嵐とSMAP、最大の違いはどこに? 現代思想でグループの特性を読み解く書籍登場

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2014年06月21日 10:10  リアルサウンド

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 以前リアルサウンドでも紹介した明治大学法学部で行われている嵐を題材にした講義(参照記事:嵐、大学講義の題材に ジャニーズの文化的側面を研究する意義とは)。そこで教鞭をとる関修氏の著作『隣の嵐くん−カリスマなき時代の偶像−』が6月4日に発売された。フランス現代思想を論拠に、嵐ブレイクの理由や魅力の考察を試みる意欲的な取り組みとなった同書。嵐は時代を映す「鏡」、あるいはこの時代の「微」であるから、嵐を真剣に考えることで自分達の生きるこの時代を知ることができると著者は語る。


 嵐がエポックメイキングな存在である理由、それは彼らが「最良の隣人」であるからと関氏は分析する。各メンバーがそれぞれ別のテリトリーを持ち、個でも活躍しつつ、調和したグループとしてその総和以上の魅力を発揮することから分かるように、嵐はSMAPの正当な後継者である。しかしこの2グループが決定的に異なるのは、SMAPがあくまで「スター」なのに対し、嵐は「隣人」である点。一般大衆にとって日常的な=普通の存在である。その「身近さ」こそ、これまでのグループにはない嵐の強みであり「すごさ」だと関氏は考える。本の中では他のジャニーズグループやK-POPアイドル、AKB48などと比較することで嵐の特異性が明らかにされる。


 同書における最大のクライマックスは第三章「嵐その活動に見る魅力」。関氏はこれまで発売されたCDのミュージック・ビデオを時系列に並べ、嵐の転換点になったのが2008年のシングル『truth』であることを”発見”する。「『Happiness』でジャニーズ伝統の『永遠の少年』をイメージさせるグループとしての嵐の到達点が記録されたとしたら、それを超えた前人未到の地点へのステップを歩み始めたのが『truth』ではなかったのか…(『truth』以降)『Believe』『lotus』『迷宮ラブソング』など同じ路線の楽曲をコンスタントに発表していることからも、ここに嵐のある種の成熟、次なる次元への深化=進化を見て取ることが出来る」。同曲は大野智がはじめて主演を務めたドラマ『魔王』の主題歌。しかしミュージック・ビデオを観ると(主役の)大野と同じくらいの頻度で相葉雅紀のショットが登場することに気がつく。果たしてこのことが意味することとは? なぜ『truth』が嵐の転換点となったのか? その詳細はぜひ本書を手にとって確認して欲しい。


 『隣の嵐くん−カリスマなき時代の偶像−』は全体を通して平易な文体で記述されており、哲学や現代思想に抵抗感のある方もスラスラと読み進めることができるだろう。嵐ファンはもちろん、普段テレビやCMで姿を見かけるといった程度の方も、本書を読めば嵐がなぜこれ程までの人気を博しているのか理解できるに違いない。(北濱信哉)



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