三池監督&中島かずきのSF歌舞伎! ヤバそうだけど、やっぱり気になる実写映画版『テラフォーマーズ』

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2016年04月29日 13:01  おたぽる

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おたぽる

テラフォーマーズ

 人間大に進化を遂げた昆虫と人類との壮絶な殲滅戦を描いた人気コミック『テラフォーマーズ』が実写映画化された。『海猿』シリーズの伊藤英明、『あしたのジョー』の山下智久、ハリウッドで活躍するアクション俳優ケイン・コスギら主演級の男優たちが探査ロケットに乗り込み、火星で異常繁殖した昆虫“テラフォーマー”の大群を相手に血と体液を吹き出しながら肉弾戦を繰り広げる。また、武井咲、菊地凛子、小池栄子、篠田麻里子ら女優陣のバストを強調した宇宙服もいい感じだ。日本での映画化は無謀と思われていたこの壮大なスケールの映画化企画に挑んだのは、これまで『ヤッターマン』『クローズZERO』などアニメ作品やヤンキー系コミックの実写化作品をヒットさせた三池崇史監督である。



『オーディション』『殺し屋1』といったバイオレンス作品で世界に名を轟かせた後も、尋常ならざるハイペースで作品を撮り続けている三池監督。アクション、ホラー、時代劇などジャンルを問わずに活躍しているが、膨大な数に及ぶ三池作品はあるひとつの人生哲学で貫かれていることに気づかされる。それは三池ワールドは勧善懲悪の二元論の世界ではなく、強いものが生き残る弱肉強食な野生の王国だということだ。言い換えれば、三池作品では主人公が生き残るのではなく、最後まで生き残ったヤツが最強であり、歴史(ドラマ)を物語ることができるというスタンスとなっている。



 火星で驚異的に進化した昆虫と、地球では虫ケラ扱いされてきたクズ人間たちが生き残りを賭けて戦うという原作のストーリーラインは、Vシネマ業界をサバイバルしてきた三池監督を大いに魅了した。過酷な環境に適応して進化を遂げた昆虫=テラフォーマーこそ、進化論上の最強のサバイバーだ。映画では2m大のテラフォーマーをCG合成&モーションキャプチャーで表現しているが、このモーションキャプシャーのアクターを務めたのが三池監督。学生時代はラグビー選手として鳴らし、監督になってからも真樹日佐夫氏の空手道場に通った武闘派。三池組のアクションシーンでは三池監督がまずキレッキレなお手本を見せることでも知られているが、本作ではモーションキャプチャー用スーツを着た三池監督がどれだけテラフォーマーに思い入れを込めているかがうかがえる。



 三池監督を『悪の教典』の公開時にインタビューした際、「主人公のハスミンは共感能力のないサイコパスだけれども、もしかしたら織田信長みたいな歴史上の英雄たちもハスミンと同じようなタイプの人間だったのかもしれない。そういった少数派の人間こそが、新しい時代を作っていくのではないか」と語ってくれた。伊藤英明が主演した『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』も『悪の教典』も、山田孝之や小栗旬がブレイクを果たした『クローズZERO』も、武井咲が歌い踊る『愛と誠』も、どれも三池監督から見れば進化していく過程で自然淘汰されていく人類というひとつの種の長い長い物語の一瞬の出来事に過ぎない。三池監督の頭の中は、まるでブラックホールのように底がない。



 今回、三池監督と初タッグを組んだのは、『天元突破グレンラガン』や『仮面ライダーフォーゼ』などのSFアニメ&特撮ドラマで知られる脚本家の中島かずき氏。劇団☆新感線の座付き作家でもあり、『阿修羅城の瞳』『髑髏城の七人』といった伝奇ものの舞台は高い評価を得ている。三池監督と化学融合した本作は、SF映画というよりもSF歌舞伎といった趣きがある。伊藤英明はスズメバチ、ケイン・コスギはゴミムシ、加藤雅也はアリに早変わりして、テラフォーマーと激突する。中でも山下智久扮する孤高のキックボクサーはバッタのDNA移植手術を受けているため、変身した姿はほぼ仮面ライダー状態。三池監督が『仮面ライダー』シリーズを撮ったら、『仮面ライダー龍騎』以上の壮絶サバイバルものになりそうだ。



 荒涼とした火星の原野を舞台(ロケ地はアイスランド)に、どちらかが絶滅するまで戦い続ける火星探査船バグズ2号の乗組員とテラフォーマーたち。やがて極限状態の中でクズ人間だったバグズ2号の乗組員たちの間に同士愛が芽生え、さらに人間とテラフォーマーたちとの間にもお互いを戦士として認め合う気配が生まれていく。そして、三池崇史ファンとしては見逃せないクライマックスが待っている。三池作品ではイモ虫を思わせるキャラクターが度々登場してきた。『十三人の刺客たち』ではそれこそ手足のない“だるま女”が、『悪の教典』では染谷将太がスマキ状態のイモ虫人間にされてしまった。人間社会に適用するべく発達してきた手足をはじめとする機能を失ったイモ虫人間は、次々と量産化されていく三池作品の中でじっと羽化するチャンスを狙っていた。そのイモ虫が今回はついに羽化して、スクリーン上に変身した姿を現わす。本能の赴くままに成虫化したイモ虫は、あまりに美しく、そして妖しい。まるで“胡蝶の夢”を見ているかのようだ。



 地球というスケールに収まり切れず、宇宙で花開いた三池ワールド。三池作品の信者たちは、三池流進化論の行く末をその目で確かめなくてはならない。
(文=長野辰次)



『テラフォーマーズ』
原作/貴家悠、橘賢一 脚本/中島かずき 監督/三池崇史 出演/伊藤英明、武井咲、山下智久、山田孝之、ケイン・コスギ、菊地凛子、加藤雅也、小池栄子、篠田麻里子、滝藤賢一、太田莉菜、福島リラ、小栗旬 配給/ワーナー・ブラザーズ映画 4月29日(金)より全国ロードショー 
(c)貴家悠、橘賢一/集英社 2016映画「テレフォーマーズ」製作委員会
http://wwws.warnerbros.co.jp/terraformars


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  • TVの予告編を見る限りでは、特撮があまりにショボくて、ビックリした。
    • イイネ!2
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