子どもの左利きの矯正に揺れる左利きを矯正された母の憂鬱

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2016年03月23日 12:02  MAMApicks

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「○○ちゃんはたぶん、左利きなんだよね」と初めて言われたのは、娘がまだ1歳の頃、
支援センターの一時保育に通っていたときのことだった。

当時、丸や星型のブロックをはめこむパズルに夢中になっていた娘は、いつも左手にブロックを持って遊んでいたらしい。

「私がブロックをハイって渡すと、左手でつかむから、きっと左利きなんだね」と職員さんに言われて、そう言われるとそうかもしれない、でもあんまり意識していなかったな、と少し驚いた。

娘と一番長くいるのは私だけど、家事をしたり、用事をしながらということも多いから、娘の行動を観察するだけの時間はあまりなくて、なかなか気がつかなかった。

そのことを夫に伝えると、「そうかもね、階段上るときも左足から出てるから」と、私の知らないところでよく娘のことを見ていることにこれまたびっくりな出来事だった。

「今どき左利きって矯正するものなのかな……どうするのがいいんだろう?」とたずねてみると、「別に修正する必要はないと思うけど。カートとかジミヘンみたいでカッコいいし」と、夫はとくに問題視していない様子。

カートというのはアメリカの人気バンド、ニルヴァーナのボーカル兼ギタリスト、カート・コバーンのことで、ジミヘンというのは1960年代に活躍した伝説的ミュージシャン、ジミ・ヘンドリックスのこと。

共に左手でギターを演奏することで知られているカリスマ的存在。ただ、2人とも27歳という若さで亡くなっているため、例としては若干「縁起でもない」感が否めなかったが……。



ここで検索魔の筆者、すぐさま「子ども 左利き 矯正」などで調べてみた。
ざっと見た感じ、「左利きはダメ!絶対に矯正しましょう!!」みたいに強い論調は見当たらず、「それもひとつの個性です」「子どもの成長に応じて」など、ふんわりとした口調が多いなという印象だった。

ただ、一点気にかかったのは、医療従事者による「医療器具はほとんどが右利き用にできているから、医者を目指す上で左利きは苦労します」という意見だった。

まあ、うちは医学部にやるだけのお金もないし、そんな心配するのも取り越し苦労だよね、と思いつつ、もしかしたら娘が大学生になる頃には奨学金制度が進化していて、勉強さえ頑張れば医学部に進学できるかもしれない、そんな可能性の芽を摘んでもいいのだろうか……とまた妄想は膨らむ。

しかし、現在左利きの友人が言うことには、「無理やり矯正するのは絶対やめておいたほうがいい」とのこと。

これには筆者も賛成で、じつは私も幼少期に左利きを矯正されて今に至る。

子どもの頃は、食卓で兄が向かいに座っていて、兄が右手でお箸を持っているのを見て、鏡合わせのように左手で持ち出したのがきっかけ、と母は言っていた。

すぐさま矯正されたのだが、なかなか右利きにできず、とくに鉛筆の類は左手しか使えなかった。だけど、左手を使うと怒られるのがこわくて、絵を描きたいときなどは扉やカーテンを閉め切って母に見つからないようにしていた。そこから幼稚園での生活もあったのか、いつの間にやらお箸と鉛筆は右手を使えるようになっていた。


そして大人になった今、完全な右利きというわけではなく、両利きに近い状態だ。
というのも左手の方が圧倒的に力が強く、ボールを投げたり、歯を磨いたりは左手でないとできない。

母は、「あなたは小さいときお兄ちゃんの真似ばっかりしていたからねえ」と当時のことを語るが、握力が右左で倍ほども違うのは、どう考えても先天的に左利きだったのではないだろうか。

それを「左手で字を描くのは大変だから」と矯正されていたのは何だったのか、という気がしないでもない。

しかし、身のまわりの人々にきいてみると、現代は「左利き?全然問題ないよ!」と割と寛容なムードでもある。

娘がスプーンやフォークを使い始めの頃、角度がついていて子どもも使いやすい!と謳った商品を使っていたのだが、左手で持つと角度が反対に向いて食べにくくなってしまう。

その様子を見た保育ママさんからは、「このスプーンを使わせたら左手ではうまく食べられないから、普通のスプーンにしてあげたほうがいいかも」と連絡があった。

「別に今は絶対右利きっていう時代ではないし、むしろ両方使えたほうが脳にも刺激があっていいと思うよ」と、左手を使うことに何の異存もないようだった。

また、4月から通う保育園の面談で、気になることはありますか?と聞かれたので、どうも左利きっぽいんです、と伝えたら、「左利きの園児さんもいるし、左利き用のハサミもありますよ」とのことだった。

保育園側としては、こちらの希望に沿ってくれるようで、右利きにしたいのであれば矯正するし、もちろんそのままでも構わないし、しばらくの間、成長を見守るでもいいし、とたくさんの選択肢を用意してくれている。

「今日は右手でご飯を食べていました」「今日は左利き用のハサミを使っていました」など、日々連絡帳でのやり取りで伝えることもできますよ、と言われ、この件は少し持ち帰ることにした。

保育園の受け入れ姿勢に安心すると同時に、「ご両親はどうしたいですか?」と聞かれると意外と即答できないな、とこのところ少し揺れている。しかし、私がウンウン考えるほど、さしたる問題ではないのだろう。

ランドセルひとつとっても、男児=黒、女児=赤、というかつてのルールはもはやなく、カラーバリエーションに富んでいる。レゴも男の子用のおもちゃではなくなった。バービー人形も従来のモデル体型のものばかりではなく、少しふっくらしていたり、小柄なドールが発売しているらしい。

家庭環境やジェンダーや、ありとあらゆることに「多様性」を受け入れていこう、子どもたちにもそのことを教えていこうという時代に、たかだか右利き左利きなんて、本当に取るに足らない選択なのかもしれない。

ただ、何かと決め付けられるのは嫌いだったのに、「好きに選んでもいいよ」と言われると結構難しいものだな、というのも正直なところだ。

できれば私たち親が決めるのではなくて、娘に選ばせてあげたいが、まだ右利き左利きの概念も理解していないようだし、自然に任せるしかないのかもしれない。

これが、「今日はピンクか水色か、どっちのズボンにする?」とか「今日のおやつはビスケットかおせんべい、どっちがいい?」なら即決なんだけどなあ……。

真貝 友香(しんがい ゆか)
ソフトウェア開発職、携帯向け音楽配信事業にて社内SEを経験した後、マーケティング業務に従事。高校生からOLまで女性をターゲットにしたリサーチをメインに調査・分析業務を行う。現在は夫・2012年12月生まれの娘と都内在住。

このニュースに関するつぶやき

  • 病気治療の影響で右手に力が入らなくなった時期があって、そんときは両利きだったらなあ、と思った次第。折角左でできるのなら、右に矯正(左を捨てる)よりも、右「も」使えるようにしたほうがよいかと。
    • イイネ!91
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