MUCC・ミヤ、新イベント『COMMUNE』のコンセプトを語る「バチバチ火花を散らすイベントがあってもいい」

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2015年06月26日 13:21  リアルサウンド

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MUCC・ミヤ(G)

 44MAGNUMを筆頭に、REACTION、D’ERLANGER、DIE IN CRIES、L’Arc〜en〜Ciel、MUCC、シド、ギルガメッシュといったバンドを輩出してきたロックの殿堂DANGER CRUEが、2015年に東京と大阪で「COMMUNE」という新しいイベントを始動させることになった。今回このイベントをプロデュースするMUCCのミヤ(G)は、DANGER CRUEの母体となるMAVERICK DC GROUPに長く在籍するバンドのリーダーであり、1981年に産声を上げたDANGER CRUEの「主義 -イズム-」を深く理解する人物であり、DANGER CRUEのスピリットを受け継ぐ者でもある。そんな彼が今回企画するイベントは、昨今の「仲良しこよし」や「みんなでシェア」といった生ぬるいバンドやオーディションとの関係によって成り立つイベントとは一線を画すものであるという。DANGER CRUEのイズムの伝承者として、彼はこのイベントを通して何を訴えようとしているのか。


(参考:MUCCはなぜオーディエンスを驚かせ続けるのか? ミヤ「僕らは無難にやっていけるほど偉くない」


■「ステージ上がったらガチンコで戦えるような感じが常に欲しい」


――もともとこのイベントをやるきっかけになったのは大石さん(註:大石征裕・DANGER CRUE創設者であり現在は同レーベルを擁するMAVERICK DC GROUPの会長)だったと聞いてますが。


ミヤ:はい。去年だったと思うんですけど、サシで大石さんと飲みに行って。その時に『DANGER CRUEっぽいことをやってくれないか?』って言われたんです。そう言われてもDANGER CRUEっぽいことって何だ?って思う人がほとんどかもしれないけど、俺にはすぐ理解できて。


――どんなことだと?


ミヤ:簡単に言うと、昔のDANGER CRUEにはあって今のDANGER CRUEにはないもの。去年MUCCがD’ERLANGERと対バンやったりしたじゃないですか。D’ERLANGERみたいな昔の雰囲気を今も持ったまま活動しているバンドとの絡みがけっこうあって、大石さんはそれ見て何か思ったから俺にそういう話をしたかったんじゃないすかね。


――ミヤくんの言う昔の雰囲気っていうのは――。


ミヤ:MUCCがDANGER CRUEに入るか入らないか頃にはまだあった空気というか。なんつーか……すげぇ怖いガラの悪い先輩たちがいる事務所で――


――打ち上げとかも怖くて。


ミヤ:その空気にビビりながらも〈そんなの関係ねぇよ〉って突っ張ってやる感じとか。だからこそ先輩も後輩もガツガツしてるっていうか、そういうヒリついた感じの雰囲気が今はまったくないな、と。


――それはDANGER CRUEに限った話ではなく?


ミヤ:そうそう。最近のバンドの界隈ってそうじゃないですか。で、もうちょっとお互いがバチバチ火花を散らすようなイベントがあってもいいんじゃねえかと思って。


――「COMMUNE」っていうタイトルは?


ミヤ:村上春樹の小説の中に出てくる集団(註:小説『1Q84』の中に登場するワード)であるんですけど、見ちゃいけないもの入っちゃいけないもの、でも中に入って見てみたい、みたいな感じ。何でもかんでも共有するんじゃなくて、そう簡単に入れない空気だし入らないほうがいいんだけど、だからこそ入ってみたいっていう。それって昔のDANGER CRUEそのものだし。


――DANGER CRUEに入った頃に言ってましたよ。「外から見てると怖い事務所だけど、中に入ると居心地はいい」って。


ミヤ:そんなこと言ってました?(笑)。あと、お客さんありきでやるイベントというより、もうちょっとエンターテインメント一歩手前のノリっていうか。例えばイベントだからって和気あいあいとしたセッションがあるかっていうと無いかもしれないし。予定調和なことはしたくないんですよ。もしセッションやるってなっても、それこそ当日急遽やる、みたいなノリならアリかもしれないけど。


――それこそ「天嘉 ―DANGER―」(註:2002年よりDANGER CRUE主催で始まった年末イベント。その後JACK IN THE BOXと改名し、2011年まで毎年開催された) なんて、そんなノリでセッションやってたし。


ミヤ:『マジっすか!? そんなことやるんですか!?』みたいな感じで。すげえドタバタだったし。


――つまり44MAGNUMとかD’ERLANGERとか、かつてのDANGER CRUEにあった匂いを感じさせるようなイベントをやろうと。ちなみにミヤくんの考えるDANGER CRUEらしさって?


