Fear, and Loathing in Las Vegasは“ラウド×エレクトロ”の歴史をどう更新した?

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2017年06月26日 15:02  リアルサウンド

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 Fear, and Loathing in Las Vegasの<ワーナーミュージック・ジャパン>移籍第1弾シングル『SHINE』が、オリコン6月26日付週間CDシングルランキングで初登場7位にランクインした。シングルとしては2015年5月発売の『Starburst』以来2年1カ月ぶり、新曲としても2015年9月発売のアルバム『Feeling of Unity』以来1年9カ月ぶりとかなり久しぶりなだけに、これまでのスタイルを踏襲しつつ新たに奏でられるサウンドに歓喜したリスナーも多かったのではないだろうか。


(参考:「ライブの熱狂」を生む音楽的条件とは? BOOM BOOM SATELLITES×Fear, and Loathing in Las Vegas対談


 音源としては約2年のブランクがあるので、もしかしたらLas Vegasのことを知らないリスナーもいるかもしれない(そんな人はいないと信じたい)が、実は彼ら、2008年結成と今年で10年目に突入する中堅バンドだ。自主制作EPの発表を経て、2010年11月には<VAP>から1stアルバム『Dance & Scream』(タワーレコード限定販売)でメジャーデビューを果たし、翌2011年7月発売のミニアルバム『NEXTREME』では早くもオリコン8位という好成績を記録している。特に、同作収録の「Chase the Light!」はテレビアニメ『逆境無頼カイジ 破戒録篇』(日本テレビ)のオープニングテーマに起用されたことで、アニメを通じて知ったというリスナーも少なくないはずだ。この頃になると『COMIN’KOBE』『JOIN ALIVE』『SUMMER SONIC』『COUNTDOWN JAPAN』といった大型フェスやイベントへの出演も増え、2016年1月には初の日本武道館ワンマンライブも大成功(参照:Fear, and Loathing in Las Vegas、初武道館で見せたバンドの集大成と今後の可能性)。昨年からは『MEGA VEGAS』と題した主催フェスも2年連続で開催している。


 すでにセールス面でもライブ動員面でも成功を収めたバンドのひとつであるLas Vegasの魅力として、ポストハードコアやラウドロックをベースにしながらもトランスやEDMなどのダンスミュージックの要素を大々的にフィーチャーした、それまでのメジャーシーンでは類を見なかった個性的なサウンドが挙げられる。海外ではこういったサウンドスタイルを“エレクトロニコア”もしくは“ピコリーモ”と呼び、すでに2000年代前半にはAttack Attack!をはじめとするバンドが支持を集め、チャート上でもそれなりの成功を収めていた。ここ日本でもCrossfaithや、昨年惜しくも解散したARTEMAのようなエレクトロの要素を取り入れたヘヴィなサウンドを信条とするバンドは存在したが、Las Vegasの場合はラウドロックの側面とダンスミュージックの側面を両立させつつ、なおかつキャッチーさやポピュラリティも存在するという点が他とは異なる大きな個性といえる。


 思えば、先に触れた「Chase the Light!」のみならず、彼らの楽曲はアニメのテーマソングに起用される機会が多かった。「Just Awake」は『HUNTER×HUNTER』(日本テレビ)のエンディングテーマ、「Virtue and Vice」は『極黒のブリュンヒルデ』(TOKYO MXなど)のオープニングテーマ、「Thunderclap」は『戦国BASARA Judge End』(日本テレビ)のオープニングテーマ、「Let Me Hear」は『寄生獣 セイの格率』(日本テレビ)のオープニングテーマと、それぞれ個性的な作品ばかり。また、ゲームとの相性も良く、「Chase the Light!」はアーケードゲーム『REFLEC BEAT limelight』に使用されたほか、「Just Awake」は『jubeat saucer』、Love at First Sightは『jubeat copious』、「Jump Around」はテレビゲーム『ワールドサッカー ウイニングイレブン 2012』、「Rave-up Tonight」は『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス マキシブースト』、「Cast Your Shell」はオンラインゲーム『CLOSERS』にそれぞれ採用されるなど、引く手数多だ。もともとヘヴィメタルやラウドな音楽とゲーム、アニメとの相性は悪くないが、ここまで“二次元”とマッチするのもLas Vegasの肉感的な部分と機械的な部分がバランス良く融合している点が鍵になっているのではないだろうか。


 2年ぶりの新作となったシングル『SHINE』でも、その“らしさ”は健在だ。シンセリフを軸にしつつ、Sxun(Gt)&Taiki(Gt)によるザクザクしたギターリフが絡み合うアレンジ、オートチューンを通したSo(Vo)のクリーンボイスとMinami(Vo/Key)によるスクリームのぶつかり合い、メロタムの音色が気持ち良いTomonori(Dr)のドラミング、ボトムを支えるKei(Ba)のベースライン。すべてがそこで鳴っている必然しか感じられず、無駄が一切ない。4分に満たないこのミドルテンポの楽曲は、もはやカテゴライズ不能だ……もうこれは“Las Vegas”らしい楽曲としか呼びようがないのではないだろうか。


 それはカップリング曲「Something to Gain After the Pain」にしても同様で、ラウドとエレクトロが見事に混在し、曲が進むにつれて複雑に変化/展開していくアレンジと、スクリームのイメージが強烈なのに最後に耳に残るのはキャッチーな主メロなのだから、さすがとしか言いようがない。3分半という短い時間の中に数曲分のアイデアが詰め込まれたこの曲も、非常に“Las Vegasらしい”1曲で、その純度はより高まっているように感じる。


 もはやラウドサウンドにエレクトロのテイストを加えたバンドは数多に存在するが、Las Vegasほどの強度とポピュラリティを併せ持つバンドはそう多くはない。メジャーシーンでこのスタイルを確立させたという点においては、今後彼らがどこへ進んでいくのかも気になるところ。特に今回の『SHINE』は2年ぶりの新曲ということもあり、従来の路線をより強化させたものにとどまったが、おそらくこの先に控えているであろうニューアルバムでは、そのスタイルがどのように進化しているのかにも期待したい。(西廣智一)


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