。


 それでいて男たちが「かわいすぎる」と夢中になるのんびりマイペースな春田の様子を映す時は、なぜか牧歌的な音楽が流れ始めたり、暴走する音楽と画面上の「おっさんずラブ」のタイトルロールの出現をよそにのんびり首を傾げながらイスに座る春田の姿が映りこんでいたり、ただ「トイレットペーパーがきれてどうしよう」という何気ないシーンでも、なぜか分割で2方向から示される春田の表情に釘づけになったりと、とにかく細かい。こうして、暴走する恋のスピード感と、無意識に男たちの心を着火させてしまう、誰が見ても愛おしい存在・春田のコントラストが余計に笑いを誘うのである。


 そしてなにより、田中圭、吉田鋼太郎、林遣都の見事なハマリ役ぶりとその絶妙すぎるキャラクターの面白さである。


 吉田鋼太郎演じる乙女心の強い上司・黒澤武蔵は衝撃的だ。シェイクスピア演劇仕込みの声の張り方で「なんてこった!」を連呼する。自分をかばって病院に運ばれた春田の元に駆けつけた時の犬みたいな「ハッハッハッハッ」という息遣いと泣きそうな表情、ドキドキしながら手作りのカラアゲを食べさせようとする時の「よっしょしょしょ」、就寝中、妻・大塚寧々に無理やり顔認証をさせられている時の顔。「可愛い」と言いながらどうにも大爆笑してしまわずにはいられないのが、ズルイぐらいキュートな吉田の凄さだろう。手を振り払われた時の切なげな表情、林遣都演じる牧が自分の知らない春田を知っていることに動揺して「はるたん、そんなんじゃねえよ」とムキになる時の心なしか淋しそうな表情は、思わず胸に迫るものさえあった。


 一方、黒澤のライバル、林遣都演じる牧凌太である。彼の恋はその見た目のクールさとは裏腹に熱く、切ない。第1話の病院に運ばれた春田が無傷だと知った時の表情は春田じゃなくても「こんな顔するんだ」と新鮮だった。職場の先輩と後輩として、同居人として春田に惹かれていく姿は、田中圭がそれだけ魅力的に演じているということもあり、説得力がある。だからこそ、自分を抑えきれなくなったシャワー中のキスシーンからの第2話の展開は、男同士だろうが男女間だろうが関係なく、多くの視聴者が自身の苦い片想いの記憶を反芻したことだろう。


 第2話の終盤、春田は、牧の告白を受け止めきれず、動揺して思わず否定してしまう。幼なじみのちず(内田理央)に咎められ、走って牧を探し、「俺にはお前が必要なんだよ」と叫ぶ春田。それはいわゆる恋愛映画のそれなのであるが、あくまで春田は今までと変わらない友達としての居心地のよい関係性を求めているだけであって、公園で「天体観測している」と言う牧に「見えねーし、なんにも」と答えてしまうように、春田と牧は同じ時間と空間を共有しながらも、捉え方が全く違うのだ。爪先立ちで春田の額にキスをして「普通には戻れないです」と牧は去っていく。


 屋上での牧の告白を受けて、春田はツッコミの「おいっ」を2度繰り返す。それは、シャワー中のキスを「男子高のノリ」だと思い込みたかった、居心地のよい「友達」のままでいたかった春田の切実な心情を物語っていた。ある意味、彼らは互いに片想いなのである。


 本日放送の第3話は、春田と牧も気になるが、やはりコメディエンヌぶりを静かに発揮している大塚寧々を巻き込んだ春田と武蔵の展開が必見だろう。予告を見た限りでは、今のところ潔癖症で真面目な上司といった雰囲気の眞島秀和がなにかしら動きだしそうで楽しみである。(藤原奈緒)


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  • 金曜の家政夫のミタゾノと土曜のおっさんずラブ、週末の深夜が楽しみで仕方がない。
    • イイネ!20
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