『あなたのことはそれほど』はなぜ共感できないのに人気なのか? 不倫経験者が見るポイント

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2017年05月30日 19:03  リアルサウンド

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『あなたのことはそれほど』(火曜10時/TBS)が、視聴率を回復させている。初回放送時に11.1%だった視聴率は、第2話以降、9%台を推移していたが、5月23日に放送された第6話では過去最高の11.5%を記録した。(すべて関東地区平均、ビデオリサーチ調べ)いくえみ綾の同名漫画を原作とした本ドラマは、W不倫の泥沼を描いており、波瑠演じる主人公・美都を始め、登場人物たちのどこかズレた倫理観に、視聴者からは批判の声も多かった。しかし、「登場人物たちにまったく共感できない」とは言われながらも、ドラマとしては徐々に人気を集めている模様だ。


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 本作が人気を集める背景を、知人に不倫カップルが多く、自らも不倫経験を持つというライターの鈴木雅子氏(仮)は、次のように分析している。


「本作の不倫の描き方は、表立って『共感できる』と言える人はあまりいないものの、実は内心、身に覚えがある人や、周囲でそうした関係性を目にしている人も多いのだと思います。一人一人のキャラクターに感情移入できるわけではないけれど、ちょっとしたセリフややり取りの中に、ふと自分にも当てはまる瞬間があったりして、つい観るのをやめられなくなってしまうというか。たとえば、美都と香子の関係性。香子は美都の不倫を咎めるのだけれど、美都は聞く耳を持たずに突っ走る様子はすごくリアルです。実際、自分は不倫をしたことがなくても、知り合いの不倫に釘を刺した経験はあるという人は、決して少なくはないはず。また、美都が幼少期の占いに囚われ続けている感じも、わかる人にはわかるのでは。それが恋に関することではなくても、いまも捨てられない自分だけのルールのひとつやふたつは、誰しもが持っているでしょう。登場人物たちの関係性をさまざまな角度から照らすことで、共感はできずとも、決して遠い世界の話だとは思わせないところが、本作が視聴者を惹きつけるポイントなのかもしれません」


 また、恋愛と結婚を“別物”として割り切れない心情は、理解できると鈴木氏は続ける。


「結婚して数年も経てば、相手に対して恋心を抱けなくなるのはごく普通のことですが、それを受け入れられない心情は、多くの人が理解できるのではないでしょうか。もちろん、お互いに信頼関係と愛情を育み、仲の良い夫婦として過ごせるのがベストですが、そうした“理想の夫婦”になれるのは、実は一握りなのかもしれません。美都のように子どもがいない夫婦で、すでに相手への感情が冷めているのであれば、次の相手を探すという選択肢も現実的にありうる。そう考えると、主人公たちは浅はかだとは感じるものの、他人事として笑って見ることもできません。既婚者同士が、同じものを背負っているからこそ惹かれ合うケースは世の中にたくさんあって、ふと隣を見れば、不倫カップルはありふれています。少なくとも、隣人の情事を覗き見ているようなゴシップ的な楽しみを、本作に見いだすことは可能でしょう」


 『逃げるは恥だが役に立つ』『カルテット』と、名作ドラマが続く同枠においては異質な作品といえる『あなたのことはそれほど』だが、登場人物の心情に寄り添うだけではない、新たなドラマの見方を提供する作品であることは確かなようだ。(松下博夫)


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  • フィクションなんだから共感できなくても話が面白ければ見るし、共感できても話がつまらないならみないな
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