小学校がこわい症候群 ――入学前の先取り学習についてモヤモヤ考えた

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2015年11月02日 13:02  MAMApicks

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「入学前にできた方がいいこと」

こんな内容のツイートを定期的に目にする。
Twitterでフォローしている人に年長さんの親が多いせいもあるが、彼らの小学校入学に向けてのプロセスを追いながら、来年の自分と重ね合わせている。

乱暴にいうと、ネットで見る情報は、たいてい筆者をこわがらせるものである。

“小学校では泳ぎを教えてくれない”
“先取り学習の是非”
“親の財力で子どもの学力は決まる”

……などなど。


ある夏の日、休日に長男の同級生と会った。
「これからプールの体験行くのよ。●●ちゃんも▼▼ちゃんも行ってるところだよ」
そういうと、親子はスイミングへ向かった。

「ねえ、○○くん、プール行くんだって」
長男に聞いてみた。
「うん、しってるよ、●●ちゃんも▼▼ちゃんも■■くんも▲▲くんもいってるんだよ! △△くんは、ちがうプールにいってるんだよ!」

4歳児ネットワークでは、同級生の習い事情報が共有されているようだった。クラスの半数程度がすでにスイミングに通っていることがわかった。

<小学校って泳ぎ教えてくれないっていうじゃない?>

以前、クラスの保護者間で雑談をしたときのフレーズが、私の中で妙に引っかかっていた。

「……ねえ、プール行ってみる?」

長男は水がこわいようだった。
万が一を考えても、泳げたほうがいいのではないだろうか。

「うーん、いっかい、いって、ちゃんとみないと、きめられないからなあ……」

眉間にしわを寄せながらいっちょまえな返答をする息子に苦笑いしつつ、本人の要望どおり、見学しに行った。

同級生のお母さん方にかまってもらい、ご機嫌で見学する長男。
アイスを食べながら、ときおりガラスの向こうに見える同級生に手をふっていた。

「申し込んじゃいなよ!」
背中を押されて、私はカウンターで申し込み予約をした。
キャンセル待ちで3ヵ月は待つといわれたが、クラスのお母さんたちは「大丈夫、大丈夫! そんなにいわれてもすぐ電話来るから!」と答えた。

電話は、ほんとうに3ヵ月間来なかった。

■英語体験レッスン行脚
長男はある日、マイケル・ジャクソンに憧れるあまり、「あめりかにいきたい!」と言い出した。そのためには英語が必要だと告げると「えいご、しゃべりたい!」という。

筆者の居住区では小学校1年生から英語の授業がある。

未就学児からの英語学習については、自分自身が3歳から習っていた経緯もあるし、今からやっていても別にいいのでは?という考えに落ち着いた。

私のころは英語を話す幼児が珍しく、いじめの対象になったが、この近辺は国際化も進んでいるし、まあ大丈夫だろう。

「鉄は熱いうちに打て」とばかり、通える距離の中から体験レッスンを2ヵ所申し込むことにする。

・家からものすごく近い、日本人講師のレッスン
(→近すぎて、合わなかった場合気まずいかも)
・家からバスで15分ほどかかる、外国人講師のレッスン
(→遠いのがネックだが、ネイティブの指導)

初日は近所にある日本人講師のレッスンを受けた。
アットホームな教室で、地元の小学生も通っており、学校ではどうなのかという話も聞くことができた。

「またいきたい!」

体験レッスンは親同伴だったが、とても楽しそうにしていた。


翌日は外国人講師のレッスンを受けにいった。

「Hi!」

ひとしきり説明が終わると、外国人講師がやってきて、長男の横に座った。
英語で話しかけてくる講師に対して、だんだん、長男の殻が閉じていくのを察知したのだ。

ソファーの背もたれに顔を伏せるようにして、長男は完全に心を閉ざした。
がんばって次々話しかける外国人講師・トニー(仮名)。

なにを話しかけられても、ソファーに顔をうずめて微動だにしなくなった長男。
間がもたなくなって、つらくなる私……。

もうここに来ることはないな、と思ったが、参考までに、なんでイヤだったの?と聞いてみた。
「えいごで、いきなりしゃべってきたから」。

……そりゃそうだよ! 英語しゃべる国の人なんだから!


