テスラに続きトヨタも「特許を開放」した理由

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2015年01月19日 19:10  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

米高級EVメーカーのテスラがEVの世界普及を目的に昨年6月、同社が蓄積したEV関連の全特許を他社が自由に使えるように開放することを表明した。

これは米Googleがスマートフォン向けプラットフォーム『アンドロイド』をオープンソースとして一般公開、市場シェアを拡大した手法と似ている。

“オープンソース”は自社特許を開放することで他社の市場参入を促し、新技術を普及させる手法だが、自動車会社のテスラがその戦法に出たことで注目を集めた。

テスラのEV特許公開の狙いとは

同社を率いるイーロン・マスクCEOは、自社のテクノロジーの使用を望む企業に対して特許侵害訴訟を提起することはないとしており、公開に至った背景については、自社の特許がEV普及の足かせになっているためと説明している。

TESLA_MODEL-S

もちろん、他にも同社なりの目論見や事情がありそうだが、現実として世界のEV市場が当初の計画どおり進展しているとは言い難く、目標達成には何らかの手を打つ必要性があったと思われる。

EVの普及を左右する充電網の整備が大きな課題の一つであることは明白だ。

そして今年1月6日、今度はトヨタ自動車が同社が保有する約5,680件の燃料電池関連の特許実施権を2020年末までの期限付きで無償提供すると発表した。

そのなかでFCVの普及で足かせとなる水素ステーション関連の特許に関しては、期間を限定せず無償としている点が見逃がせない大きなポイントの一つだ。


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それにしてもテスラの200点余りの特許公開数に比べて遥かに膨大な数に驚かされると共に、FCVのパイオニアとしてトヨタの世界普及に賭ける意気込みを感じさせるのに充分。

テスラの英断を見て、トヨタとしてもFCVで効率的に“デファクトスタンダード”を目指すには既得権を主張するだけでなく、むしろ後続する他企業に貢献するぐらいの懐の広さが必要と踏んだようだ。

テスラもトヨタも特許権を維持

勿論、テスラ、トヨタ共に特許権を放棄した訳ではないので、状況が変わればいつでも特許権を行使することが可能だ。

トヨタが今回一時的に開放した膨大なFCV関連の特許の数々は、期限が満了する2020年以降の使用については有料となる可能性も十分にある。

その場合、2020年の段階で後続他社は同社の特許に触れていれば特許料を支払う必要が出るため、結果的に特許開放中の早い段階でFCVを発売する可能性が高まる。

それによってトヨタ1社だけでは到底対応しきれない世界レベルでの水素ステーションの拡充に弾みが付くことになるだろう。

TOYOTA_FCV

トヨタに特許料を払いたくなければFCVを販売する傍らで2020年までに特許回避策を準備しておけば済む話で、ひいてはそれがFCVに新たな技術革新をもたらす原動力につながる可能性もある。

テスラが世界的に足踏みするEVの普及を活性化させ、充電ステーション網の充足を加速させようと自社特許の公開に打って出たように、トヨタはFCVでEVと同じ轍を踏まない為にも、特許を開放することで水素ステーションの拡充を早い段階で確立しようとしているのだ。

今回のトヨタの特許公開がそうした“シナリオ”どおりに進むのかどうか大いに注目したい。

このニュースに関するつぶやき

  • ベータ対VHSの様な不毛な争いを避けるためには開放が一番。乱立すると、ユーザーが一番困るし、メーカーも生き残れなくなる。
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