治療実態調査で見る関節リウマチ治療の経済学

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2015年06月10日 12:10  QLife(キューライフ)

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世界8か国での関節リウマチの治療実態調査。日本の課題とは?

(左)松原メイフラワー病院院長の松原司先生 (右)日本リウマチ友の会会長の長谷川三枝子さん

 6月は関節リウマチ(RA)患者が1年で最も体調を悪くする時期として、日本リウマチ財団が1989年にリウマチ月間として制定しました。現在日本では70〜80万人がRAに罹患されているといわれています。

 6月のリウマチ月間に先駆け、5月15日にファイザー株式会社では、RAに関するプレスセミナーを開催。昨年末に同社が行った世界8か国のRA患者さんを対象とした治療の実態調査からは、医療現場の実態と患者さんが感じている課題、海外と日本の治療を取り巻く環境の違いなどがあきらかになっています。この調査を監修した松原メイフラワー病院院長の松原司先生と、日本リウマチ友の会会長の長谷川三枝子さんを迎え、講演が行われました。

効果と費用から見る治療満足度

 RAの治療は、生物学的製剤の登場により高い治療効果が期待でき、寛解も夢ではない時代になりました。しかし実際には医師と患者さんの間では、治療のゴールを共有できているとはいいきれないのが現状です。今年55周年を迎えた日本リウマチ友の会会長の長谷川三枝子さんは、患者さんの立場から見たRA治療の課題について話されました。

 2010年のリウマチ白書のデータでは、1年前と比較した現在の症状という質問に対して「よくなった」と答えた人が5年前に比べ4.3%上昇しています。逆に「悪くなった」と答えた人は12.2%も減少しました。その一方で、医療費の自己負担額は増える傾向にあり、自己負担額0円の人は、5年前に比べ6.2%減少し、3万〜8万100円未満という人が8.3%増えています。抗リウマチ薬や生物学的製剤の使用で、治療効果が期待できる一方で患者さんの費用負担が増えていることがうかがえます。

リウマチ治療の進歩と課題

 RA治療は、どういう治療目標を持つかを患者さんと専門医で共有することが重要です。効果が期待できる治療薬が多く登場したことで、RA治療の第一目標は、症状のコントロール、関節破壊の予防、身体機能の正常化、社会活動への参加を通じた長期的な生活の質を最大限にすることになりました。そのためには炎症を取り除くことが必要で、治療の効果がどの程度かをきちんと測定し評価することも大切です。

 「専門医に罹っている患者さんは、生物学的製剤など有効な治療があるため、満足度が高い治療ができます。その一方で、専門医以外で有効な治療を受けていない患者さんは、疾患コントロールが十分ではありません。このコントロール格差を是正しないと日本のRA治療の底上げにつながらないと考えます。そのためには、専門医とかかりつけ医との間の病病(病診)連携をいかにとっていくかということが、今後のRA治療にかせられた大きな問題です。またいかに安く治療するかも患者さんとって重要な問題です。80%の患者さんは、2万円未満の自己負担で治療をしたいと考えています。生物学的製剤を使わない3剤併用療法、生物学的製剤で寛解に到達したら休薬する、投与間隔をあける、減量するなどの方法も考えなければなりません。ここ2〜3年の内にエビデンスが出てきて、経済性を踏まえた治療戦略が確立されてくるでしょう」と松原司先生はいいます。

 効果も高いが費用も高い生物学的製剤は、寛解や低疾患に至る人は現在50%です。実に600億円分の薬が有効に使われていないといいます。こうした状況の打開策として、遺伝子解析が注目されています。生物学的製剤も約80〜90%弱くらいの正確性で、投与前に効果があるかどうかが判別できるという報告があります。まだ遺伝子検査自体のコストが高く、できる人とできない人がいますが、将来、低コストで遺伝子診断ができ、事前に効果が期待できる薬がわかれば、医療費の無駄も少なく済むと期待されます。(QLife編集部)

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  • この記事の「自己負担」って月額(^_^;)?某マイミクさん(^_^;)は6月にして既に医療費が10万超えてるそうですが(^_^;)・・・
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