綾野剛と二階堂ふみ、禁断の恋の行方は? 『フランケンシュタインの恋』最終回レビュー

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2017年06月26日 12:42  リアルサウンド

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 「人間を殺すかもしれない怪物は、人間に恋をしてはいけないのでしょうか?」


(参考:綾野剛、ストイックな役作りのすごみ 『フランケンシュタインの恋』『武曲 MUKOKU』の演技を読む


 深志研(綾野剛)が、大好きなラジオ番組のお悩み相談に投稿したこのメッセージがきっかけとなり、“フランケンシュタイン”と津軽継実(二階堂ふみ)の恋の歯車は回り始めた。ラジオを通した研の津軽への告白。研は、津軽の先祖であるサキ(二階堂ふみ・二役)と恋をしていた記憶を彼女に語る。本当の名前は、山部呼六(綾野剛・二役)であること。伝染病研究所で深志研太郎(斎藤工)の助手をしていた彼は、サキと出会い恋をした。同じく、深志もサキに恋をし、彼女を思い伝染病で死んだ山部を“怪物”として蘇らせた。しかし、怪物となった山部はサキをその手で殺してしまうのだった。120年をかけた恋。山部は深志研として、サキの子孫である津軽を自らの手で目覚めさせた。


 「あなたが好きです。120年前から」。深志研であり、山部呼六。津軽継実であり、サキ。全ての過去と立場を受け入れ、2人はともに歩んでいくことを決める。大学の学食を仲良く食べる2人。記念写真を収める2人。何気なく手を繋ぎ歩く2人。彼はもう彼女に“触れる”ことができる。120年前に自らの手で、彼女を殺めてしまった過去を乗り越えたことを物語るシーンだ。


 しかし、世間の目を気にした研は、再び山で暮らすことを選ぶ。山に木霊する津軽の声を、じっと聞き入る研の姿が何とも切ない。1年後、アカナリカミタケを探しに山に入った津軽。そこに研への思いもあったのだろう。津軽はキノコを見つける代わりに足を踏み外してしまう。そこに助けに現れたのが研だった。120年前、サキが事故を起こしたシチュエーションと奇しくも同じだ。「私はずっと、あなたのことが好きです。会いたかった」。瞳にいっぱいの涙をため、彼女は研にそう伝える。二階堂の感情溢れる演技が、そのセリフに深みを持たせる。


 ドラマのラストには、「数十年後」から始まるエピローグがあった。科学が発達した未来、ジェット機が研のいる山へと降り立つ。稲庭聖哉(柳楽優弥)と美琴(川栄李奈)の孫が、研の元に新しい菌と研究記録を取りに来るのだった。研は、自身の菌を研究する博士になった。医師になることを夢見ていた山部呼六は、難病をひとつでも失くすことに携わることができた。命を繋いでいくこと。それは津軽の夢でもあった。未来には、津軽はもういない。彼が選んだ道は亡くなった彼女を思い、生き続ける“怪物”として命を繋いでいくことだ。


 研の「人間に恋をしてはいけないのでしょうか?」という思いは、様々な人々の心を変えていった。相手を思いやること。そうして、また人を好きになるということ。樹木の根に生えた2つのアカナリカミタケが、山部呼六とサキ、深志研と津軽継実のこれからを表しているような気がした。


(渡辺彰浩)


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