乃木坂46、夢アド、寺嶋由芙、BiSH、放プリ……アイドルソングの新作にみるシーンの“成熟”

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2017年03月21日 13:03  リアルサウンド

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乃木坂46『インフルエンサー』(Type-A・DVD付)

 日本のエンターテインメントの中心を担うようになり早数年。楽曲、ビジュアル、活動スタイルを含め、女性アイドルシーンは成熟の時期を迎えている。今回は女性アイドルの新作から、音楽性の充実ぶりを実感できるアイテムを紹介。アイドルソングはいまや(アニソンと同じく)優れたクリエイターたちによる音楽の実験場となっているようだ。


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 乃木坂46史上・最高速ダンスによるMVも話題を集めている新曲「インフルエンサー」の作曲は、「フライングゲット」(AKB48)、「SHEの事実」(AAA)などを手がけたクリエイター、すみだしんや。スパニッシュのテイストを全面的に取り入れた構成は歌謡曲の王道スタイルのひとつ(例/KinKi Kids「雨のMelody」)だが、“ブンブンブン”を繰り返すインパクトのあるサビ、メンバーの声を有機的に重ねたコーラスによって、懐かしくて新しいアイドルポップスとして成立している。歌詞のテーマは、好きな人から受ける影響。<お気に入りのもの 手にすれば/時間を共有できるんだ>というフレーズは所有から共有へと移り変わったエンターテインメントの在り方を示唆しているようで興味深い。


 メジャー1stシングル曲「Bye Bye My Days」(2015年3月)から最新曲「アイドルレース」(2017年1月)までを網羅した、夢みるアドレセンスのベスト盤『5』。志摩遼平(ドレスコーズ)が作詞作曲を手がけた70年代風ディスコ・ポップ「おしえてシュレディンガー」、首藤義勝(KEYTALK)の得意技が炸裂するバウンシーなアッパーチューン「ファンタスティックパレード」、作詞作曲を川谷絵音、編曲を冨田恵一が担当した、憂いを帯びたエレクトロナンバー「大人やらせてよ」などバンド系を中心にした多彩なクリエイター陣による楽曲が並ぶ。大森元貴(Mrs. GREEN APPLE)、こやまたくや(ヤバイTシャツ屋さん)など、新進気鋭のアーティストも参加。旬のクリエイターをいち早く採用するスタンスは、SMAPの方法論にも通じている。


 古き良きアイドル像を自覚的に継承する寺嶋由芙の2017年最初のシングル『天使のテレパシー』は、80年代アイドルポップス直系のノスタルジックな胸キュンナンバー。作曲は1994年生まれの宮野弦士。寺嶋の1stアルバム『わたしになる』の表題曲を手がけた彼の洗練されたコード構成、既視感を上手く取り入れたメロディセンスは、この曲でもしっかりと発揮されている。<ピッピッピ/それでわかるでしょ>という可憐な歌詞(作詞は真部脩一/進行方向別通行区分/Vampillia)も、彼女の上品な声にぴったり。“まじめな”アイドル。まじめにアイドル“を掲げる彼女のスタイルは、表面的なギミックや演出ではなく、楽曲の良さによって担保されているのだ。


 BiSの次世代グループとしてスタートしてから約2年。ライブハウスを中心にしたロックバンドのような活動、99秒のメジャーデビューシングル曲「DEADMAN」、渋さ知らズオーケストラとの対バンなど“楽器を持たないパンクバンド”を軸にしたアクションを続けているBiSHのニューシングル『プロミスザスター』は、心地良い疾走感をたたえたバンドサウンド、ピアノ、ストリングが印象的なアッパーチューンに仕上がっている。BiSHの特徴でもある刹那的な破壊力を持ったロックチューンではなく、より幅広い層にアピールできるナンバーなのだが、こういう真っ当な曲を歌うとなぜか違和感(←褒めてます)を感じてしまうところがこのグループのおもしろさだろう。メンバー一人ひとりの声の魅力を引き出す松隈ケンタのソングライティングも絶妙。


 “16時になると制服姿からプリンセスに変身する学園アイドル”というコンセプトを掲げた放課後プリンセスの1stアルバム。タイトルは『My Princess』。デビュー以降、古今東西のプリンセス(シンデレラ、マリーアントワネット、楊貴妃、「ローマの休日」のアン王女など)をモチーフにした楽曲を表現してきたメンバーが“僕だけのプリンセス”になるーーというのが本作のテーマだ。この設定に共感できるかどうかで本作の評価が決まるような気がするが、ときに切なく、ときに愛らしいロマンティシズムを描き出す楽曲はかなりの高水準。特にアニソン、アイドル楽曲を数多く手掛けている矢吹香那の作曲によるノスタルジックなミディアムバラード「Memories〜君と僕の交差点〜」は佳曲だと思う。(森朋之)


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