TWICEは“ポップミュージックの未来”を示している 日本デビューへ寄せる期待

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2017年03月25日 13:03  リアルサウンド

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TWICE『WHAT'S TWICE?』

 K-POPシーンに、また新たなムーヴメントが巻き起こっている。5人が韓国出身、3人が日本出身、1人がCHINA-Tainan出身の9人組・TWICEは、これまでのK-POPの潮流を受け継ぎつつ、ポストEDMへと向かう最新型のダンスミュージックともリンクし、さらにはアイドルポップスの在り様までも更新している、期待の大型新人グループだ。すでに日本の女子高生の間で、彼女たちの振り付け「TTポーズ」が人気になっていることで、彼女達の存在を知っている方も少なくないだろう。6月28日の日本デビューに先駆けて、K-POPの最終兵器・TWICEの音楽的魅力を改めて紹介していきたい。


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 K-POPは近年、日本の音楽シーンにも大きな足跡を残してきた。少女時代とKARAは、2011年『第62回NHK紅白歌合戦』への出演を果たすなど、日本中に一大ムーブメントを巻き起こし、iKONは2016年の『第58回日本レコード大賞』で新人賞を受賞、EXOは女性ファッション誌『non-no』と『RAY』の表紙をダブルで飾る人気ぶりで、BIGBANGのコンサート動員力はもはや国内トップクラスだ。その華やかでスタイリッシュなパフォーマンスは、多くの若者、特に女性たちから熱心な支持を集めてきた。


 しかし、筆者も含めたポップミュージックを愛する者にとって、K-POPがもたらした最大の衝撃は、実はそのサウンドにおける「音圧」だった。山下達郎氏も言及していたが、K-POPのマスタリングは革新的で、少女時代が2009年に発表した「Genie」は多くのリスナーを驚かせた。彼女たちは、アイドル的な魅力を保ちながら、音の鳴り方が命と言える最新のダンスミュージックと同じ音圧を手に入れてしまったのだ。まさに、K-POPが“世界水準”のポップミュージックとなった瞬間だった。そして、この度のTWICEの登場によってK-POPはさらに驚くべき進化を遂げたのである。


 TWICEは、2015年に新しいガールズグループをデビューさせるというTVのオーディション番組『SIXTEEN』から誕生、多国籍でありながら自然体のキャラクターが大受けし、同年10月にタイトル曲「OOH-AHH하게」含む1stミニアルバム『THE STORY BEGINS』で韓国デビュー、新人女性歌手の中でアルバム売上枚数1位を記録し、各種ストリーミングでも圧倒的な再生数を誇った。そして2016年4月に満を持してリリースされた2ndミニアルバム『PAGE TWO』も大ヒットし、タイトル曲「CHEER UP」のMVは、K-POP史上最短でYouTubeの再生回数一億回を記録、その年の韓国で最も聴かれた楽曲となった。その勢いのまま、同年10月に発表された最新ミニアルバム『TWICEcoaster : LANE 1』のタイトル曲「TT」も、音楽チャートの一位を総ナメし、自らのYouTube再生記録をまたまた塗り替えてしまう。インターネットの爆発力も味方に付けたTWICEは、たった一年でモンスター級の国民的アイドルグループになったのだ。


 愛嬌溢れるキャラクターと抜群のルックスが、人気の一翼を担ったのは間違いない。しかし、そのアイドル性を本当に支えているものは、なんといっても楽曲の力ではないだろうか。“TWICEサウンド”としか言いようがないジャンルレスな楽曲たちは、あらゆる音楽が並列で聴かれるようになったストリーミング時代に鳴るべくして鳴らされた新たなポップミュージックであり、TWICEはその旗手としてこそ、輝かしい魅力を放っているのである。


 「OOH-AHH하게」では、ヒップホップからチップチューン、そしてマジービートまで織り交ぜ、そこにSPICE GIRLS的エッセンスをぶちこんだような究極のごった煮サウンドが展開。ポップミュージックのおいしいところを濃縮したような楽曲は聴きどころ満載である。TWICEの人気を決定づけた「CHEER UP」では、さらにフューチャーベースとトラップの要素が追加されただけではなく、ハナ肇とクレージーキャッツもかくやというほどコミカルなギミックサウンドが飛び交う。もし大瀧詠一氏が存命なら自身のラジオ番組『ゴー・ゴー・ナイアガラ』で絶賛しただろう。続く「TT」ではそのうえ、メロディに80年代を席巻したニューロマンティック系の泣きメロがトッピングされている。最新のダンスミュージックからクラシックロックまで、これ以上にミクスチャーしたら楽曲自体が成り立たないほど、絶妙なバランスだ。このめまぐるしい「ストリーム感」こそが、TWICEサウンドの秘密であり、彼女達が時代のアンセムとして熱狂的に支持されている理由だろう。


 ある意味、禁じ手まみれの無手勝流なサウンドがポップスとしての普遍性をもってしまう奇跡。TWICEのサウンドアプローチに最も近しい手法を採ったアーティストを、これまでのポップス史から探すとしたら、それはThe Beatlesではないだろうか。プロデューサーのジョージ・マーティンから「無茶苦茶」と言われながらも、常に時代の最先端の音と戯れつづけた、アイドルの中のアイドル。TWICEの既発曲のフレッシュさに、The Beatlesの実験精神を感じてしまうのは、きっと筆者だけではないはずだ。


 TWICEは、The Beatlesが「She Loves You」のラストで六度の和音をぶち込んだように、大瀧詠一氏が最先端のリズムを追求した末に“音頭”に辿り着いてしまったように、「最新のダンスミュージックをどう解釈し、自らの音に取り込むのか?」という命題に対し、音圧だけではなく、明快かつ斬新な手法でも応えてみせた。


 かつてThe Beatlesは『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』という世界初のコンセプト・アルバムで、録音芸術の新たな可能性を提示した。TWICEの国境を越えたメンバー構成、あらゆるダンスミュージックを横断していく音楽性は、まさにストリーミング時代ならではの圧倒的な「自由」を体現するものとして、これからのポップミュージックのあり方を指し示している。(文=ターボ向後)


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