これですんなりレッスン先決定かと思いきや、土壇場で長男は親から離れてのレッスンに不安を感じたようだ。

すると先生が、4歳の子を連れてくるので、もう一回体験レッスンに来てはどうかと誘ってくれた。

「女の子なんだけど、大丈夫かしら?」

……むしろ歓迎である。
私には、この先の展開が想像できたからだ。

そして当日。
連れて行く→引き渡す→女の子と目が合う→私に向かって「じゃーね!」という長男→親退席

──予想通りの展開ではないか。

レッスンは、おおむね順調にできたそうだ。
帰りに長男は歩きながらこう言った。

「あー、これで、すきなおんなのこが、7にんになっちゃったー」

この件について「はあ、そうですか」以外の適切な返答があったなら、誰か教えて欲しい。

■モヤっていてもしかたないので聞いてみた
長男の進学予定校では、いったいどのような指導を行うのか。
考えていてもしょうがないし、入学説明会で聞いてから初めて間に合わないことがあってはいけないので、問い合わせてみることにした。

校長先生がおっしゃるには、小学校入学までにできたほうがいいことは以下のとおりだ。
学校個別のものも含まれたので、汎用的な部分をピックアップした。おそらくこれは、最低限を指していると思われる。

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・排泄、着替え、食事などが一人でできるように。
・自分のものがどれかわかるようにしておく。
・文字は書けるに越したことはないが、名前が読めるように。
・数字も10までは数えられるように。
・給食は20分で食べられるように。
・和式トイレの練習。
-----

「小学校で泳ぎを教えない」はある意味間違っており、「小学校の授業だけでは泳げるようにならない」と説明された筆者であった。夏のプールへの参加を勧められた。

英語について、「外国人は来るが、担任が横についているから怖くて生徒が泣いた例はない」との回答だったが、“トニー”の前例があるので、長男がどんなリアクションをするのか、親としては心配であり、ちょっと楽しみでもあるのだ……。

■子の学力は親の財力に左右されるのか
“小学校までに、いったい、なにをどこまでできていればいいのだろう”
私が気になっているそれは、ミニマムの話ではなく、アベレージの情報なのだ。

時々家に送られてくるDMや、Facebookのターゲット広告で表示される、幼児用教材の広告に心が揺れる。

Twitterでも、同い年の子を持つ親御さんたちが習い事に通わせていたり、通信講座をやっている様子が垣間見られる。

「先取り学習の是非」については定期的に話題に上がるようだが、「まだ習っていない解き方をして怒られる」というのは、筆者自身も過去に経験があるし、予習しすぎて授業が退屈だった思い出もある。

しかし、先取り学習なしにまったくの“丸腰”で入学した後、学力が追いつかずにおいていかれた例も聞いた。

子育てが“個体による”ことは、筆者もわかっているつもりでいる。隣の子の学習法がわが子に合うとは限らない。

お金をかければいくらでも安心は買えるのだろう。
しかし、第二子が生まれて保育料は増え、英語の初期費用で2万円ほど支払った。プールに行くようになるとまた3万ほど初期費用がかかる。

“先立つもの”はもう残っていない。


先日この記事を読んだ。

保護者の所得は学力にどれほど影響があるのか?
http://synodos.jp/education/15429

これは、2013年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果について、多様な観点から学力に影響を与える要因を分析する「きめ細かい調査」を行ったのだが、その調査報告書についての解説である。

“親の財力が子の学力に影響する”

これを言われるともう、どうしたらいいのかわからない。
しかし、データが示すとおり、家庭の経済力が低ければ学習機会が奪われがちなのは理解できる。ごもっともだが、じゃあどうしたら?という気分なのだ。

そこで元データである報告書(250ページほど×2つ)を読み進めたのだが、家庭学習も学校教育も、「よく子どもに目をかけたほうが伸びる」という結果に筆者は受け取れた。

また、「振り返り学習に効果がある」というデータが出ている。予習も大事だが復習に重きを置いたほうが、効率はいいのかもしれない。

2014年に公開されたデータによれば、お金がなくても親の学歴が低くても、学力向上のために以下のことは実践できそうである。

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・親子ともに規則正しい生活を送り、親がしっかり宿題を見て、勉強を促す
・家族でアート鑑賞や図書館などの文化的なものに勤しみ、本や新聞を読む習慣をつける
・テレビ・ゲーム等は時間を決める(いわゆる『ゲームは一日1時間』)
・子どもとよく話す
・子どもの自主性を尊重し、ほめて伸ばす育児を行う
・親は学校だよりに目を通し、学校の教育方針などをよく知っておく
・近所づきあいは大事
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これらに共通するのは「大人がめんどくさがっちゃダメだ」ということではないだろうか。
親がだらけると、すぐ崩壊しそうなことばかりである。

子どもの将来について、親が選択肢を広げる手伝いをできるのは、きっと“学力”と“資金”なのだろう。そして、それらはおそらくイコールの関係だ。

上記を実践してどうなるかはわからないが、せめて「本読みの習慣」と「復習」で金銭面がカバーできることを願いたい……。

ワシノ ミカ
1976年東京生まれ、都立北園高校出身。19歳の時にインディーズブランドを立ち上げ、以降フリーのデザイナーに。並行してWEBデザイナーとしてテレビ局等に勤務、2010年に長男を出産後は電子書籍サイトのデザイン業務を経て現在はWEBディレクター職。

このニュースに関するつぶやき

  • これは…最近の幼稚園・療育指導があせって「あれもできなきゃ・これもやらなきゃ」と詰め込み・目がつり上がっているように感じています。なので幼稚園が先取りをやめれば〜おのずと小学校側が丁寧な指導をされるのでは。
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