ミヤ:やっぱり……なんていうか、音から感じる『悪さ』っていうか、悪い感じ。本人が悪いヤツかどうかはどうでもよくて、音に『悪さ』みたいなものがあるのがDANGER CRUEっぽさですかね。あとはインディペンデント。今ってインディーズもメジャーも関係ない、垣根のないシーンになってて、それこそ横の繋がりっていうか群れるじゃないですか。でもそうじゃないっていうか。


――どことも群れないレーベルで。


ミヤ:そういうヤツらってあんまりいないと思うんですね。『俺らはどことも群れないよ』みたいなの。でもDANGER CRUEってそういうイメージ。


――それってミヤくん自身が、横の繋がりを大事にして仲良しこよしでやってるシーンに違和感を感じてるってことでもあるんですか?


ミヤ:や、そんなことはないですけど。実際横の繋がりが出来るとすごい楽しいし、人間的な繋がりって大事じゃないですか。けどそれがバンドとして同じステージに上がった時もイコールかっていうと、それは違うよなっていう。どっちかっていうとそこはケンカして仲良くなりたいっていうか。


――発想がヤンキー的ですが(笑)。


ミヤ:どんなに繋がりがあっても、ステージ上がったらガチンコで戦えるような感じが常に欲しいというか。その相手が若いバンドでも大先輩であっても関係なく。


■「『なんかすげぇもん観たな』って思ってくれればいいかな」


――ちなみに「OVER THE EDGE」(註:MUCCが中心となって大晦日に開催されるヴィジュアル系バンドのイベント)は逹瑯くんが中心人物的な存在となって開催されてるイベントですが。


ミヤ:あっちは年末のお祭りですよね。もちろん俺も祭りは好きだし、細かいこと考えないで仲間とワーって盛り上がるのも楽しいですよ。でもこれは違うんですよ。俺のイメージで言うと……『L.S.B.』(註:LUNA SEA、SOFT BALLET、BUCK-TICKの3組で各地を廻ったイベント。1994年開催)ってあったじゃないですか、イベント。あれに近いかな。


――なるほど。あれは決して仲良しこよしのイベントじゃなかったですね。


ミヤ:祭り感はあったと思うけど、それ以上にヒリついた感じのあるイベントだったんじゃないかと思うんですよね。今回のイベントは若いバンドも先輩バンドもいろいろ混ざり合ってるんで、イベントに来るお客さんが全部観終わった時に『なんかすげぇもん観たな』って思ってくれればいいかなと。


――イベントって今みたいな主催者側の意志とか思想がちゃんとないと、お客さんも自分の好きなバンドだけ観て他は観てくれなかったりすると思うんですよね。


ミヤ:そうですね。例えば自分の目当てのバンド以外の時は床に座って携帯いじってる子とかいっぱいいるじゃないですか。もちろん自分が好きなバンド以外のことは知らねぇし好きじゃねぇし関係ねぇって思う気持ちもわかる。でも自分の好きなバンドと一緒に出てるバンドってことは、そこに何かしらのリスペクトがあってもいいんじゃないかと俺は思うんです。実際観て、全然良くないとかかっこ悪いとか思ったらそれでいいんですけど、それすら受け入れる姿勢がない。で、それはお客さんが悪いっていうよりバンドが悪いんですけどね。


――そのイベントに出るっていう意味だったり意図だったり背景にあるものっていうのが伝わってない。


ミヤ:伝わってないし、伝えてないんですよ。で、それはバンドが悪いと思うし。音楽ってそういうものを含めて楽しむものなんじゃねぇの?っていう。自分の好きなバンドの背景にあるものとか横の繋がりとか、そういうところに音楽の楽しみ方ってたくさんあって。それを広げていくことの楽しさって絶対にあって。でもその楽しさをバンド側も伝えていかないと勿体ない。


――だからこうして「COMMUNE」はこういうイベントなんだ、っていうのをわざわざ自分で説明してるわけですね。ミヤくんがこのイベントを主催するイズムみたいなものを。


ミヤ:イズムっていうか、ケンカしてるのをちゃんと観て欲しいんですよ。今思い出したけど、うちらって昔『LOUD PARK』(註:日本最大のメタル・フェス。MUCCは2006年に出演)に出たじゃないですか。あの時お客さんって座ってたりとか棒立ちだったけど、観てくれましたから。『なんだこいつら? 変なバンドがこんなとこで何やってんの?』みたいに思われてたかもしれないけど、それでも観てくれたんで。


■「どのバンドもなにしでかすか分かんない怖さがある」


――発表された今回の出演バンドはどういう経緯で声をかけたんですか?


ミヤ:単純に、ライヴ観て『キてんな』って思ったバンドに声をかけただけっす(笑)。


――この中で個人的に気になっているのはNOCTURNAL BLOODLUSTなんですけど。


ミヤ:こいつらはアホです(笑)。元々ハードコアなのにあえてヴィジュアル系をやってるところが面白い。音はかなりエクストリームです。音に殴られるっていうか、殺される感じ。初めて観たのはギルガメッシュとの2マンだったんですけど、見た目はヴィジュアルなのに音はメタルで、しかもその日はギルガメッシュの10倍良かったです(笑)。


――(笑)そんなMUCCの後輩ギルガメッシュも出演します。彼らも最近はコアでエクストリームな音楽性に振り切っているんで、イベントでもちゃんとケンカが出来るバンドになったと思いますが。


ミヤ:そうですね。たまにユルいところがあるバンドなんで、もしそうだったらオープニングアクトに格下げします(笑)。


――あともう一組の若手、DEZERTですが、これは昔のMUCCを彷彿とさせる雰囲気があるバンドで。


ミヤ:前からバンドの存在は知ってたんですけど、なかなか観に行く機会がなくて。で、ようやく最近になってワンマン観に行かせてもらったんですけど、その会場っていうのがMUCCがDANGER CRUEに入るきっかけになったワンマンをやったO-WESTで。そんな偶然もありつつ、なんかバンドのバランスがヘンで。良い意味でバンドが落ち着いてないっていうか、空回ってるんですよ。そこがいいなって。ヘンにまとまってたり分かりやすくなってないところとかも。


――摩天楼オペラはどうでしょう。


ミヤ:ヴィジュアルの王道っちゃ王道なんだけど、最近のバンドの中では行き切ってるタイプですね。正統派なんだけどそれを普通にやらない、みたいな。テクニカルだし実力もあるのにそこを武器にしないっていうか。昔のヴィジュアル系のバンドにはけっこういたタイプだと思うんですけどね。


――そしてD’ERLANGER先輩ですが。


ミヤ:世代的に解散ライヴは観てないんですけど、俺の場合、D’ERLANGERきっかけでバンドを始めたっていうのもあって。で、そんな時代の人が未だに活動してるっていうのがまず素晴らしいし、ある意味キてるなって。あと、一音だけでノックアウトするみたいな威圧感があって。曲がどうこうよりも各プレイヤーの出してる音で殴られる感じがすごい好きで。


――音の基本姿勢がケンカ腰で。


ミヤ:そう。で、ああいう音を今回出る若手のバンドのお客さんにも聴いてもらいたいし。


――トイレに行くヒマもなさそうなイベントになりそうですね。


ミヤ:たぶん観ててすげえ疲れると思いますよ(笑)。どのバンドも問題児っていうか、なにしでかすか分かんない怖さもあるんで。もっと言うと、バンドマンって基本的には人としてクズなヤツが多いと思うんですよ。でもバンドが成り立つのは、そういうダメな奴もいればダメじゃない奴もいて、いろんなタイプのヤツらのバランスで成り立ってるのがバンドで。その関係性とか社会性みたいなのが、曲とかライヴとかインタビューとかに出て来るのが俺は面白いところだと思ってて。で、そういうのをイベントとして観た時に『ヘンな世界を観たな』って思ってもらえればいいなって。(樋口靖幸)


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  • あぁこれは天嘉だ。私の求めてやまなかったイベントが帰ってくる。これで44MAGNUMも出てくれれば文句無しw
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